2 / 74
1
2
しおりを挟む会はお開きになり…幹事である聡太は上司をタクシーに乗せて手を振り、全員が出たのを見送ってから薫の待つ彼女の車へと向かった。
「ちょっと、助手席に乗ってよ」
「え、あ、そう、」
後部座席のドアを開ければそんな注意を受ける。
聡太としては気を遣ったつもりだったのだが空振りに終わったらしい。
仕方なしに「失礼しまーす」と控えめに助手席へ座らせてもらう。
コンパクトカーの車内は装飾品も無く、フレグランスなども置いていないようでサッパリしていた。
本当に薫のイメージ通り、エンジンを掛けるとカーナビが明かって現在地と時刻を生真面目にお知らせしてくれる。
「…車、出すね。長居しちゃお店に悪いから」
「うん、どこか停めようか」
「…ミナトボウルパーク辺りに」
「うん、」
郊外の複合商業施設は日付が変わっても営業しているので駐車場も明るくしかもそこは代金も掛からない。
薫はゆっくり車を出す。
「清水さんは普段酒呑むの?」
「家なら」
「何系?」
「…缶チューハイとかカクテルとか」
「へぇ…甘いの好き?」
意外だな、クールな彼女なら高アルコール度数の酒に洒落たアテを合わせていてもおかしくないと思っていた、聡太は明らかに笑みを含んで尋ねた。
そんな聡太の言葉に薫は少しムッとして、
「甘くないやつもあるし」
と口を尖らせる。
確かに甘さよりも果汁感を求めて焼酎ハイボールに手を出す者もいるだろう。
現に今夜参加していた辛党上司も生搾りのレモンサワーを美味そうに呑んでいた。
「(プライド高けぇ…これで甘党ならギャップ萌えなのにな)」
男慣れというかコンパ慣れしている女子ならここで「私、苦いのムリなんです」とでも言いそうなものだ。
現に聡太は過去にそのような会話を女性と交わしたことがあった。
薫は若向けな缶チューハイを馬鹿にされたと感じたのだろう。
しかしアルコールに甘さを求めてないとばかりに拗ねる姿は逆に可愛らしさを纏う。
「(ツンデレか?彼氏とかにはいつもこんな感じなのかねぇ)」
ツンツンだけど甘くデレる、自分にその役目は回って来ないだろうがきっと恋人ともなれば彼女の未知の一面を知っているに違いない。
聡太は路面のデコボコによりもたらされる心地良い揺れに目を閉じた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
あさの紅茶
恋愛
学生のときにストーカーされたことがトラウマで恋愛に二の足を踏んでいる、橘和花(25)
仕事はできるが恋愛は下手なエリートチーム長、佐伯秀人(32)
職場で気分が悪くなった和花を助けてくれたのは、通りすがりの佐伯だった。
「あの、その、佐伯さんは覚えていらっしゃらないかもしれませんが、その節はお世話になりました」
「……とても驚きましたし心配しましたけど、元気な姿を見ることができてほっとしています」
和花と秀人、恋愛下手な二人の恋はここから始まった。
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
鬼上司の執着愛にとろけそうです
六楓(Clarice)
恋愛
旧題:純情ラブパニック
失恋した結衣が一晩過ごした相手は、怖い怖い直属の上司――そこから始まる、らぶえっちな4人のストーリー。
◆◇◆◇◆
営業部所属、三谷結衣(みたに ゆい)。
このたび25歳になりました。
入社時からずっと片思いしてた先輩の
今澤瑞樹(いまさわ みずき)27歳と
同期の秋本沙梨(あきもと さり)が
付き合い始めたことを知って、失恋…。
元気のない結衣を飲みにつれてってくれたのは、
見た目だけは素晴らしく素敵な、鬼のように怖い直属の上司。
湊蒼佑(みなと そうすけ)マネージャー、32歳。
目が覚めると、私も、上司も、ハダカ。
「マジかよ。記憶ねぇの?」
「私も、ここまで記憶を失ったのは初めてで……」
「ちょ、寒い。布団入れて」
「あ、ハイ……――――あっ、いやっ……」
布団を開けて迎えると、湊さんは私の胸に唇を近づけた――。
※予告なしのR18表現があります。ご了承下さい。
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
誤算だらけのケイカク結婚 非情な上司はスパダリ!?
奏井れゆな
恋愛
夜ごと熱く誠実に愛されて……
出産も昇進も諦めたくない営業課の期待の新人、碓井深津紀は、非情と噂されている上司、城藤隆州が「結婚は面倒だが子供は欲しい」と同僚と話している場面に偶然出くわし、契約結婚を持ちかける。 すると、夫となった隆州は、辛辣な口調こそ変わらないものの、深津紀が何気なく口にした願いを叶えてくれたり、無意識の悩みに 誰より先に気づいて相談の時間を作ってくれたり、まるで恋愛結婚かのように誠実に愛してくれる。その上、「深津紀は抱き甲斐がある」とほぼ毎晩熱烈に求めてきて、隆州の豹変に戸惑うばかり。 そんな予想外の愛され生活の中で子作りに不安のある深津紀だったけど…
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる