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二話 裏切り
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「追い出せ」
「エド、話を聞いて!エドワード!」
彼は話を聞くことなく、使用人や騎士を使って、私とシャンドリー卿を部屋から、屋敷から叩き出した。
「ふぎゃ、ふぎゃ!」
胸に抱く娘はずっと泣きっぱなしだ。
「旦那様からの伝言です。『お前の浮気の証拠を王宮に提出し、近日中に離婚を確定させる。今、この瞬間からローゼンタールを名乗ることを許さない』とのことです」
彼女は追い出された拍子に地面に座っている私に対して、淡々と告げた。
「イモージェン!お願い。エドと話をさせて。何か誤解があったの。こんな事、間違っているわ。彼から信頼されている貴女からの言葉なら、きっと聞いてくれるはずよ。お願い、イモージェン」
私は茶色の髪をふんわりと後でまとめ、紫色の瞳の女性のスカートにしがみついた。
イモージェン・ウェスト(25)
ウェスト子爵家の女性で、8歳からローゼンタール伯爵家に仕えていると聞いたことがある。
エドワードとは幼馴染みで、彼の信頼は厚い。
結婚当初から私の専属侍女として仕えており、関係は良好だと思っている。
彼女なら……。
「みっともないわね」
ヒヤリと彼女は言い放った。
私を見下ろすその瞳から、優越感がにじみ出ていた。
「男爵家なんかから嫁いで来る女なんて、どうせ股のユルい女だろうと思っていたけど、まさかエド以外の男の子供を産むなんて、厚顔無恥も良いところね」
「イモー……ジェン?」
「何その顔。バカ面、最高なんだけど!」
イモージェンは高らかな声で嘲笑った。
専属侍女として、仲の良い友人として、年の離れた姉のように……彼女を……信じていたのに。
「初めっから、アンタの事、嫌いだったの。たかが男爵家の産まれのくせに貴族学院に通って、勉学を嗜んだなんて烏滸がましいのよ。ただ、金を持っていただけの男爵家風情が、純情なエドを誑かして、伯爵家の奥様になれるなんて夢を見るのも大概にしなさい。みんな迷惑していたのよ。そう、エドも――」
不意にイモージェンが胸元を止めていたボタンを外した。彼女の胸にはいくつもの鬱血があった。
「エドって、大きな胸が好きなんですって」
えっ……。
「胸に顔を潜り込ませる姿は、赤ちゃんみたいで可愛かったわ。世間知らずのお子ちゃまに一つ良いことを教えてあげるわ。男は、特に若い男はタマルのよ」
タマル……?
「我慢をするのは良くないの。仕事の効率も落ちてしまうから。だから……時折お慰めして差し上げていたのよ。アンタの代わりに」
勝ち誇った顔で、こちらを見下している。
「お酒を飲んだりすると、エドって乱暴になるのよね。アンタの事、お高く止まりやがってって、口汚く言ってたわよ」
「うっ、嘘よ。嘘……。エドが……」
エドが……イモージェンと?
頭がぐちゃぐちゃで、訳もなく涙を流して地面を見つめた。涙は地面に吸い込まれ、シミを作っていく。
イモージェンがゆっくりとしゃがみ、耳元で囁いた。
「私、妊娠したの」
「っ!?!?」
「エドの子」
ばっ!と顔を上げ、彼女の顔を見た。
恍惚とした、醜悪な顔がそこにあった。
「胸も、面白味もない女に飽きたんですって」
飽きた……?
「伯爵家の体裁の為に、アンタには悪役になってもらうそうよ。光栄に思いなさい。エドの為に出来ることがあったことをね」
悪役……。
エドが、エドが本当にそんな事を?
嘘よ……。
嘘、嘘、そんなの嘘に決まってるわ!
「本当、地面に這いつくばってるのがお似合いね」
『地面に這いつくばっているのがお似合いだな』
エドワードとイモージェンの言葉が重なって聞こえたように思えた。
ガシャンッ!!
伯爵家の外門が目の前で閉じられた。
「あっ……っ……うっ……」
情けなくて、涙が止まらない。
私は……騙されていた。
愛し、愛されて結婚したと信じていた男は……女を使い捨てる男だったのだ。
浮気したとか、裏切ったとか、そんなのは私を悪者にする策略で、単に……飽きた女を捨てる為の……嘘。
悔しい……。
悔しい。
「ふぎゃ!ふぎゃ!」
遠くで、赤子の泣く声がする。
いや、違う。
私の腕の中で泣いていた。
「あっ……」
娘は、顔を真っ赤にして泣いていた。
ずっと……泣いていたのに……。
「ご……めん」
本当に情けない。
子供の泣き声が耳に入らないなんて。
「ごめんね」
私は立ち上がり、いつものように体を揺らして子供をあやした。
娘はしばらく泣き続け、疲れたのだろう、寝てしまった。
ごめんね。お母さんなのに、貴女の声が聞こえなかったなんて。本当にごめんなさい。
この子の為にも、こんなところで踞っている暇はないわ。これからの事を考えないと。
目の端にシャンドリー卿がいた。
そうだ。
彼も一緒に追い出されたのだった。
自分の事ばかりで、失念していた。
「シャンドリー卿」
彼の体を軽く揺らすと、「うっ!」と呻くが、目を覚まさない。
どうしよう……。
誰か助けを呼んで、病院に連れていかなければ。
「シャンドリー卿。人を探してくるから、少し待っていて」
「お待ち……くっ」
駆け出そうとしたとき、小さな声がした。
「シャンドリー卿!」
「奥様……ぅっ!その格好では……危な、い」
言われて気がついたが、私は部屋着のままで、足元はスリッパだった。
コルセットもしていないから、本来、男性の前に立つ事が出来ない姿だった。
「ブーツに……ナイフが入ってます。縄を……」
「わかったわ」
子供を片手で抱いて、言われたように隠しナイフで彼の縄を切ろうとするが、力が入らず縄を傷つける程度しか出来なかった。
「固いわね……」
悪戦苦闘していると「少し離れて……」と、シャンドリー卿が言った。そして、腕に力を入れたのか、私が傷つけた場所から縄が解れ、ぶちっ!と音を立てて外れた。
「すごい……」
「鍛えて……ますから」
彼は縄が巻かれていた腕や手首を確認すると、騎士服を脱いで私にかけてくれた。
「汚れていますがご容赦ください」
「ありがとう……。シャンドリー卿、体の方は?」
「ご心配には及びません」
彼はそういうが、体はふらついているし、顔色も悪い。何より、顔も腫れていて、左目が塞がっている。
「急いで病院に行きましょう」
「いえ、病院には一人で行けます。まず奥様のご実家に向かわれた方がよろしいかと」
彼は極力私を見ないように視線をずらしている。
「……ごめんなさい。では、男爵家に向かいます」
「御意」
実家のブロリーン男爵家のタウンハウスは馬車で一時間程離れた場所にある。徒歩で行ったことはないのでどれくらいかかるか……。
むしろ大通りで馬車を借りた方が早いかしら。
「シャンドリー卿。大通りで馬車に乗った方が良いかしら?」
「……そのお姿で大通りに出るのは……」
そうよね……。
この格好では人目を引いてしまうわ。
現に今も……。
ここは貴族の邸宅が立ち並ぶ貴族街だ。
人通りは少ないが、居ないわけではない。
遠目にこちらを伺う他家の使用人の姿が散見する。
今でこの状態なのだから、大通りに出たら注目の的だろう。
「自分の指示に従って頂けますか?」
「え?」
「大通り近くまでご一緒頂き、奥様は近くの路地に隠れて頂きます。その間に私がマントを購入してきますので、それから馬車で男爵家に向かいましょう」
「あっ……。私、お金を持ってないわ」
今さら気がついた……。
「ご安心下さい」
そう言って、彼はブーツのサイドをナイフで軽く切った。すると、そこから一枚の金貨を取り出した。
「え?!」
「もう引退された方ですが、先輩に非常用の金貨を靴に仕込んでおくように言われていたんです。まぁ、同期の人間はアホ臭いと言っていたので、仕込んでいる者も少ないですが。役に立って良かったです」
そう言って、彼は笑った。
彼の笑顔を見て、私は罪悪感を覚えた。
彼はとても有能な人だ。
謙虚で、努力家で、優しくて、気遣いも出来て、人の意見を素直に聞ける素敵な人だ。
このまま伯爵家に居れば、騎士団の幹部、ゆくゆくは騎士団長に抜擢されていたのではないだろうか……。
そんな、将来有望だった彼を巻き込んでしまった。
飽きた女を追い出す、ただ、その為だけに……。
「ごめんなさい……」
「エド、話を聞いて!エドワード!」
彼は話を聞くことなく、使用人や騎士を使って、私とシャンドリー卿を部屋から、屋敷から叩き出した。
「ふぎゃ、ふぎゃ!」
胸に抱く娘はずっと泣きっぱなしだ。
「旦那様からの伝言です。『お前の浮気の証拠を王宮に提出し、近日中に離婚を確定させる。今、この瞬間からローゼンタールを名乗ることを許さない』とのことです」
彼女は追い出された拍子に地面に座っている私に対して、淡々と告げた。
「イモージェン!お願い。エドと話をさせて。何か誤解があったの。こんな事、間違っているわ。彼から信頼されている貴女からの言葉なら、きっと聞いてくれるはずよ。お願い、イモージェン」
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結婚当初から私の専属侍女として仕えており、関係は良好だと思っている。
彼女なら……。
「みっともないわね」
ヒヤリと彼女は言い放った。
私を見下ろすその瞳から、優越感がにじみ出ていた。
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「イモー……ジェン?」
「何その顔。バカ面、最高なんだけど!」
イモージェンは高らかな声で嘲笑った。
専属侍女として、仲の良い友人として、年の離れた姉のように……彼女を……信じていたのに。
「初めっから、アンタの事、嫌いだったの。たかが男爵家の産まれのくせに貴族学院に通って、勉学を嗜んだなんて烏滸がましいのよ。ただ、金を持っていただけの男爵家風情が、純情なエドを誑かして、伯爵家の奥様になれるなんて夢を見るのも大概にしなさい。みんな迷惑していたのよ。そう、エドも――」
不意にイモージェンが胸元を止めていたボタンを外した。彼女の胸にはいくつもの鬱血があった。
「エドって、大きな胸が好きなんですって」
えっ……。
「胸に顔を潜り込ませる姿は、赤ちゃんみたいで可愛かったわ。世間知らずのお子ちゃまに一つ良いことを教えてあげるわ。男は、特に若い男はタマルのよ」
タマル……?
「我慢をするのは良くないの。仕事の効率も落ちてしまうから。だから……時折お慰めして差し上げていたのよ。アンタの代わりに」
勝ち誇った顔で、こちらを見下している。
「お酒を飲んだりすると、エドって乱暴になるのよね。アンタの事、お高く止まりやがってって、口汚く言ってたわよ」
「うっ、嘘よ。嘘……。エドが……」
エドが……イモージェンと?
頭がぐちゃぐちゃで、訳もなく涙を流して地面を見つめた。涙は地面に吸い込まれ、シミを作っていく。
イモージェンがゆっくりとしゃがみ、耳元で囁いた。
「私、妊娠したの」
「っ!?!?」
「エドの子」
ばっ!と顔を上げ、彼女の顔を見た。
恍惚とした、醜悪な顔がそこにあった。
「胸も、面白味もない女に飽きたんですって」
飽きた……?
「伯爵家の体裁の為に、アンタには悪役になってもらうそうよ。光栄に思いなさい。エドの為に出来ることがあったことをね」
悪役……。
エドが、エドが本当にそんな事を?
嘘よ……。
嘘、嘘、そんなの嘘に決まってるわ!
「本当、地面に這いつくばってるのがお似合いね」
『地面に這いつくばっているのがお似合いだな』
エドワードとイモージェンの言葉が重なって聞こえたように思えた。
ガシャンッ!!
伯爵家の外門が目の前で閉じられた。
「あっ……っ……うっ……」
情けなくて、涙が止まらない。
私は……騙されていた。
愛し、愛されて結婚したと信じていた男は……女を使い捨てる男だったのだ。
浮気したとか、裏切ったとか、そんなのは私を悪者にする策略で、単に……飽きた女を捨てる為の……嘘。
悔しい……。
悔しい。
「ふぎゃ!ふぎゃ!」
遠くで、赤子の泣く声がする。
いや、違う。
私の腕の中で泣いていた。
「あっ……」
娘は、顔を真っ赤にして泣いていた。
ずっと……泣いていたのに……。
「ご……めん」
本当に情けない。
子供の泣き声が耳に入らないなんて。
「ごめんね」
私は立ち上がり、いつものように体を揺らして子供をあやした。
娘はしばらく泣き続け、疲れたのだろう、寝てしまった。
ごめんね。お母さんなのに、貴女の声が聞こえなかったなんて。本当にごめんなさい。
この子の為にも、こんなところで踞っている暇はないわ。これからの事を考えないと。
目の端にシャンドリー卿がいた。
そうだ。
彼も一緒に追い出されたのだった。
自分の事ばかりで、失念していた。
「シャンドリー卿」
彼の体を軽く揺らすと、「うっ!」と呻くが、目を覚まさない。
どうしよう……。
誰か助けを呼んで、病院に連れていかなければ。
「シャンドリー卿。人を探してくるから、少し待っていて」
「お待ち……くっ」
駆け出そうとしたとき、小さな声がした。
「シャンドリー卿!」
「奥様……ぅっ!その格好では……危な、い」
言われて気がついたが、私は部屋着のままで、足元はスリッパだった。
コルセットもしていないから、本来、男性の前に立つ事が出来ない姿だった。
「ブーツに……ナイフが入ってます。縄を……」
「わかったわ」
子供を片手で抱いて、言われたように隠しナイフで彼の縄を切ろうとするが、力が入らず縄を傷つける程度しか出来なかった。
「固いわね……」
悪戦苦闘していると「少し離れて……」と、シャンドリー卿が言った。そして、腕に力を入れたのか、私が傷つけた場所から縄が解れ、ぶちっ!と音を立てて外れた。
「すごい……」
「鍛えて……ますから」
彼は縄が巻かれていた腕や手首を確認すると、騎士服を脱いで私にかけてくれた。
「汚れていますがご容赦ください」
「ありがとう……。シャンドリー卿、体の方は?」
「ご心配には及びません」
彼はそういうが、体はふらついているし、顔色も悪い。何より、顔も腫れていて、左目が塞がっている。
「急いで病院に行きましょう」
「いえ、病院には一人で行けます。まず奥様のご実家に向かわれた方がよろしいかと」
彼は極力私を見ないように視線をずらしている。
「……ごめんなさい。では、男爵家に向かいます」
「御意」
実家のブロリーン男爵家のタウンハウスは馬車で一時間程離れた場所にある。徒歩で行ったことはないのでどれくらいかかるか……。
むしろ大通りで馬車を借りた方が早いかしら。
「シャンドリー卿。大通りで馬車に乗った方が良いかしら?」
「……そのお姿で大通りに出るのは……」
そうよね……。
この格好では人目を引いてしまうわ。
現に今も……。
ここは貴族の邸宅が立ち並ぶ貴族街だ。
人通りは少ないが、居ないわけではない。
遠目にこちらを伺う他家の使用人の姿が散見する。
今でこの状態なのだから、大通りに出たら注目の的だろう。
「自分の指示に従って頂けますか?」
「え?」
「大通り近くまでご一緒頂き、奥様は近くの路地に隠れて頂きます。その間に私がマントを購入してきますので、それから馬車で男爵家に向かいましょう」
「あっ……。私、お金を持ってないわ」
今さら気がついた……。
「ご安心下さい」
そう言って、彼はブーツのサイドをナイフで軽く切った。すると、そこから一枚の金貨を取り出した。
「え?!」
「もう引退された方ですが、先輩に非常用の金貨を靴に仕込んでおくように言われていたんです。まぁ、同期の人間はアホ臭いと言っていたので、仕込んでいる者も少ないですが。役に立って良かったです」
そう言って、彼は笑った。
彼の笑顔を見て、私は罪悪感を覚えた。
彼はとても有能な人だ。
謙虚で、努力家で、優しくて、気遣いも出来て、人の意見を素直に聞ける素敵な人だ。
このまま伯爵家に居れば、騎士団の幹部、ゆくゆくは騎士団長に抜擢されていたのではないだろうか……。
そんな、将来有望だった彼を巻き込んでしまった。
飽きた女を追い出す、ただ、その為だけに……。
「ごめんなさい……」
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