18 / 67
計
小鬼ダンシング
しおりを挟む
なんだ、夢か…で済ましたいところがそうじゃないらしい。夜中の2時頃、はっと目が覚めた。
俺はちゃんと布団にはいって寝ており、部屋の電気は消され、ふたりの小鬼も就寝していた。
まぁ、俺は就寝していたわけではなく気絶してたわけなのだが…。
「おい、起きろ!」
よだれをたらして爆睡している小鬼を無理矢理起こし、その場で正座をさせる。
「ふぁ…なんですあきひさん~…眠いですよ~…。」
「…ぷひー。」
あぁ俺だって寝たいけどこのモヤモヤをどうにかせんと寝れないわ!どうしてそうなったのかを!
「何でっと言われても。」
「僕たちはこの為にここに来たのですしー。」
この為?お世話係?ってことはこいつらは真砂の?
「はいですー。こうしろう様と、とー様に言われましたーあきひさんに憑けとー。」
あ、こうしろうってのは親父の名前だ。今更だが真砂紅司朗ってのが本名、だからルージュ。うん。ルージュ…。
「この姿なのはこうしろうの許可がおりたからだ。今までは行動にも能力にも制限がかかってたからな。修業を始めたその日の朝からこうだったが、あきひは気付かなかったな。」
行動は大分自由だった気もする…確かに真砂家の血筋の人間には【鬼】が憑く。結緋さんに茨木が付いてるのと一緒のことだ。気付かない俺も俺だが、だからってもう少しまともな出会い方もあっただろうに…分かりづらいし!
「能力の制限は大変だったですー…祈祷の踊りしないと浄化もできないですしー。」
うんうんと、お互いに顔を見合わせて頷いている。あのいつも踊ってたのはそういう意味か…踊りはともかく、キスする意味はあったのか?と聞いたら「それは趣味だ。」って真顔で言うかね?危ない奴じゃん…。でも、まぁ、こいつらを送り込んで来たってことはだ、何だかんだ心配してくれてたわけか?
「大事な跡取りさんですからねー守らないといけないですです。」
あー…またそれか。
「いや、俺は跡取りにはならないつもりだ。だから家から離れたんだ。」
ビャーっという変な声となんとも言えない顔をするふたり。今にも泣きそうだ、可哀想に…。
「修業をはじめたのだろ?」
それは事実だが、気のコントロールだけの話。
「でもでも!【継承の赤玉】預かったですよね?!」
白い玉は貰ったけど赤い玉は貰ってない…待てよ?なんか血をどうのこうのと言ってたな?また大事な説明なしにやらそうとしたなあの親父…!
「…俺は!自分のやりたい道をいくんだ!しかもなんだ!こんな騙されたみたいに…なってたまるか!」
俺は怒り、立ち上がり、鞄に入っていた札に包まれた玉を掴むと、窓を開けて投げ捨てようとした。
それを見て、慌てて俺の腕を掴み、小鬼が止める。
「ごめんなさいです、ごめんなさいですー!それは大事なものなのですー!」
「すまない、こうしろうもそんなつもりはないはずなんだ。確かに少し言葉が足りない人間だが、お前のことは大事に思っている。俺達が来たのも―。」
何でこいつらが謝るんだろうか…ふたりの顔を見たら何故か怒りが収まっていく、これも浄化の力なのかな。
「わるい。うまくいかない自分の能力とか、修業とか、色々あったからいつもみたいに冷静じゃなかった。」
振り上げた腕をおろすと、小鬼はホッとした様子だ。普段通りにツッコむだけじゃなく行動してしまうとは…最近はそんなことなかったんだが。中学の時はひどかったけども…ゴニョゴニョ。
あの…っとみーが話しかけてきた。
「僕たちじゃまですか…?めいわく…ぐすん。」
そんな顔で…
「こうしろうに言ってどうにかしてもらおう。気のコントロールを始めたなら俺達は必要なくなる。あきひが嫌なら無理に一緒にいることはない。」
そんな顔で見るんじゃない…
まるで虐待でもしてしまってる気分になるわ…こいつらが悪い訳じゃないのはわかってんだけど…。
「あー…邪魔とかじゃなくて…だな…。」
どうした俺、何迷ってるんだ俺。跡取りから離れられる第一歩になる、こいつらが出ていけば。
「…跡取り云々は置いといて…なら…居ても。」
俺が言い終わる前に踊り出す小鬼たち。「跡取りは内緒のしーっ!ですです!」と真っ先に跡取りの話をしたみーが喜びながら口走る。
俺は負けてしまった…。
「あ!僕たち名前ちゃんとあるですよ!僕は砂羅です!」
「俺は砂鬼、改めてよろしく。」
あぁ、うん。もうなんでもよいですよ…まぁ、めんどいから今まで通りに呼ばせていただきますけど!
あと数時間後に始まる朝のランニングのことを考え、とりあえず寝ることにした。白い玉の件は学校で親父に問いただせばいい。
…課題プリントが白紙だったがそんなことは忘れていた。
******
隣の部屋の明かりが消えたのを確認し、黒い影が動く。
「どうにかまとまったのかな?ごめんね鵺、こんな遅くに。」
「壱弥殿…。」
「…秋緋はさ、元々【妖怪】が嫌いとか苦手な訳じゃないんだよね。」
「それは拙者も十分承知しているでござる。」
「うん、優しいからね…あの事、話してはなかったよね?」
「恐らくあの小鬼は知らない様子。大丈夫にござろう。」
どうやら壱弥は、鵺を使って、秋緋と小鬼の会話を盗み聞きしていたらしい。
「そっか…知らないから憑かせたのかな?跡取りとかトリガーになりかねないから。それにしても…師匠も意地悪いよね、毎回ちゃんと話しないから秋緋はいつも困ってる、ふふふ。」
小声で笑う壱弥を心配した様子で見つめる鵺。
「しかし壱弥殿…このような…。」
「…ん。仕方ないよ、これは僕が望んでやってることだから。」
鵺が何か言いたそうにしていたが、カチリといつもの音をさせたボールペンに戻っていった。
「…まだもう少し。もう少しだけ待ってて…そしたら…。」
壱弥は目をつむり、改めて眠りにはいる。
「おやすみ、鵺…秋緋。」
5月の朝、空はもう白んでいた。
俺はちゃんと布団にはいって寝ており、部屋の電気は消され、ふたりの小鬼も就寝していた。
まぁ、俺は就寝していたわけではなく気絶してたわけなのだが…。
「おい、起きろ!」
よだれをたらして爆睡している小鬼を無理矢理起こし、その場で正座をさせる。
「ふぁ…なんですあきひさん~…眠いですよ~…。」
「…ぷひー。」
あぁ俺だって寝たいけどこのモヤモヤをどうにかせんと寝れないわ!どうしてそうなったのかを!
「何でっと言われても。」
「僕たちはこの為にここに来たのですしー。」
この為?お世話係?ってことはこいつらは真砂の?
「はいですー。こうしろう様と、とー様に言われましたーあきひさんに憑けとー。」
あ、こうしろうってのは親父の名前だ。今更だが真砂紅司朗ってのが本名、だからルージュ。うん。ルージュ…。
「この姿なのはこうしろうの許可がおりたからだ。今までは行動にも能力にも制限がかかってたからな。修業を始めたその日の朝からこうだったが、あきひは気付かなかったな。」
行動は大分自由だった気もする…確かに真砂家の血筋の人間には【鬼】が憑く。結緋さんに茨木が付いてるのと一緒のことだ。気付かない俺も俺だが、だからってもう少しまともな出会い方もあっただろうに…分かりづらいし!
「能力の制限は大変だったですー…祈祷の踊りしないと浄化もできないですしー。」
うんうんと、お互いに顔を見合わせて頷いている。あのいつも踊ってたのはそういう意味か…踊りはともかく、キスする意味はあったのか?と聞いたら「それは趣味だ。」って真顔で言うかね?危ない奴じゃん…。でも、まぁ、こいつらを送り込んで来たってことはだ、何だかんだ心配してくれてたわけか?
「大事な跡取りさんですからねー守らないといけないですです。」
あー…またそれか。
「いや、俺は跡取りにはならないつもりだ。だから家から離れたんだ。」
ビャーっという変な声となんとも言えない顔をするふたり。今にも泣きそうだ、可哀想に…。
「修業をはじめたのだろ?」
それは事実だが、気のコントロールだけの話。
「でもでも!【継承の赤玉】預かったですよね?!」
白い玉は貰ったけど赤い玉は貰ってない…待てよ?なんか血をどうのこうのと言ってたな?また大事な説明なしにやらそうとしたなあの親父…!
「…俺は!自分のやりたい道をいくんだ!しかもなんだ!こんな騙されたみたいに…なってたまるか!」
俺は怒り、立ち上がり、鞄に入っていた札に包まれた玉を掴むと、窓を開けて投げ捨てようとした。
それを見て、慌てて俺の腕を掴み、小鬼が止める。
「ごめんなさいです、ごめんなさいですー!それは大事なものなのですー!」
「すまない、こうしろうもそんなつもりはないはずなんだ。確かに少し言葉が足りない人間だが、お前のことは大事に思っている。俺達が来たのも―。」
何でこいつらが謝るんだろうか…ふたりの顔を見たら何故か怒りが収まっていく、これも浄化の力なのかな。
「わるい。うまくいかない自分の能力とか、修業とか、色々あったからいつもみたいに冷静じゃなかった。」
振り上げた腕をおろすと、小鬼はホッとした様子だ。普段通りにツッコむだけじゃなく行動してしまうとは…最近はそんなことなかったんだが。中学の時はひどかったけども…ゴニョゴニョ。
あの…っとみーが話しかけてきた。
「僕たちじゃまですか…?めいわく…ぐすん。」
そんな顔で…
「こうしろうに言ってどうにかしてもらおう。気のコントロールを始めたなら俺達は必要なくなる。あきひが嫌なら無理に一緒にいることはない。」
そんな顔で見るんじゃない…
まるで虐待でもしてしまってる気分になるわ…こいつらが悪い訳じゃないのはわかってんだけど…。
「あー…邪魔とかじゃなくて…だな…。」
どうした俺、何迷ってるんだ俺。跡取りから離れられる第一歩になる、こいつらが出ていけば。
「…跡取り云々は置いといて…なら…居ても。」
俺が言い終わる前に踊り出す小鬼たち。「跡取りは内緒のしーっ!ですです!」と真っ先に跡取りの話をしたみーが喜びながら口走る。
俺は負けてしまった…。
「あ!僕たち名前ちゃんとあるですよ!僕は砂羅です!」
「俺は砂鬼、改めてよろしく。」
あぁ、うん。もうなんでもよいですよ…まぁ、めんどいから今まで通りに呼ばせていただきますけど!
あと数時間後に始まる朝のランニングのことを考え、とりあえず寝ることにした。白い玉の件は学校で親父に問いただせばいい。
…課題プリントが白紙だったがそんなことは忘れていた。
******
隣の部屋の明かりが消えたのを確認し、黒い影が動く。
「どうにかまとまったのかな?ごめんね鵺、こんな遅くに。」
「壱弥殿…。」
「…秋緋はさ、元々【妖怪】が嫌いとか苦手な訳じゃないんだよね。」
「それは拙者も十分承知しているでござる。」
「うん、優しいからね…あの事、話してはなかったよね?」
「恐らくあの小鬼は知らない様子。大丈夫にござろう。」
どうやら壱弥は、鵺を使って、秋緋と小鬼の会話を盗み聞きしていたらしい。
「そっか…知らないから憑かせたのかな?跡取りとかトリガーになりかねないから。それにしても…師匠も意地悪いよね、毎回ちゃんと話しないから秋緋はいつも困ってる、ふふふ。」
小声で笑う壱弥を心配した様子で見つめる鵺。
「しかし壱弥殿…このような…。」
「…ん。仕方ないよ、これは僕が望んでやってることだから。」
鵺が何か言いたそうにしていたが、カチリといつもの音をさせたボールペンに戻っていった。
「…まだもう少し。もう少しだけ待ってて…そしたら…。」
壱弥は目をつむり、改めて眠りにはいる。
「おやすみ、鵺…秋緋。」
5月の朝、空はもう白んでいた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
今日の桃色女子高生図鑑
junhon
青春
「今日は何の日」というその日の記念日をテーマにした画像をAIで生成し、それに140文字の掌編小説をつけます。
ちょっぴりエッチな感じで。
X(Twitter)でも更新しています。
友情と青春とセックス
折り紙
青春
「僕」はとある高校に通う大学受験を
終えた男子高校生。
毎日授業にだるさを覚え、
夜更かしをして、翌日の授業に
眠気を感じながら挑むその姿は
他の一般的な高校生と違いはない。
大学受験を終えた「僕」は生活の合間に自分の過去を思い出す。
自分の青春を。
結構下品な下ネタが飛び交います。
3話目までうざい感じです
感想が欲しいです。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる