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親睦キャンプin裏山⑧

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この学校の敷地の広さと設備にはには恐れ入る。今年の新入生、教師、手伝いの先輩たち含め300人以上は参加してるであろうこのキャンプ。

全員が密集しているわけではないが、学校の裏手の開けた数ヵ所に2、3クラスごとにわかれて集まっている。
設備もそこらかなりととのっている大型のキャンプ場に劣ることない、すばらしい。

どこに力いれてるのか謎な学校だな。

俺のクラスもほとんどの生徒が参加してかなり盛り上がっている。クラスの団結力とか、力を合わせてなにかをやるってのにも役立ってるのかな?

「そろそろごはんできるよー!」

「デザートもあるよー!」

料理担当の班のクラスメイトの数人が、周囲で作業している他のクラスメイトたちに声をかけた。

設営されたテントの設置確認という地味作業をしていた俺もその声に誘われて、お楽しみの晩ごはんへ。

2箇所でカレーの鍋が煮えている。
一人は女子、一人は壱弥。

にっこにこの壱弥の刺さるような笑顔に負けて仕方なく壱弥の元へ…刺さるような笑顔って感じたことありますか…?

「はい、秋緋。たくさん食べてね?特製カレーだよ。」

「なんでお前が料理班なんだよ…食うけど。」

大盛りに盛られたカレーを渋々受け取る。

キャンプ場に先に到着して、班作業の関係で沙織里と別れ、少しした後に壱弥がやってきた。その時こいつが料理班だと知らされて不安しかなかったが、見た目はまともそうなカレーだ。

まぁ、特製とか言ってたが…あいつ一人で作ったもんじゃないし大丈夫だろう。

そう思って一口食べたけどやっぱりダメだったわ。

「かっっっれぇぇ!!」

「あーちゃん?カレーだよ?どうしたの?」

沙織里さん、そういう意味じゃないんですよ?
沙織里はいいよなぁ…あっちのまともなカレー食ってるんだもん、くそぅ。

特製とかいうからまさかと思ったけどな?こいつは辛さの概念が一般人と違うのよ。
中学の時のキャンプでもやらかしてたの思い出したわ。

「こっ…かっれぇぇあぁ!!」

「…ヒュッ。」

「あははー!あーちゃんと同じことみんな言ってるねー!そんなにカレー好きなのかなぁ?」

みなさん、天使の微笑みですよ、喜んでください。俺には猫耳もついて見えてるから可愛さマシマシです。
って、息止まってるやつもいるけど大丈夫か?

それを見ていた残りのクラスメイトは壱弥の鍋の前には行かず、女子の方へ。
そのお陰か、壱弥は早々に配食を切り上げて俺と合流。一緒に食べ始めた。

「もぐもぐ…普通に美味しいカレーだけど…もぐもぐ…。」

「お前…他の奴らにも同じもんくわすとかアホか…。俺はまだいいけど…んぐっ!あかん、よくないわ。味わからねぇ…。」

俺は悶絶しながらもなんとか食べきってやったが、何人かは完食できずそのままテントに這いずるように入っていき、呻き声をあげている。

「残すなんてひどいなぁ…。」

遠目で他のクラスメイトを見ながら何てこと言うんだ、誰のせいだ誰の!
デザートに貰ったフルーツゼリーを食べて胃を落ち着かせていると壱弥が話しかけてきた。

「そうだ、秋緋。結緋さんに伝えておいてくれた?」

「ん?あぁ。親父遅れるってことだろ?言っといたぜ。ちょっと怒ってたけどな。」

遅れてきた壱弥は親父からの伝言を預かっていた。
スタンバっている結緋さんに伝えてくれって。

『理事長と大事な話しがあって少し遅れる。』

理事長は親父の今回の仕事の依頼人だ。内容はどんなもんかは知らないけど、それは結緋さんも知っている。だからなのか、少しムスッとしていたけど素直に結緋さんは了承してくれた。

ありがとうって壱弥は笑った。
なんかちょっと妙な感じがしてる。昼間見たあの笑顔とダブったからだろうか?

「楽しみだね、肝だめし。」

「え、あぁ…そうだな。」

壱弥のことよりこの後の肝だめしが心配だな、うん。

どういうプランで結緋さんが動くのか…壱弥も脅かす側だって言うし…。教えてもらえないのは仕方ないが、ちゃんと安全に配慮してあるのだろうか…。

「それじゃ…また後でね?」

肝だめしの準備だからか、カレーの後片付けもそこそこに壱弥は森の奥へと消えた。残ったカレーの処分に悩む料理班の子達が可哀想で仕方ない。

さて、俺たちも肝だめし前にオリエンテーションがあるから早々に片付けをして準備するか。
オリエンテーションと言ってもこの後の肝だめしのペア決めと、翌朝の解散までの流れを話すぐらいなもんだ。

「師匠どうしたのかなぁ…?こっちに顔出さないだけでもうおねえさんと一緒にいるんじゃないかな?」

沙織里とペアを組むのは決定事項のようで、狙っていただろう男子たちは俺から離れない沙織里をチラチラ見ていた。ここだけは俺は勝ち組と言っていいだろう。

オリエンテーションが始まり、ペア組みが終わりこの後の説明にはいったとき、沙織里がこそこそと話しかけてきた。

「なんでそう思うんだ?」

「えぇ?だって理事長あそこにいるよ?ほら、ね?」

マジか。

あ、マジだわ。

沙織里が指差す方向、担任が俺たちに向けて話している少し後方で、理事長らしき人物と、校長が様子を見ながら歩いている。この感じを見るに、すべてのクラスのキャンプ場を見回ってそうだ。

て、ことはだ。

親父はもうこっちにきてるってことか?
肝だめしの責任者だし忙しいだろうし、ま、こっちこれないのは仕方ないか。
別に、あんな歩く肝だめしみたいな顔を見たいとか、会いたい訳じゃないしな。

「肝だめしこわいかな?手とか繋いでも…あ、猫になっちゃうからダメだね?残念!なんてね、えへへ。」

手…だと…!
くそっ!この猫化の一番の弊害がここに…!何というチャンスを逃すんだ俺は…。

「心折れそう…。」

「え?もうこわいの?まだ始まってないよ?」

そうじゃないんですよ沙織里さん…。

何てやってるうちにオリエンテーションは終わり、肝だめしの会場へ移動となった。

肝だめしの内容はこうだ。

残っている旧校舎の建物まで続く1本道を進み、そこに置いてある紙を各自1枚ずつ持ってくるというもの。帰りはすぐ脇のもうひとつの道からここへ戻ってくる、往復20分程度の道のり。5分置きに組んだペアでスタートしていく、とのこと。

何をどう配慮したのかわからんが、俺と沙織里は最後のスタート。それまで皆の悲鳴を聞き続けなければならんとは…。

「ペアちゃんと揃ってるか~?はじめるぞー?」

担任がGOを出し、肝だめしが始まった。

意外とみんな楽しみにしていたのか、和やかな雰囲気で自分達の順番を待っている感じだ。
まぁそれも、響き渡る異様な悲鳴のせいで吹っ飛ぶわけだが。

続々とスタートはしていく、大袈裟だろー?って感じ何だろうな。

普通に行けば20分で戻ってこれるんだろうけどそうは行かないみたいで、時間オーバーしてやっと戻ってくるペアが続出だ。しかも戻ってきたらきたで、怯え方が半端無い奴やら、無言で顔面蒼白な子やら…これはかなりやばいなって、後半スタートのペアは行くのを渋りだす。担任も困り顔だ。

一般人への配慮は無いようだ。

そんなこんなでやっと最後、俺と沙織里のペアになった。大分スタート時間オーバーしてるけどな。

泣きまくる女子や、明らかにトラウマとなっただろうクラスメイトに申し訳ないと心の中で謝罪しながら…俺たちも歩みだす。
…親父のことだ、俺には特別プランでもつくってんだろうな。

何でわかるか?

だって道に1歩足を踏み入れた瞬間、明らかに空気かわったもん、あからさまに。

頼むぜ?俺は素人なんだよ?沙織里いるって言っても、ケガとかあれば問題になるんだからな!
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