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3…胸を張る
矢向青年の後悔
しおりを挟む「しまった、浴衣見忘れた」
社員旅行から帰って、ハッと気付く。
せっかく温泉宿に泊まったのに、美紀さんの浴衣姿を見られなかった。
まぁ、「魅力的だから人前で着ないで欲しい」と頼んだのは俺なのだが。
「(…胸、柔らかかったな)」
ホテルのロビーで触った彼女の胸は、前回より柔らかく感じた。
ブラジャーの種類が違うのだろう、感触から原因を推測する。
社員旅行は社屋前で解散したのだが、本当はその足で美紀さんの家に乗り込むつもりだった。
でも疲れているからと断られ、「帰ったら抱く」宣言は撤回する他なかった。
「(まぁ、俺も疲れてるから良いけど…怖気付いたんだろうな)」
あの勢いのまま一緒になりたかった、溜まりに溜まった欲を伝えたかった。
でも美紀さんが嫌がるなら意味は無し、準備も要るだろうから強行は出来ない。
茨田さんのことは最初から何とも思っていなかった。
性格をよく知る以前に、キンキン声が不快で体が彼女に関わることを拒否してしまっていた。
生理的に合わない、というやつなのだろう。
過去に交際した元カノに似たタイプだった。
今の俺は、美紀さんのような媚びないお姉さんな雰囲気の声が好みなのだ。
「(統計で言うと、そうなんだろうな)」
さらに生活のスピードとテンポが似通っていて、かつ許容出来る範囲に収まっていることも重要だ。
茨田さんのようなハイテンションで突っ走るタイプにはついて行けない。
でも裏ではしっとり静かな性格だったりするとギャップに萌えないこともない。
しかし出会った順番とか日頃の行いとか、さまざまな要因が折り重なって美紀さんに恋をした。
その存在がある前提で、ギャンギャン煩い茨田さんは恋愛対象候補にも挙がらなかった。
「(好きになった相手が自分と合うって、奇跡みたいなもんなんだよなー…マジで)」
皆に優しいのは良いことで、美紀さんはそういう性格である。
平穏のために泥を被ることもあるし、人のために矢面に立つことが出来る女性だ。
茨田さんも皆に優しかったが、それは男性限定だし八方美人というやつだった。
今回自分がロックオンされたのも、旅行参加者の中の未婚男性から適当にピックアップしたものと思われた。
「(本当のところがどうなのかは知らないけど)」
茨田さんが俺に向けていた想いの大きさがどんなものだったのか、興味が無い。
日に日に大きくなる、美紀さんから向けられる好意のそれにしか関心が向かない。
「(明日か、明後日か……楽しみ…予習しとこうかな…キスする、裸にする、褒める…いや、あくまで素直な感想を述べて…)」
美紀さんは体調不良で予定は先延ばしになるのだが…今はそんなことは知らずに、妄想に耽るのだった。
おわり
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