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しおりを挟む「(茉莉花、驚くかな)」
珍しく19時の定時きっかりで終業した俺は、帰る連絡もせずに家路を急いでいた。
いつもは会社を出るタイミングでチャットアプリにてお知らせをするのだが、まだほんのり明るい空に見惚れていて連絡するのを忘れてしまったのだ。
気付いたのは車のエンジンをかけて出発した時だった。
家までは一本道だが交通量もある国道で、一度逸れるとなかなか本線に復帰できない。
帰る連絡を打つためだけにコンビニなどに避けていては帰宅時間が遅れてしまう。
ならば流れに乗りつつそのまま帰ろうと考えた次第である。
茉莉花は今日は休みで、晩ご飯の準備をして待ってくれているはずだ。
サプライズで帰宅して驚かせよう。
なんて浅はかだけどちょっとしたイベントを盛り込んでみようと画策した俺は、スイスイと自宅マンションの駐車場へ到着した。
オートロックエントランスを抜けて階段へ、マンションと言っても2階の賃貸部分が俺たちの家だ。
いずれは分譲に移ったり戸建を買ったりとか考えてはいるが、立地的にも家賃的にも今の家がちょうど良いので先のことは未定である。
「(こっそり入ってみよ)」
いつもなら必ずチャイムを鳴らしてから鍵を開けるのだが、とことん驚かせてみたくて静かに解錠してみた。
ガチャンとそれなりな音が鳴るから気付いて駆けてくるだろう。
…しかしポーチに入り靴を脱いでも茉莉花は出て来ない。
「(あれ?)」
調理音で遮られるなんてこともあろうか、揚げ物をしてたら周りの音に気付かないものだ。
俺は自宅にもかかわらず忍び足でリビングダイニングを覗いた。
「(…いない)」
となれば寝室だな、調子が悪くて横になっているのかもしれない。
しかし俺はここでひとつの可能性にじわじわ期待を寄せていた。
「(ひとりエッチとか、してないかな)」
玄関の音が分からないほど没頭していたりして、あるいはイヤホンをしてAVを観ていたりして。
当然その時の格好は茉莉花ご自慢のランジェリーだろう。
俺に見つかり「きゃあ!」と恥じらう姿を見てみたい。
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