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「…そうだったのね…」

真秋の解説が一区切りすると、母は神妙な面持ちで息をつく。

「…なるほどな、会社の状態の割に暮らしぶりは悪くないと思ってた。真秋さんに助けて頂いてたんだな」

父は、安堵しながらも俺をギロリと睨んだ。

「あ、えーと、うん…俺の給料だけじゃ、とても今のとこには住めてない。アキに…あ、コイツのことアキって呼んでるんだけど…色々と助けてもらってる」

「転職とかは考えてないの?」

「社長に恩義があるから…あの、俺も前より少なくなったけど無給じゃないし、折半とはいかないけど家計に金は入れてる。むしろ前よりホワイト企業になったというか…早く帰れるし精神的な負担は減ったんだ。親会社はしっかりしてるし、まだうちの会社は頑張れる」

「そう、あんまり真秋さんにおんぶに抱っこじゃダメよ?家事はあんたがしてるんでしょうね?」

「うぐ」

母の問いに沈黙する、それが俺の答えだった。

 住まわせてもらって家事もしてないとな、父は怒りというか呆れ顔で俺を見つめる。

「夏李…この際、男だ女だということはどうだって良い。お前は真秋さんの身の回りのことも負担できないのか」

「えーと、やってたんだけど、アキの家事のクリアラインが高いんだよ。俺はやること雑だし料理も食えりゃ良いって感じで」

「夏李、」

「すいません」

 全く反論する余地も無い。

 普通に考えて、何の取り柄も無く平々凡々な会社員の俺がそこまで尽くしてもらえる理由が見つからない。

 理由があるとすれば余程愛されているか、体の具合が良い、とかだろうか。

「ナツ、」

しょんぼり首を垂れる俺の手を、真秋は握り直す。

 そしてその手を引き上げて、卓上に載せた。

「……」

 受け入れつつもぼやかしていた、俺たちの関係性を見せつける。

 両親は息を飲んで、その顔はまだ少し哀しそうだった。
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