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 翌朝…聡太はいつも通り薫宅を訪れて朝食をいただき、帰宅目安を共有して早番で出勤した。

 これ以上謝罪は聞きたくないし受け入れられそうにないし、けれどどこかに落とし所を作らねばいけないのかと思い悩む。

 騙されたことや親の扱いに嫌悪感は覚えるものの、時間をかけて深めた仲と睦じい生活は確かにそこに存在していた。

 薫に特別な感情を持ち興奮し抱いた、それも紛れもない事実だった。

 責任、なんて彼女は拒否するかもしれないがここで別れてはもてあそんだみたいで寝覚めが悪い。

 こんこんと話し合って聡太が飲み込むしかないのだ。



「お疲れさまでーす……あ…」

 昼まで働いて休憩で事務所に上がったところ、遅番で出勤した薫が店長のデスクに呼ばれ何やら話をしていた。

 うなずきながら話を聞く、薫のその表情が硬い。


「(クレームでもあったのかな…)」

 水筒を取りに管理職デスク寄りのロッカーへ近付けば僅かにだが彼らの会話が漏れ聞こえて、「どうかな」と尋ねる店長に被せるように

「問題ありません、ちょうど地元に戻りたかったところなんで」

と毅然とした薫の声が事務所内に響いた。


「じっ……⁉︎」

思わず声に出してしまった聡太は会釈してその場を離れ、冷蔵庫から弁当を出してレンジへとセットする。

 それはつまり転勤の打診か、いつからなのか。

 聞きたいが残念ながら聡太には会話に割って入る権限が無かった。

 婚約と言っても口約束、同居もしておらず交際を公表もしていないので関係者ではないのだ。



つづく
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