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第一章 お転婆娘

プラス思考って大切

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「まあいいけど。で、書類は?」
「はいどうぞ。ほんの一部ですが」
「嫌味ったらしいな」
「よくお分かりで」


 書斎に置かれていた書類の文句を嫌味を混ぜてお伝えしてみました。
 ダメージがないことなんて分かっているけど、これぐらいは許してほしい。
 私も王女とはいえ人間だ。
 嫌味の一つや二つ言いたくなる。


「……なんだ?これは」


 ゲイルの視線が書類から私に移る。
 手元に目を向けると、そこには先程アデルと散々文句を言って処理した提案書が。


「あぁ、それね。二人に確認せずに滑り込ませたみたい。本当に喧嘩売ってるわよね」
「お前、舐められてるのな。こいつに」


 ゲイルさん。
 そこはね、思ってても口にしないのよ?
 私はあなたの妻よね?
 あれ。
 違ったかしら?
 思い返すと変態的な言葉以外それらしい態度や発言が見当たらない。

 私って、なんて可哀想な女なのかしら……。  

と、誰も哀れんでくれないので、もう自分で自分を慰める。

 初恋が叶わなかった純情乙女のように切ない。
 いや、そんな可愛らしいものではないか。
 どちらかというと……そうね。
 付き合っていた彼が既婚者で、長くバレずにやってきたからつい油断してしまい、妻にばれて“お前とはもう会えない”と振られてしまった時に近い切なさ。

 ……すみません。
 経験したこともないのに憶測でものを言いました。
 全国の女性の皆さん。
申し訳ありません。
 心の中で土下座をして謝っている中、ゲイルは気に留めることなく書類に目を通す。


「舐められてムカついたお前は、“再提出だこの腐れ野郎が”と、遠回しに記した書類を作成。俺とシャヴァリエ、ファーレスの三人には不正報告書を作成ってわけか。いい性格してるよ」
「お褒めに預かり光栄です」
「褒めてない」


 うん。
 知ってる。
 知ってるけどプラスに受け取ることにしているの。
 だってよく考えてみて。
 私の周りにいるのは言葉責めがお好きな方達ばかりでしょう?
 この程度の嫌味なんてどうってことないわ。
 そう胸を張って言える。


「胸を突き出すな。揉むぞEカップ」


 冷めた目で私の胸を見つめて言い放つゲイル。
 しかし、発言した後に“しまった”という顔をした。
 妻相手に言い過ぎてしまった。


 “傷ついてしまっただろうか……?”


と反省してるのでは……と思うでしょう?


「ねぇ、なんで私の胸のサイズを知ってるの?」


 違うんだなーこれが。


「あー……なんとなく」
「なんとなく、何?」


 座っているゲイルを今度は私が冷めた目で見つめる。
 自分が立っていることをいいことに、腕を組んで上から見下ろすようにして。
 ゲイルの方が身長が10センチ以上も高いので、この光景は滅多に見られることではない。
 珍しさに心を躍らせている状況ではないので、そこは一旦置いておく。


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