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第一章 出会い

回復魔法はお任せあれ!

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 俺の家へと転移した後、バリーにはフェリチタの元へと飛んでもらった。
 先ほども伝えた通り、応急手当ファーストエイドは一時的に傷を塞ぐに過ぎない。
 もうしばらくすれば再び傷は開き、血が大量に流れ出るだろう。
 その前に、白魔法が使えるフェリチタを呼んで本当の意味で治してもらうのだ。


「ネロ!大丈夫!?」


 程なくして魔法陣が現れ、フェリチタが血相を変えて駆け寄ってきた。
 バリーに掛けてもらった服のおかげで全裸とまではいかないが、半裸に近いものを晒しているわけで。
 少し気恥ずかしい気持ちにもなったが、それどころでは無いので押し殺すことにする。


「この二匹の怪我直してもらえる?応急手当ファーストエイドで塞いでるけどかなり重傷なんだ」
「血の量を見ればわかるわ。ネロは腕ちょこっとかじられてるだけだから大丈夫でしょ?後で治すからいい子にしてなさいね」


 最初は俺に釘付けだった視線も、血だらけの二匹を見るや否や目もくれない。
 仰る通り齧られてるだけだからいいんだけどね別に。
 これっぽっちも拗ねてなんかないからな。
 「治療ヒール!」と唱えるフェリチタを見つめながら、日本で人気のツンデレキャラを心の中で演じてみた。
 聞いている人なんて誰もいないんだけどね。


「はい、終了っ!よく頑張ったわねー!」


 バリーにお願いして口を開いてもらい、なんとか腕を引き抜いた俺は、二匹の手当てを終えたフェリチタに治療してもらっていた。
 傷跡一つ残らず回復した腕を容赦なく叩き、うつ伏せで寝転がる俺の頭を撫でる。
 子供じゃないんだから……と思いながらも、悪い気はしないので大人しく撫でられた。


「それにしても、ハイフェンリルなんて初めて見たわ。あ、起きたらきっとお腹空くわよね?いつも何食べてるのかしら?でも胃腸自体は弱ってないしお肉料理にしようかしら!買ってくるから、さっさと着替えて毛についた血を落してあげてねー」


 一呼吸で一気に話し扉を出て行く。
 マシンガントークとはこのことだ。


「フェリさん相変わらず元気だなー」
「あれでも今年四十だぞ」
「すげー。あれだな。美魔女だな」
「……俺そんなこと教えたっけ?」
「うん」
「俺にしか言うなよそれ。通じねーから」
「わかった」


 フェリチタがいなくなり、掛けられていた服を着ようと起き上がった所で、バリーの視線が股間に向けられていることに気付く。


「毛が生えてる!父ちゃんと一緒だ!」
「こら。勝手に見るんじゃねーよ」
「俺生えてない!いつか生える!?」
「そのうち生えるから見んなっての!近寄んなバカ!」


 もっと間近で見ようと駆け寄ってくるバリーを片手で制し、もう片方の手で素早くズボンを履く。
 神業といってもいいほど見事な早着替え。


「あー!もっと見してよ!」
「父ちゃんに見してもらえ!」
「だってネロみたいに毛が水色じゃねーもん!」
「知らねーよ!」


 二匹の血を洗浄ウォッシングという生活魔法で落としながら、フェリチタが帰ってくるまで同じ会話を繰り返した。
 そしてこの世界では、髪の色と同じ毛が下に生えるのだと知った。

 いやもちろん薄々は気付いていたよ。
 自分の毛が水色だったからなんとなくね。
 まぁ細かいことはいいじゃないか。


「水色の毛見し、」
「だあぁぁぁ!!!うるせぇ!」


 俺の叫び声が聞こえたのは、心の中でそんなことを語っていた数秒後でしたとさ。
 ちゃんちゃん。
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