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 会はお開きになり…幹事である聡太は上司をタクシーに乗せて手を振り、全員が出たのを見送ってから薫の待つ彼女の車へと向かった。


「ちょっと、助手席に乗ってよ」

「え、あ、そう、」

後部座席のドアを開ければそんな注意を受ける。

 聡太としては気を遣ったつもりだったのだが空振りに終わったらしい。

 仕方なしに「失礼しまーす」と控えめに助手席へ座らせてもらう。

 コンパクトカーの車内は装飾品も無く、フレグランスなども置いていないようでサッパリしていた。

 本当に薫のイメージ通り、エンジンを掛けるとカーナビが明かって現在地と時刻を生真面目にお知らせしてくれる。


「…車、出すね。長居しちゃお店に悪いから」

「うん、どこか停めようか」

「…ミナトボウルパーク辺りに」

「うん、」

 郊外の複合商業施設は日付が変わっても営業しているので駐車場も明るくしかもそこは代金も掛からない。

 薫はゆっくり車を出す。



「清水さんは普段酒呑むの?」

「家なら」

「何系?」

「…缶チューハイとかカクテルとか」

「へぇ…甘いの好き?」

意外だな、クールな彼女なら高アルコール度数の酒に洒落たアテを合わせていてもおかしくないと思っていた、聡太は明らかに笑みを含んで尋ねた。

 そんな聡太の言葉に薫は少しムッとして、

「甘くないやつもあるし」

と口を尖らせる。

 確かに甘さよりも果汁感を求めて焼酎ハイボールに手を出す者もいるだろう。

 現に今夜参加していた辛党上司も生搾りのレモンサワーを美味そうに呑んでいた。

「(プライド高けぇ…これで甘党ならギャップ萌えなのにな)」

 男慣れというかコンパ慣れしている女子ならここで「私、苦いのムリなんです」とでも言いそうなものだ。

 現に聡太は過去にそのような会話を女性と交わしたことがあった。

 薫は若向けな缶チューハイを馬鹿にされたと感じたのだろう。

 しかしアルコールに甘さを求めてないとばかりに拗ねる姿は逆に可愛らしさを纏う。

「(ツンデレか?彼氏とかにはいつもこんな感じなのかねぇ)」


 ツンツンだけど甘くデレる、自分にその役目は回って来ないだろうがきっと恋人ともなれば彼女の未知の一面を知っているに違いない。

 聡太は路面のデコボコによりもたらされる心地良い揺れに目を閉じた。
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