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第九章 襲撃と出立
新入りの美人
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市街地が飛行系の魔物に強襲を受けたとの一報で、近衛騎士たちは王宮を飛び出した。
無論、クライスも。
小高い丘に位置する王宮から坂道を下り、頑健な石造りで彩色の施された三角屋根の建物がひしめくように並ぶ街路を抜けて、逃げて来る人の流れに逆行して騒動の現場へと走り続ける。
息が合うことでは隊内で右に出る者がいないカインもすぐに合流し、肩を並べた。
(魔物の強襲って……。レティの件と関係はあるの……!?)
選り抜きの腕利きが揃った近衛騎士隊とはいえ、対魔物戦は圧倒的に経験が少ない。
体のつくり、反応、能力が人間とは根本的に違う。鱗や甲殻で強化された体表、ありえない角度からの攻撃、顔を合わせた瞬間吹き付けられる炎……。
ほぼ対魔物で実戦がなくなった現代では、全員座学での知識程度しかない。
死傷者が出る……!!
「魔導士の援護は来るのか……!?」
「どうだろう。リュートやロイ……ディアナさんがいれば強そうだけど!」
少なくともあの二人には実戦経験がある。そして、クロノスにも。
(状況的に、三人とも来ないような気もするけどねー!?)
あとの望みはアレクスと……イカロス。意味不明な強さの剣士と、古の魔導士。特にイカロスは過去の記憶もあるのならクロノス同様実戦経験も……。
(虚弱体質っぽいんだけど、まず走っては来れなさそうかな!?)
対魔物の戦闘となった場合、使える人材がいない。
もちろん、その方面で兵士たちを育成すればもともと戦闘の勘はあるのだ、使えるようにはなるだろう。
だが、それは。
二十年以上前、聖剣の勇者ルミナスが魔王を打ち破る以前の世界に戻ることを前提としての訓練になる。
変わり始めた世界を、過去へと押し流して戻してしまおうとしているのは誰?
逃げて来る人影がなくなった。
(近い!)
石畳の坂道を下った先に、曲がり角。道なりに進んだ広場で戦闘が展開しているのならば、建物への被害も考慮に入れずに済み、動きやすいはず。
角を曲がる。
視界が開ける。
魔物……!
黒色の翼をはためかせ、同色の肌を持ち人間の老人のような顔をした魔物が、地上に立つ人物に空から急降下して襲い掛かっている。
クライスの中で、覚えているはずのない過去の記憶が身体の内側を駆けあがってきて、身震いとなって抜けて行った。
(間に合わない)
自分の足の速さと、その人までの距離。
むざむざ目の前で、襲われるのを見るしかないと思った瞬間、足がその場をきつく踏みしめた。
抜き放った剣を、勢いのまま投擲する。
小柄な赤毛の剣士である見た目を裏切る膂力も瞬発力も兼ね備えているクライスならではの、瞬間的な判断であった。
気づいてももはや降下速度や進路を変えられないであろう魔物は避けきれない一撃。
その迫りくる剣に。
地上に立ち尽くして魔物を見上げていた人物が抜群の反応で気付いて振り返った。
(ん……!?)
背中に、目でもついているのか、という的確な動き。
その手にはすでに魔物の血らしきものに濡れた剣が握りしめられていたが、背中を見せる形になった魔物へとあやまたず後ろ手で突き立てながらクライスを見つめてくる。
高いところで結んで背に流した長い金糸のような髪が、さらりと戦場の風に靡いた。
向けられたまなざしはひどく涼やかで、ふっと横を向いたときに伏せた瞼の形も、高く通った鼻梁も、唇の形までもが完璧な黄金比を思わせる。
背は高いが、生成りの旅装に濃緑のマントを羽織っており、身体のラインはわかりづらかった。なまじ整い過ぎなほどに整った顔だけに、男女の判別すら難しい。
その人物は、魔物に向き直ると、今だひくひくと息をしている顔をブーツの踵でぐしゃりと踏みしめ、胴体に埋まっていた自分の剣を抜き、もう一方の手で、突き刺さっていたクライスの剣を引き抜いた。
(戦っているし、人間だよね……?)
得体のしれないものを感じながらクライスが近づくと、顔を向けてきた。
目が合うと、にこりと邪気なく微笑まれる。
「お見事です。この剣はお返しします。まだ何体か残っていますので」
「……うん」
……死屍累々。
青空の下、噴水を中心として普段なら人でにぎわう石畳の広場に、おそらく飛行系だと思われる魔物の死骸がごろごろと転がっている。赤い花咲き乱れる花壇に横たわる遺骸など、非日常感が強く、いっそ何か悪魔的な置物のようにすら見えた。
見渡す限り人間の遺体はなさそうだ。隅の方に、傷ついたひとが先行していた近衛騎士に守られつつ、市民に引きずられて退避させられている。
クライスが剣を受け取るなり、その人は地を蹴って走り出す。
邪魔になったようで、ばさりとマントを脱ぎ捨てながら、今一人二体を相手どっていた黒髪の男の元へ走りこんだ。
「スヴェン隊長……?」
クライスの横で剣を抜いて辺りを睨むように見回していたカインが、小さく呟いた。
金髪の剣士と背中合わせになり、魔物を打ち倒している黒髪の男には、確かにクライスも見覚えがある。近衛騎士になりたての頃に、隊では向かうところ敵なしと言われていた凄腕の剣士だ。
順調に隊長まで上り詰めたものの、一身上の都合で田舎に引き下がるという触れ込みで、ある日忽然と姿を消した。
表向きはその理由に疑問を唱える者はいなかったが、誰もが陰では「なんらかの隠密作戦に駆り出された」と噂していたのを、クライスもよく覚えてる。
瞬く間に、二人で二体屠り、次の相手に向かう。
状況を見るに、ほぼその二人で乱戦を制したのは間違いなさそうであった。
「隊長も強いけど、もう一人も……。普通じゃないよね?」
「あの動きはな。しかもあの顔。性別不詳の美形で、すさまじく強かったっていう聖剣の勇者ルミナスってあんな感じかね」
ほとんど呆れた調子で呟いたカインが出した名前に、クライスは眉間を指で押しながら小さく呻いた。
「強さはともかく、さすがにあれは美人すぎる気がするんだけど……。どっちかっていうと」
ルーク・シルヴァとか、レティシアとか、あの系統の美貌に見える。
考えてしまってから、まさか、とクライスは頭を振ってその考えを打ち消そうとする。
残念ながら、打ち消せる要素は何もなかった。
ほとんど間を置かずして、広場で動きまわる魔物はいなくなった。
全滅。
人間側からの観点で言えば、圧勝だ。
「おーっす。お前ら使えねぇな。たるんでんじゃねえの。全員解雇してその分の給料をオレが独り占めさせてもらおうかな」
無精ひげの生えた顎を指でいじりながら、のんびりとした調子で黒髪の男が歩いてきた。
肌は南方系を思わせる浅黒さで、顔立ちは東方系のようにも見える。出自が分かりづらい見た目ながら、整って甘やかな印象があり、これはさぞや女性に騒がれるであろうという美丈夫であった。
「お帰りなさい、スヴェン隊長」
苦笑いを浮かべたカインが答えると、へっ、とスヴェンは白い歯をのぞかせて笑みをこぼした。
その背後から、金髪をなびかせた剣士が歩いて来る。
見惚れるほどすらりとした立ち姿は、最前までマントを羽織っていたせいもあってか、ほとんど返り血を浴びていない。
クライスと目が合うとにこりと感じよく目元に笑みをにじませてから、スヴェンに向き直った。
「念のため、全部絶命しているか確認した方が良いですかね。どうも魔物は勝手がわからない」
「わからないなりに反射だけで動いていたんだとしたら、恐ろしいよ。お前どんだけ強いんだよ。そこまでとは思わなかったぞ」
「演習ならともかく『実戦』をご一緒するのは初めてですからね」
高くも低くもないような、柔らかな声音だ。やはり、男性か女性か判じづらい。
戸惑いはカインも同じであったようで、「どなたです?」とストレートにスヴェンに投げかけた。
にやりと笑ったスヴェンは、隣に立つその人の肩に気安く手を置く。
瞬間的に、恐ろしく鋭い目で睨みつけられていたが、気にした様子もなく言い放った。
「『ルミナス』の部隊に推薦するために連れてきたジュリアだ。美人だろ?」
無論、クライスも。
小高い丘に位置する王宮から坂道を下り、頑健な石造りで彩色の施された三角屋根の建物がひしめくように並ぶ街路を抜けて、逃げて来る人の流れに逆行して騒動の現場へと走り続ける。
息が合うことでは隊内で右に出る者がいないカインもすぐに合流し、肩を並べた。
(魔物の強襲って……。レティの件と関係はあるの……!?)
選り抜きの腕利きが揃った近衛騎士隊とはいえ、対魔物戦は圧倒的に経験が少ない。
体のつくり、反応、能力が人間とは根本的に違う。鱗や甲殻で強化された体表、ありえない角度からの攻撃、顔を合わせた瞬間吹き付けられる炎……。
ほぼ対魔物で実戦がなくなった現代では、全員座学での知識程度しかない。
死傷者が出る……!!
「魔導士の援護は来るのか……!?」
「どうだろう。リュートやロイ……ディアナさんがいれば強そうだけど!」
少なくともあの二人には実戦経験がある。そして、クロノスにも。
(状況的に、三人とも来ないような気もするけどねー!?)
あとの望みはアレクスと……イカロス。意味不明な強さの剣士と、古の魔導士。特にイカロスは過去の記憶もあるのならクロノス同様実戦経験も……。
(虚弱体質っぽいんだけど、まず走っては来れなさそうかな!?)
対魔物の戦闘となった場合、使える人材がいない。
もちろん、その方面で兵士たちを育成すればもともと戦闘の勘はあるのだ、使えるようにはなるだろう。
だが、それは。
二十年以上前、聖剣の勇者ルミナスが魔王を打ち破る以前の世界に戻ることを前提としての訓練になる。
変わり始めた世界を、過去へと押し流して戻してしまおうとしているのは誰?
逃げて来る人影がなくなった。
(近い!)
石畳の坂道を下った先に、曲がり角。道なりに進んだ広場で戦闘が展開しているのならば、建物への被害も考慮に入れずに済み、動きやすいはず。
角を曲がる。
視界が開ける。
魔物……!
黒色の翼をはためかせ、同色の肌を持ち人間の老人のような顔をした魔物が、地上に立つ人物に空から急降下して襲い掛かっている。
クライスの中で、覚えているはずのない過去の記憶が身体の内側を駆けあがってきて、身震いとなって抜けて行った。
(間に合わない)
自分の足の速さと、その人までの距離。
むざむざ目の前で、襲われるのを見るしかないと思った瞬間、足がその場をきつく踏みしめた。
抜き放った剣を、勢いのまま投擲する。
小柄な赤毛の剣士である見た目を裏切る膂力も瞬発力も兼ね備えているクライスならではの、瞬間的な判断であった。
気づいてももはや降下速度や進路を変えられないであろう魔物は避けきれない一撃。
その迫りくる剣に。
地上に立ち尽くして魔物を見上げていた人物が抜群の反応で気付いて振り返った。
(ん……!?)
背中に、目でもついているのか、という的確な動き。
その手にはすでに魔物の血らしきものに濡れた剣が握りしめられていたが、背中を見せる形になった魔物へとあやまたず後ろ手で突き立てながらクライスを見つめてくる。
高いところで結んで背に流した長い金糸のような髪が、さらりと戦場の風に靡いた。
向けられたまなざしはひどく涼やかで、ふっと横を向いたときに伏せた瞼の形も、高く通った鼻梁も、唇の形までもが完璧な黄金比を思わせる。
背は高いが、生成りの旅装に濃緑のマントを羽織っており、身体のラインはわかりづらかった。なまじ整い過ぎなほどに整った顔だけに、男女の判別すら難しい。
その人物は、魔物に向き直ると、今だひくひくと息をしている顔をブーツの踵でぐしゃりと踏みしめ、胴体に埋まっていた自分の剣を抜き、もう一方の手で、突き刺さっていたクライスの剣を引き抜いた。
(戦っているし、人間だよね……?)
得体のしれないものを感じながらクライスが近づくと、顔を向けてきた。
目が合うと、にこりと邪気なく微笑まれる。
「お見事です。この剣はお返しします。まだ何体か残っていますので」
「……うん」
……死屍累々。
青空の下、噴水を中心として普段なら人でにぎわう石畳の広場に、おそらく飛行系だと思われる魔物の死骸がごろごろと転がっている。赤い花咲き乱れる花壇に横たわる遺骸など、非日常感が強く、いっそ何か悪魔的な置物のようにすら見えた。
見渡す限り人間の遺体はなさそうだ。隅の方に、傷ついたひとが先行していた近衛騎士に守られつつ、市民に引きずられて退避させられている。
クライスが剣を受け取るなり、その人は地を蹴って走り出す。
邪魔になったようで、ばさりとマントを脱ぎ捨てながら、今一人二体を相手どっていた黒髪の男の元へ走りこんだ。
「スヴェン隊長……?」
クライスの横で剣を抜いて辺りを睨むように見回していたカインが、小さく呟いた。
金髪の剣士と背中合わせになり、魔物を打ち倒している黒髪の男には、確かにクライスも見覚えがある。近衛騎士になりたての頃に、隊では向かうところ敵なしと言われていた凄腕の剣士だ。
順調に隊長まで上り詰めたものの、一身上の都合で田舎に引き下がるという触れ込みで、ある日忽然と姿を消した。
表向きはその理由に疑問を唱える者はいなかったが、誰もが陰では「なんらかの隠密作戦に駆り出された」と噂していたのを、クライスもよく覚えてる。
瞬く間に、二人で二体屠り、次の相手に向かう。
状況を見るに、ほぼその二人で乱戦を制したのは間違いなさそうであった。
「隊長も強いけど、もう一人も……。普通じゃないよね?」
「あの動きはな。しかもあの顔。性別不詳の美形で、すさまじく強かったっていう聖剣の勇者ルミナスってあんな感じかね」
ほとんど呆れた調子で呟いたカインが出した名前に、クライスは眉間を指で押しながら小さく呻いた。
「強さはともかく、さすがにあれは美人すぎる気がするんだけど……。どっちかっていうと」
ルーク・シルヴァとか、レティシアとか、あの系統の美貌に見える。
考えてしまってから、まさか、とクライスは頭を振ってその考えを打ち消そうとする。
残念ながら、打ち消せる要素は何もなかった。
ほとんど間を置かずして、広場で動きまわる魔物はいなくなった。
全滅。
人間側からの観点で言えば、圧勝だ。
「おーっす。お前ら使えねぇな。たるんでんじゃねえの。全員解雇してその分の給料をオレが独り占めさせてもらおうかな」
無精ひげの生えた顎を指でいじりながら、のんびりとした調子で黒髪の男が歩いてきた。
肌は南方系を思わせる浅黒さで、顔立ちは東方系のようにも見える。出自が分かりづらい見た目ながら、整って甘やかな印象があり、これはさぞや女性に騒がれるであろうという美丈夫であった。
「お帰りなさい、スヴェン隊長」
苦笑いを浮かべたカインが答えると、へっ、とスヴェンは白い歯をのぞかせて笑みをこぼした。
その背後から、金髪をなびかせた剣士が歩いて来る。
見惚れるほどすらりとした立ち姿は、最前までマントを羽織っていたせいもあってか、ほとんど返り血を浴びていない。
クライスと目が合うとにこりと感じよく目元に笑みをにじませてから、スヴェンに向き直った。
「念のため、全部絶命しているか確認した方が良いですかね。どうも魔物は勝手がわからない」
「わからないなりに反射だけで動いていたんだとしたら、恐ろしいよ。お前どんだけ強いんだよ。そこまでとは思わなかったぞ」
「演習ならともかく『実戦』をご一緒するのは初めてですからね」
高くも低くもないような、柔らかな声音だ。やはり、男性か女性か判じづらい。
戸惑いはカインも同じであったようで、「どなたです?」とストレートにスヴェンに投げかけた。
にやりと笑ったスヴェンは、隣に立つその人の肩に気安く手を置く。
瞬間的に、恐ろしく鋭い目で睨みつけられていたが、気にした様子もなく言い放った。
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