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………御愁傷様

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結婚式にて。

新郎のアーロと、新婦のレインの華やかな式が行われていた。

ちなみに、二人とも男である。

しかし、そこに乱入者が現れた。

「結婚しちゃダメーーー!!」

その乱入者とは、レインの弟のガロンであった。

「ガロン?」

レインは、ガロンも当然ながら結婚式に招待していた。

なのに、ガロンがいなくてすごく寂しかったし、悲しかった。

しかし、そのガロンは乱入する形でやって来た。

何故と思っているレインだが、その隣でアーロは冷や汗をかいていた。

「兄さん、アーロと僕は愛し合っているんだ!アーロは、兄さんより僕を愛しているんだよ!だから、兄さんは身を引いて!」

「!?」

「ガロン!!」

ガロンの言葉に、衝撃を受けたレインと、顔面蒼白になったアーロ。

「………これは、浮気していたってことかな?ねぇ、アーロ」

レインの冷ややかな微笑が、アーロに容赦なく突き刺さる。

まさに、女王様の風格がある微笑だと、結婚式の招待客たちは思った。

「あ……いや……その……」

小さな虫のように、か細い声のアーロ。

「ねぇ、僕がガロンをとてもとても可愛いって思ってる、自覚できるほどのブラコンだって、アーロは知ってるよね?」

「………ひゃい」

「ガロンにちょっかい出した羽虫が、今までどうなってきたか………アーロは知ってるよね?」

「…………ひゃい」

怯えすぎて、まともに「はい」と言えなくて、「ひゃい」になってしまっているが、今は誰も突っ込みはしない。

むしろ、突っ込めない。

冷ややかな微笑のレインは、その声が氷よりも冷たくて………結婚式の招待客たちですら震えていた。

「僕の可愛い可愛いガロンに、アーロは浮気していたんだね?つまり………生きてることを後悔するような目にあいたいんだね。いいよ、地獄みせてあげるよ」

「ひっ!?」 

「おいで!僕の親衛隊!」

「「「「はい!」」」」

レインの呼び掛けにより、ムキムキなマッチョ軍団がレインの背後に現れた。

彼らは、レインの親衛隊だ。

レインは何故か、昔からマッチョにモテるのである。

標準の人にもモテるが、気づいたらマッチョになっているんだ。

結果として、レインの親衛隊にマッチョが選り取り見取りになっている。

彼らはとても優秀で、レインのためなら手となり足となりなんでもする。

レインに褒めてほしいという、一途な願いのために!

「皆!このゴミ野郎は僕の可愛い弟に手を出した不埒者だ!この世の地獄を骨の髄まで叩き込め!地獄のブートキャンプのデスコース行きだ!腐った性根が清く正しく美しい性根になるまで徹底的にやれ!」

「「「「御意!」」」」

実は、レインには二つの異名がある。

一つは『氷の女王様』

一つは『鬼教官』

レインの親衛隊がマッチョ軍団になってしまうのは、実はレインの訓練を乗り越えた結果なのだが………生憎レインは自覚していない。

まぁ、最初からマッチョな人もいたが。

そうして、アーロはマッチョ軍団に引きずられて去っていった。

「ガロン」

「!!」

ポカンとしていたガロンは、いつの間にか近くにいたレインに抱き締められた。

「ガロンごめんね。僕があんな害虫を婚約者にしたばかりに、可愛いガロンが害虫の毒牙に汚されてしまった。お兄ちゃんの責任だね。ガロンごめんね」

「………僕のこと、怒らないの?」

「悪いのは、お兄ちゃんとあの害虫だよ。ガロンは汚された被害者だ」

結婚式の招待客たちは思った。

いや、悪いのは浮気したアーロとガロンだろと………。

しかし、今のレインにそれを言えば、自分たちもただではすまないかもしれないという恐怖に、誰も何も言えない。

レインのブートキャンプのデスコースとは、知る人ぞ知る恐怖のブートキャンプだ。

乗り越えた者は最強無敵になれると言われているが、乗り越えた者は今のところ3人しかいない。

とある国の無敵の帝王。

とある国の負け知らずの騎士団長。

とある国の英雄。

彼らは語る。

レインのブートキャンプのデスコースについて、二度とやりたくないと………。

強者ですら弱音を吐くレベルで、レインのブートキャンプのデスコースはキツくて恐ろしいのだ。

マッチョ軍団も怯える程だ。

そのデスコース行きになったアーロ。

………御愁傷様としか言いようがない。



当然だが、アーロとレインの結婚は白紙になった。

アーロはレインへの慰謝料と、結婚式の費用全額負担をすることになった。

ブートキャンプのデスコースに、毎日ヒーヒー言いながら、仕事もしている。

まさに休み無しである。

ブートキャンプのデスコースは、アーロの性根が清く正しく美しくなったと判断されるまで続く。

しかし、今のところまだのようだ。



余談だが。

ガロンには、兄であるレインからのお咎めはなかったが、レインのいない時に両親からはお咎めがあった。

ガロンも反省していたので、両親からのお咎めを素直に受け入れた。

ガロンは思った。

「兄さんが幸せになれるように、僕なりに努力しよう。それが、僕の兄さんへの償いだ」

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