上 下
4 / 14

4◆アシュラ視点

しおりを挟む
私は、物心ついた頃から一人ぼっちでした。

母は悪霊にとり憑かれ、闇の化け物に成り果てました。

父は死神に首を切り落とされて、物言わぬ死体になりました。

いつ死ぬか、いつ闇の化け物に成り果てるか………そんな命の危機が日々ある世界。

聖の魔力がある者は、闇に対抗する義務があります。

義務といっても、絶対ではありません。

ただ、義務を果たさないなら風当たりが強くなります。

まぁ、闇に対抗できるのは聖魔術師だけですからね。



長い間、私は一人で戦いました。

ある時、一人の少女の幽霊に私は心を揺さぶられたことがあります。

「お兄ちゃんはずっと一人ぼっちなんだよ。誰もお兄ちゃんを愛さない。愛されない可哀想なお兄ちゃん。私がずっと一緒にいてあげるよ。だから、お兄ちゃんも仲間になろうよ」

闇が私を化け物にしようとしたけれど、私は少女を浄化したので化け物にはなりませんでした。

しかし、少女の言葉は私の心に酷く突き刺さります。

私は………ずっと一人ぼっち。

一つ訂正するなら、誰にも愛されないのではなく誰も愛さないのです。

愛されることを、諦めてしまいましたから………。

その方が、気楽で幸せでしょう?



そう、思っていました。



トモキが私とずっと一緒にいることを望んでくれたことが、嬉しくて仕方ないのです。

笑えてきますね。

何だかんだ言って、やっぱり私は寂しかったのでしょう。

だって、こんなにも心が暖かいのですから………。



トモキの武器になった聖の力を込めたナイフ。

元々は、私の護身用のナイフでした。

ちなみに、化け物用ではなく………人間用です。

動物用もありますよ。

敵は、闇だけとは限らないのです。

人間も動物も、場合によっては敵になることもあるのですよ。

ナイフは、予備と隠しナイフもあるので、トモキに一本渡しても問題はありません。

近くの街で、買い足しますから。



それにしても、聖の力を物に込めるなんて初めての発想ですね。

でも、私も物は試しでしてみたらできませんでした。

………残念です。

他の世界から来たからできるんでしょうか?

トモキが違う世界から来たというのは、普通だったら嘘臭いでしょう。

嘘を見破る術がなかったら、私はトモキを敵認定していましたよ。

トモキは私を美人だと思っているようですが、美人なんて忌まわしい言葉です。

私は、この顔のせいで………。

身の危険を何度も経験したのですから………。

………私は、人間なんて嫌いですよ。



「トモキ、これからよろしくお願いしますね」

貴方が敵にならないなら、私は貴方を今は殺しません。

でも、敵になったその日には………。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...