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私も、女なんですけど

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 隣のテーブルの女性客がこっちをチラチラ確認していて、反対隣のカップルも同様にこちらを窺っている。

 まさかデートで訪れたパスタ屋さんで別れ話を耳にするなんて思ってなかったよね、申し訳ない気持ちも少しある。

 しかし衆目に触れていれば彼はゴネずに別れてくれると思った。

 万が一に激昂し暴力沙汰になっても、周りが目撃者となり通報してくれると信じていた。


「長い付き合いだったけど、サヨナラしたい。卑屈な考え方、聞いてて不快なの。仕事で上手くいってないのかもしれないけど、女性全体を敵に見るその姿勢も無理だよ」

「お、お前、俺と別れて嫁の貰い手があると思ってんのか。中古の女に惚れてくれる男なんていやしねぇぞ」

「あのさ、誰よりも女性の女性らしさに固執してるって気付いてる?男に依存しないのが良い女なんじゃなかったっけ?私はこの先貴方と過ごすくらいならずっと独身でも構わないよ。特定の人を叩きたいんなら好きにすれば良いけどさ、なんで女性全体を悪く言うのか分かんない。論理も破綻してるよ」

 伝わっているかな、伝わってなくても良いか。

 積み重なった不満は言い始めればキリが無いので、この辺りで止めておく。

 「これだから女は話が長い」なんて言われたら殴ってしまいそうだから。


 彼は金魚みたいにぱくぱく口を動かして、でも体は動かないようだった。

 私としては彼が捨て台詞を吐いて逃げて行くと予想していたのだが、余程ショックだったのかもしれない。

 同じタイミングで仲良く会計して帰るなんて無理なので、出来れば早く帰って欲しいのだが。

 私が先に席を立てば、残された彼は周囲から好奇の目に晒されて恥ずかしい思いをするに違いない。

 だからせめて背中を見送ってあげようと情けをかけたのだが…動けなさそうだ。


「コホン…じゃ、帰るね。今までありがとう、楽しかったよ」

「……」

 私は自分のパスタ代を置いて、席を離れた。
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