22 / 69
2
22
しおりを挟む「……」
桜井さんはワンコスタイルを崩さず、気まずそうに瞳をふいふい泳がせている。
これはまずったか、イケると思ったのに。
脳内を走馬灯のように桜井さんの様々なお尻の記憶が駆け巡る。
「(これだけで抜けそー…)」
トイレで抜いて帰ってやろうかな、しかし粘れば勝てそうか。
これもひとえに俺の経験値の低さと桜井さんを舐めた結果かな、思い上がりを恥じていっそお尻好きを暴露して去ってやろうか。
悶々と不純なことを考えていると、桜井さんの手がテーブルの上に戻って来た。
「…藤棚さん、わ、私、」
「はい、」
俺は背筋を伸ばして気持ち脚も整える。
恋人はいないけど意中の人がいるのか、だとしたらこんな食事にノコノコ来ないか。
少しくらいの短所なら、直す気はあるから指摘してもらって構わないが…何だろうか。
俺がゴクリと喉を鳴らすと、合わせたように彼女のそれもゴクリと上下した。
「私、あの、本当に、恋愛経験が浅くてですね、振る舞いとか、分からなくてですね」
「はい、そんなに気になさらず」
「新幹線の中で、仲良くなれて…わ、私はそう認識してるんですが、」
「俺もですよ」
「私から連絡先も聞こうとしたのに、藤棚さんがお気を回して下さって、そういうところ、あの、私も、」
「気付いてくれてたんですね…はい、」
掴まり立ちする赤ん坊を見守っている気分だ、上手くひとり歩きできたらこれは拍手喝采もの。
もう一歩だ、その足を前に出せ、自然と拳を握る。
「藤棚さんのこと、好き、なんです…」
「あ、はい、やった!」
数秒前から答えは分かっていたのだが、確定すると格段に喜びが増す。
俺は彼女の震える手を握って、
「嬉しいです、これからよろしくお願いしますね」
と固く固く力を込めた。
「はい、あの、面倒な女ですが、よろしくお願いします」
「いやぁ、良かった…可愛い彼女が出来ちゃった、嬉しー」
「藤棚さんって、思ったこと言っちゃうタイプなんですね」
「そうですかね、桜井さん可愛いからつい」
「恥ずかしいです…」
フリーから彼女持ちという肩書きを得た俺は、何を言われようと平気だ。
もしかして新幹線の中でお尻への気持ちを漏らしてやしないかと一瞬ヒヤっとしたが、そこまで阿呆ではなかったので良かった。
「杏奈さん、とお呼びしても良いですか」
「はい、わ、私も、紫くんと」
「どうぞ、もっとラフに話しましょう」
「はい、あの、ではここから、」
「はい、いや、うん……あはは、難しい」
「うん…本当、やだ、ほんと恥ずかしい」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる