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第十章 食事は大切に
話したい
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あの怖い人なんなの? なんなの?
先程からアゼルの目が口ほどにモノを言うというか、言い過ぎてうるさい。
なるべく目を合わせないようにしているが、ふとした拍子に目が合ってしまったら最後、ものすごく訴えてくる。
どうにかしなさいよ。
(出来ません)
無理、無理、と首を振ってみせる。
ジュリアは味方として考えると、文句なくぶっちぎりに強い。自分とジュリアが並んでいたら、
上司
▶︎ジュリア
クライス
聖剣の勇者
▶︎ジュリア
クライス
まず間違いなく、誰が見てもそういう判断になるはず。
ジュリア……強い。美人。迫力がある。
クライス……強い? 美人? 一般人。
(これさ、仮に万が一もしアレクス王子が宣言通り部下と結婚したとして。「お相手は一般の方です」って言っても、ジュリアが出てきたら「玄人彼女だな」って言われるけど、僕が出てきたら「えっ。本当に一般人なんだけど……!?」って言われるくらいのジュリア>>>>>越えられない壁>>>僕、だよね……?)
頭の中で状況を再確認し、アゼルに向き直る。無理、と声を出さずに伝える。
途端、くわっと目を見開いたアゼルに、無言で圧力をかけられる。
どうにかしなさいよ!! 上司なんじゃないの!?
(上司って辛いなあ)
一日目からこんなに実感することになるとは思わなかった。どうにかしたいのだが、口でも敵わないのだ。自分が弱いというより、アレクスも負け気味だったし、まず間違いなくジュリアが強い。
味方なのだから、喜ばしいことのはず。
気持ちは歓迎している。しかし腰が引ける。
「女子会か……。軽食の他に甘いものとか用意してもらえるのかな。案外そういうものの方が食べられたりするんですよね」
クロノスの部屋に向かう途中、先頭を歩いていたジュリアがぽつりと言って振り返った。
クライスは、思わず背伸びする勢いで背筋を伸ばした。目が合って、にこりと笑ってみる。
(そもそもなんで先頭ジュリアなの? 道わかるの? 立て看板とかないよ?)
唯一のアドバンテージとも言える王宮勤務の長さまで、もはや形なしであった。
「クライスさんは何が好きなんですか?」
「僕? 肉かな」
「私も好きですけど。食欲ない人が相手ですからね。思わず手を伸ばしたくなるものかな。焼き菓子とか。何か見た目も可愛いの」
しん、とアゼルもクライスも黙り込んでしまった。
「何か」
「ジュリアって、可愛いもの、好きなのかなって」
「お見舞いに行くわけですし、考えますけど。女の人が好きそうなもの。自分で見るのも選ぶのも好きですし」
「好きなんだ」
「それはもう。最終的にはその人個人が何を好むかですけど、私は『女の子らしいもの』『女の子が可愛いく見えるアイテム』大好きですからね」
何故か、話しながらジュリアのまなざしが暗くなった。異界の深淵を覗いているかのような仄暗さだ。
「ジュリア? どうかしたの?」
「飾れば可愛い女の子が飾らないのはすごく残念なんですけど、残念さまで魅力に昇華する可愛い女の子も世の中にいますからね。存在が至高みたいな。そういう相手には小手先の『可愛い』なんか不要なんですよ」
「実感こもってるね?」
「込めてます」
頷くジュリアの横顔を見て、クライスは微笑んでしまった。
(正直、話の内容がよく見えてないしついていけてないけど。ジュリアにも何か思い通りにならないことでもあるのかな。着飾って欲しい相手が、そういうものに興味がないとか)
話してみると、面白い。
もっと話したいと思う。
クライスは、先頭を進んでいるアゼルの背にも視線を向ける。
(アゼルは、前世で、一緒に過ごしたんだよね? 僕やステファノと)
ロイドと話しがてら、アゼルとも話してみたいと思った。
過ぎ去りし日々のことを。
先程からアゼルの目が口ほどにモノを言うというか、言い過ぎてうるさい。
なるべく目を合わせないようにしているが、ふとした拍子に目が合ってしまったら最後、ものすごく訴えてくる。
どうにかしなさいよ。
(出来ません)
無理、無理、と首を振ってみせる。
ジュリアは味方として考えると、文句なくぶっちぎりに強い。自分とジュリアが並んでいたら、
上司
▶︎ジュリア
クライス
聖剣の勇者
▶︎ジュリア
クライス
まず間違いなく、誰が見てもそういう判断になるはず。
ジュリア……強い。美人。迫力がある。
クライス……強い? 美人? 一般人。
(これさ、仮に万が一もしアレクス王子が宣言通り部下と結婚したとして。「お相手は一般の方です」って言っても、ジュリアが出てきたら「玄人彼女だな」って言われるけど、僕が出てきたら「えっ。本当に一般人なんだけど……!?」って言われるくらいのジュリア>>>>>越えられない壁>>>僕、だよね……?)
頭の中で状況を再確認し、アゼルに向き直る。無理、と声を出さずに伝える。
途端、くわっと目を見開いたアゼルに、無言で圧力をかけられる。
どうにかしなさいよ!! 上司なんじゃないの!?
(上司って辛いなあ)
一日目からこんなに実感することになるとは思わなかった。どうにかしたいのだが、口でも敵わないのだ。自分が弱いというより、アレクスも負け気味だったし、まず間違いなくジュリアが強い。
味方なのだから、喜ばしいことのはず。
気持ちは歓迎している。しかし腰が引ける。
「女子会か……。軽食の他に甘いものとか用意してもらえるのかな。案外そういうものの方が食べられたりするんですよね」
クロノスの部屋に向かう途中、先頭を歩いていたジュリアがぽつりと言って振り返った。
クライスは、思わず背伸びする勢いで背筋を伸ばした。目が合って、にこりと笑ってみる。
(そもそもなんで先頭ジュリアなの? 道わかるの? 立て看板とかないよ?)
唯一のアドバンテージとも言える王宮勤務の長さまで、もはや形なしであった。
「クライスさんは何が好きなんですか?」
「僕? 肉かな」
「私も好きですけど。食欲ない人が相手ですからね。思わず手を伸ばしたくなるものかな。焼き菓子とか。何か見た目も可愛いの」
しん、とアゼルもクライスも黙り込んでしまった。
「何か」
「ジュリアって、可愛いもの、好きなのかなって」
「お見舞いに行くわけですし、考えますけど。女の人が好きそうなもの。自分で見るのも選ぶのも好きですし」
「好きなんだ」
「それはもう。最終的にはその人個人が何を好むかですけど、私は『女の子らしいもの』『女の子が可愛いく見えるアイテム』大好きですからね」
何故か、話しながらジュリアのまなざしが暗くなった。異界の深淵を覗いているかのような仄暗さだ。
「ジュリア? どうかしたの?」
「飾れば可愛い女の子が飾らないのはすごく残念なんですけど、残念さまで魅力に昇華する可愛い女の子も世の中にいますからね。存在が至高みたいな。そういう相手には小手先の『可愛い』なんか不要なんですよ」
「実感こもってるね?」
「込めてます」
頷くジュリアの横顔を見て、クライスは微笑んでしまった。
(正直、話の内容がよく見えてないしついていけてないけど。ジュリアにも何か思い通りにならないことでもあるのかな。着飾って欲しい相手が、そういうものに興味がないとか)
話してみると、面白い。
もっと話したいと思う。
クライスは、先頭を進んでいるアゼルの背にも視線を向ける。
(アゼルは、前世で、一緒に過ごしたんだよね? 僕やステファノと)
ロイドと話しがてら、アゼルとも話してみたいと思った。
過ぎ去りし日々のことを。
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