45 / 64
第三章 いざ、ロピック国へ
入国審査
しおりを挟む並び始めて二時間。ようやく検査場が見える所までやってきた。あと数人で順番が回ってくる。
列から頭一つ分ずらし様子を伺うと、二人の獣種が身分証に穴が開いてしまうほど見つめていた。
「ありがとうございます」
持ち主に返したところで荷物検査が始まった。二人で手分けして鞄から中身を取り出し、テーブルの上へ綺麗に並べていく。丁寧且つ迅速な動きだ。
広げ終わったかと思えば、鞄を逆さにしては戻しを二人で二回ずつ行う。漏れが無いようダブルチェックをしているのだろう。
そして日本でいう懐中電灯のような物で、鞄の中に光を当てて内側に危険物が張り付いていないかを見る。ここまでで約五分。
鞄を端に置き、二人の一歩後ろで控えていた人族が一つ一つ指を指しながら中身の総数を確認。二度ほど行ってから持っていた書類に記載し、ペンを止めて二人の動向を見守る。
荷物を戻す際に数が違っていたら、どちらかが盗んだということ。側に控えていた人族は、職員の不正を監視する役割を担っているのだと悟った。
二人は左右に別れ、荷物を一つずつ手に取って四方八方から不審な点や物がないかを探る。目視はもちろんのこと、振って音を聞き、匂いを嗅ぐ。
二人で全て確認し終わるのに約十分。これは荷物が少ない場合で、商人など手荷物が多い者は更に時間が掛かるだろう。長蛇の列ができるはずだ。
「異常無し」
「同じく異常なし」
二人が全ての工程を終えたことを告げ、鞄の中に中身を戻していく。その際、周囲に聞こえるよう数を口にしていた。
「一、二、三……」
「一、二、三……」
一人が先に言い、もう一人が復唱する。
「……三十八」
「……三十八」
「確認致しました。運んでください」
取り出した時と数が一致しているのを確認し、ようやく終了。袋や鞄などの口を閉め、更に別の者に渡した。検査が終わった荷物を持って簡易的に作られた仕切りへと移動する。
そして、仕切りの入り口に用意されたテーブルに置いた。身体検査を行っている持ち主が出てくるまで荷物の側を離れることはなかった。
「そ、想像以上に厳重ですね」
「この国ではこれが当たり前です。長年やっている商人なんかは、時間が掛かるのを見越して早めに出発するそうですよ。量にもよりますが、朝に到着して夜に入国ということもあるとか」
「夜!だからこんなに早くから並んでいるんですね」
「こちらは東門で一般向けの検査場です。商人専用の検査場は数キロ離れた北門にあります。北門はここの比ではありませんよ」
「そ……そうなんですね」
新たな情報に脳がついていかず、当たり触りのない言葉しか口にできなかった。
「次の方」
機械的な声が聞こえ、我に返る。気付かぬうちに自分たちの番になっていた。
「タキトゥス様、オネスト様。身分証です。これを持って前へどうぞ」
二人は渡した紙を口に咥え、俺の体からテーブルへと飛び移った。
「拝見いたします」
獣種は大人しく座っている二人を見下ろしてから身分証へと視線を向けた。黒目を上から下に動かし、お礼を言ってから返却した。
荷物が無いのは一目瞭然。鞄を運んでいた者に目配せし、駆け足でやって来る。二人を抱いて仕切りの中へと運んで行った。念のため身体検査を行うようだ。
前に人がいなくなって気付いたのだが、検査場は四ブロックに分かれていて、空いた所から順に案内されるらしい。
これだけの人数が並ぶのであればあと二ブロック作っても良い気がする。しかし、人員やスペースの確保ができないなど様々な理由があるのだろう。
0
お気に入りに追加
3,216
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる