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1…胸に手を置く
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しおりを挟むアラサーの胸の話を一頻り聞いた矢向くんはぱちくりぱちくり瞬きを繰り返して、
「別れる理由って、胸は関係あるんすかね」
と嬉しくない正論を撃ってきた。
「矢向くん、分かるけど私は今そういう話をしてるんじゃないの」
「すんません、あんまりムネムネ言うから。コンプレックスっていうことは分かりましたけど、そこまで気に病むことじゃないっすよ」
「いや、小さいのよ」
「そうは思いませんけど」
「えー、見れば分かるよ、小っちゃいんだもん」
「そうっすか?」
矢向は眉を顰めて、もろに私の胸部の解析にかかる。
彼はそれを悪いことだと思っていないのだ、だって私が「見て」と指示したと同義だと考えているのだ。
「あの」
「下着はしてるんすよね?着衣状態の見た目から実際の大きさは測れないっすよ」
「そりゃあ…でも実物は小っちゃいもん」
「そんな自虐することっすか?大きさって、絶対と相対とあるじゃないすか。結局は比べてどうか、ってことっすよね」
「だから悩むんじゃん。世の中のアイドルとか見てごらんよ、おっぱい大きいよ」
「ジブンと比べりゃ、そりゃ大きいでしょうけど」
何だろう妙な対抗心が湧く。
呑んだくれのかまってちゃんは、あろうことか後輩へ胸の小ささをアピールしてワイシャツのアンダーバストに人差し指を置いた。
くっきり高低差を視える化、シャツがピタッと肌に張り付く。
どうだ小さいだろう、不思議にドヤ顔で彼に見せつけるも矢向くんは「はぁ」と腑に落ちない様子である。
この辺りから追いハイボールがモワモワ脳に効いてきて、矢向くんのつれない態度に苛立ちを隠せなくなってきた。
「小さいの、分かるでしょ!」
「分かんねえっすよ、大きい小さいはそれぞれの判断基準がありますから」
「全国平均から言って小さいの、同意してくれれば良いの!」
「その調査の範囲と年齢層によっても」
「30年近く同級生のおっぱい見てきた女の私が言ってんだよ!認めろバカぁ!」
その後も聞くに堪えないおっぱい論争は続き、いよいよ酔いが回った私は卓に伏してしまったという。
その拍子に小皿の天つゆが飛び散って、私のワイシャツは汚れてしまったらしい。
そして言い争いの相手である矢向くんが送迎役に莉子から指名されて、私を家まで運んでくれたそうだ。
これらがなぜ伝聞かって、それは家に着いて介抱してくれた矢向くんが教えてくれたからだ。
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