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1◆トモキ視点

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俺は中井トモキ。

21歳の大学生だったが、今は見知らぬ森にいる。

俺の住んでいる場所の近くに、森なんかありはしない。

そして、俺は森になんてそもそも入っていない。

俺は今、普通に大学の教室にいたんだ。

ではなぜ、森にいるのか?

それは俺にもわからない。

もしかしたら、これは巷で噂の異世界転移かもしれない。

もしかして、今の俺にはチートな能力が備わって、この世界で無双とかしちゃって、ウハウハな人生送っちゃうのかもしれない。

やばい、楽しくなってきた!

俺が一人ウキウキしていると、背後で何かが動く音がした。

もしや、これはヒロインとの出会いでは!?

俺は早速ヒロインと出会っちゃうのかな!?

ワクワクとした気持ちで後ろを振り向くと………そこには顔が半分溶けてしまっているゾンビがいた。

………なんでやねん!!

「ぎゃあーーー!?」

俺は走った。

全力で走った。

ゾンビといえば、噛まれたら俺もゾンビ化する……それがゾンビだろ?

やばい!

生命の危機だ。

走れ走れ俺よ走れ!

メロスも驚くぐらい走るんだ!!

追いかけてくるゾンビを、俺は必死に巻こうとするけれど何気にアイツしつこい。

ストーカー並みにしつこい。

追いかけてくるんじゃねーよ!

俺の食生活は乱れているから、俺を食べても美味しくないよ。

絶対まずいよ。激まずだよ。だから他行け!

しかし、俺は転んでしまいゾンビが追いついてしまった。

あぁ、もう俺は駄目だ。

死んでしまう……いや、ゾンビになってしまう。

クソ!まだ童貞だったのに!

まだ女の子と付き合ったことすらないのに!

なんてこったい!

神様酷いよ………。

そんなことを思っていると、一人の青年が現れた。

「聖なる力よ!闇を祓いたまえ!」

神々しいまでの眩い光が辺りを照らし、ゾンビはその光を浴びて、その身体を光の粒子にして天に昇って消えていった。

「あのゾンビは浄化したので、もう大丈夫です。お怪我はないですか?」

白いローブ姿の青年は、俺に手を差し伸べてくれた。

慈愛の微笑みを浮かべていて、なんて綺麗な人だろうと見惚れてしまう。

女性のように美しいけれど、声は男性なのでたぶん男性なのだろう。

「ありがとう。あの……あのゾンビって一体?」

「あのゾンビは、元は人間だったのですが闇に汚染されてしまった哀れな存在なのです。貴方は見かけない人ですね」

「えっと、俺の名前は中井トモキです」

「私はアシュラ。ナカイトモキとは変わった名前ですね」

「トモキが名前です。中井は家名です」

「おや、ではトモキ。ここは危険ですので、少し移動しましょう。まだ近くにゾンビがいる気配がするのです」

「へ!?は、早く移動しよう!」

またゾンビが出ないうちに、俺達は移動した。
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