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兄を取り戻せ!
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彰考さんが取り締まる医療機器メーカー所有のビル…義兄との逢瀬の場。
最初に潜入したのはミナホさんだ。
ミナホさんいわく『あーゆうことしてる奴の部屋は窓に厚いカーテンとか、見えないように大きめの観葉植物がおいてある。』だそうで…どこから得た知識かはわからないけど隠れるところは絶対あるらしい。
「うまく忍び込めてるだろうか…」
「心配ですか?」
「そりゃな…ミナホは美人だから襲われたら俺が何するかわからない。」
愛されてるなと思ってしまった…。
ミナホさんに何かある前に義兄が来てくれたら…来てほしくないってのが本音だけど。
夕日が落ちるか落ちないか…少し薄暗くなり始めた頃、あの日と同じように義兄は来て、入っていく。
ズキズキと胸が苦しくなる。
また…あの人に抱かれるのかと。
「響くん、耐えろ。あと少し…あと少しで終わるから、な。」
ケンゴさんの力強い声に勇気をもらい、義兄がビルの中に消えて数分…俺とケンゴさんも中に入る。
階段を上る度にドクンドクンと心臓の音が跳ね上がっていくのが分かる。
あの扉の前…耳を当てると、あの時と同じ義兄の甘い声が漏れている。
「…まだ10分も経ってないのにな…お盛んなことだ。」
小さい声で皮肉を言うケンゴさんの表情は険しい。怒ってるのがわかる。俺だって気持ちは同じだ。
「…行きましょう。」
「わかった、開けるぞ。」
開ける、というのが正しいかわからない。鍵がかけられてるのは明白だ、だからやることはひとつ。
ぶち破る!
ドンッ!!バキッ!!
ケンゴさんが助走をつけて体当りするとものすごい音を立ててドアは吹っ飛んだ。
「な…!何だ君たちは!…はっ?!」
「はっ…え…ケンゴ?…?!」
机の上にあられもない姿で仰向けになり、逆さまにこちらを見つめる義兄は事態を飲み込めないのか固まってしまっていた。もちろんそれは彰考さんも同じで…義兄の局部に自分のモノを繋げたまま。
「…れろ。」
「え…?」
「棗から離れろ!このクズ野郎!!」
声だけならまだ、辛うじて押さえられていた。
でもその目に映った光景はもう、たまらなかった。耐えれなかった。勝手に体が動いて、彰考さんに飛び膝蹴りをかましてふっ飛ばし無理やり引き剥がした。
「えぶっぅ?!」
そのまま馬乗りになって殴りかかろうと腕を振り上げたところを義兄に止められた。
「響…。」
フルフルと頭を横に降る義兄。
「でも…俺…こんなの…許せな…っ」
「これ以上響が手を上げることはしなくていいよ…ごめんな…俺が悪いのに…」
また『ごめん』って。義兄は悪くない、悪いのはこいつだ…!
「中々いい攻撃だったな。」
「俺もびっくり。響くんもうちの大学こない?空手とかキックボクシングとかど?」
ケンゴさんが棗に上着をかけ、隠れていたミナホさんが顔を出した。
「とりあえず…この人もう伸びちゃってるから写真だけ撮ってからここを出ようか!」
「棗も着替えろ。気持ち悪いかもしれないがシャワーは後でな。」
パシャパシャと手際よくミナホさんが写真を撮り、棗が着替え終わるのを待ってビルを後にする。
帰り道も俺は終始無言で…自宅に帰ってきてからもしばらくは声が出なかった。棗のシャワーが終わるのを待って、4人で話し合いが始まる。
「えーっと…まずは…どうする?ケンゴ…。」
「こういう空気には弱いなお前は。仕方ない。まず棗、体は平気か?」
「ああ、大丈夫。」
大丈夫なわけないのに。
「なら良かった。お前には悪いと思ったが…虐待の証拠として動画を取らせてもらった。後は最後のあの伸びてる叔父の写真だな。」
「悪いとか…俺の方こそ隠しててごめん。」
謝らないで。
「これを使って訴えることができる。どうするかはお前次第だが…俺たちとしてはそうしてほしいと思っている。」
「始まったの…最近じゃないっしょ?昔からだったんじゃない?」
「……。」
聞きたくない…聞きたくない…。
「言いたくないなら、無理しないでにいに。」
「響…。」
やっと声が出た、涙も出た、ひどい声だったと思う。
「ふたりともごめん、また今度ゆっくり話すよ。」
義兄はそんな俺の様子に気を使ってくれたみたいだ。
「そうだな。また落ち着いたら、な。」
「了解~。今日はふたりでゆっくりじっくりお話してね。」
2人きりの部屋の中で、どれ位の沈黙が続いただろうか。
「響…落ち着いた?」
「え?うん…落ち着いてる。」
涙を拭ってまた沈黙…俺からなにか言わなきゃ…。
「俺ね、響が好きなんだ。」
「え?!」
突然の告白に俺はまたしても声が出なくなった。
「気持ち悪いだろ?軽蔑するだろ?…だから俺はその思いを断ち切る為に彰考兄さんに身を任せてた。」
断ち切る…?何故…?
「小さい時、まだ響と出会う前にイタズラはされてて…響と出会ってから、体ができ始めてきてからセックスをするようになった。初めは抵抗してたんだけど。」
どうして受け入れた?
「彰考兄さんに口止めと、俺の写真撮ってたみたいでさ、バラまく、父さんにバラすとか。今思えば父さんに言えば自分だって立場が危うくなるのにね。その時は考えられなかった、馬鹿だよ。」
義兄の表情を見る限り、まだ違う理由があるのは分かった。無理矢理に、笑顔を作って続けた。
「響の事、一目惚れってやつ。だけど、これから家族になるのにそんなこと言えない。それに…『身内からされる』って気持ち悪いのに、でも体は勝手に気持ちよくなる気持ち悪さがあって…それを響にもさせるのかと思うと…この気持ちを切り放すしかない。」
震えながら…
「俺…オカシイのかな?彰考兄さんにされてる時、響にされてるんだって考えながらするようになって…止められなくなって…どうしたらいいかわからなくて…言えなくて…。」
涙を流しながら話す義兄に俺は…
「気持ち悪くなんてないよ、俺も…棗が好きだから。」
ギュッと抱きしめて囁いてた。
最初に潜入したのはミナホさんだ。
ミナホさんいわく『あーゆうことしてる奴の部屋は窓に厚いカーテンとか、見えないように大きめの観葉植物がおいてある。』だそうで…どこから得た知識かはわからないけど隠れるところは絶対あるらしい。
「うまく忍び込めてるだろうか…」
「心配ですか?」
「そりゃな…ミナホは美人だから襲われたら俺が何するかわからない。」
愛されてるなと思ってしまった…。
ミナホさんに何かある前に義兄が来てくれたら…来てほしくないってのが本音だけど。
夕日が落ちるか落ちないか…少し薄暗くなり始めた頃、あの日と同じように義兄は来て、入っていく。
ズキズキと胸が苦しくなる。
また…あの人に抱かれるのかと。
「響くん、耐えろ。あと少し…あと少しで終わるから、な。」
ケンゴさんの力強い声に勇気をもらい、義兄がビルの中に消えて数分…俺とケンゴさんも中に入る。
階段を上る度にドクンドクンと心臓の音が跳ね上がっていくのが分かる。
あの扉の前…耳を当てると、あの時と同じ義兄の甘い声が漏れている。
「…まだ10分も経ってないのにな…お盛んなことだ。」
小さい声で皮肉を言うケンゴさんの表情は険しい。怒ってるのがわかる。俺だって気持ちは同じだ。
「…行きましょう。」
「わかった、開けるぞ。」
開ける、というのが正しいかわからない。鍵がかけられてるのは明白だ、だからやることはひとつ。
ぶち破る!
ドンッ!!バキッ!!
ケンゴさんが助走をつけて体当りするとものすごい音を立ててドアは吹っ飛んだ。
「な…!何だ君たちは!…はっ?!」
「はっ…え…ケンゴ?…?!」
机の上にあられもない姿で仰向けになり、逆さまにこちらを見つめる義兄は事態を飲み込めないのか固まってしまっていた。もちろんそれは彰考さんも同じで…義兄の局部に自分のモノを繋げたまま。
「…れろ。」
「え…?」
「棗から離れろ!このクズ野郎!!」
声だけならまだ、辛うじて押さえられていた。
でもその目に映った光景はもう、たまらなかった。耐えれなかった。勝手に体が動いて、彰考さんに飛び膝蹴りをかましてふっ飛ばし無理やり引き剥がした。
「えぶっぅ?!」
そのまま馬乗りになって殴りかかろうと腕を振り上げたところを義兄に止められた。
「響…。」
フルフルと頭を横に降る義兄。
「でも…俺…こんなの…許せな…っ」
「これ以上響が手を上げることはしなくていいよ…ごめんな…俺が悪いのに…」
また『ごめん』って。義兄は悪くない、悪いのはこいつだ…!
「中々いい攻撃だったな。」
「俺もびっくり。響くんもうちの大学こない?空手とかキックボクシングとかど?」
ケンゴさんが棗に上着をかけ、隠れていたミナホさんが顔を出した。
「とりあえず…この人もう伸びちゃってるから写真だけ撮ってからここを出ようか!」
「棗も着替えろ。気持ち悪いかもしれないがシャワーは後でな。」
パシャパシャと手際よくミナホさんが写真を撮り、棗が着替え終わるのを待ってビルを後にする。
帰り道も俺は終始無言で…自宅に帰ってきてからもしばらくは声が出なかった。棗のシャワーが終わるのを待って、4人で話し合いが始まる。
「えーっと…まずは…どうする?ケンゴ…。」
「こういう空気には弱いなお前は。仕方ない。まず棗、体は平気か?」
「ああ、大丈夫。」
大丈夫なわけないのに。
「なら良かった。お前には悪いと思ったが…虐待の証拠として動画を取らせてもらった。後は最後のあの伸びてる叔父の写真だな。」
「悪いとか…俺の方こそ隠しててごめん。」
謝らないで。
「これを使って訴えることができる。どうするかはお前次第だが…俺たちとしてはそうしてほしいと思っている。」
「始まったの…最近じゃないっしょ?昔からだったんじゃない?」
「……。」
聞きたくない…聞きたくない…。
「言いたくないなら、無理しないでにいに。」
「響…。」
やっと声が出た、涙も出た、ひどい声だったと思う。
「ふたりともごめん、また今度ゆっくり話すよ。」
義兄はそんな俺の様子に気を使ってくれたみたいだ。
「そうだな。また落ち着いたら、な。」
「了解~。今日はふたりでゆっくりじっくりお話してね。」
2人きりの部屋の中で、どれ位の沈黙が続いただろうか。
「響…落ち着いた?」
「え?うん…落ち着いてる。」
涙を拭ってまた沈黙…俺からなにか言わなきゃ…。
「俺ね、響が好きなんだ。」
「え?!」
突然の告白に俺はまたしても声が出なくなった。
「気持ち悪いだろ?軽蔑するだろ?…だから俺はその思いを断ち切る為に彰考兄さんに身を任せてた。」
断ち切る…?何故…?
「小さい時、まだ響と出会う前にイタズラはされてて…響と出会ってから、体ができ始めてきてからセックスをするようになった。初めは抵抗してたんだけど。」
どうして受け入れた?
「彰考兄さんに口止めと、俺の写真撮ってたみたいでさ、バラまく、父さんにバラすとか。今思えば父さんに言えば自分だって立場が危うくなるのにね。その時は考えられなかった、馬鹿だよ。」
義兄の表情を見る限り、まだ違う理由があるのは分かった。無理矢理に、笑顔を作って続けた。
「響の事、一目惚れってやつ。だけど、これから家族になるのにそんなこと言えない。それに…『身内からされる』って気持ち悪いのに、でも体は勝手に気持ちよくなる気持ち悪さがあって…それを響にもさせるのかと思うと…この気持ちを切り放すしかない。」
震えながら…
「俺…オカシイのかな?彰考兄さんにされてる時、響にされてるんだって考えながらするようになって…止められなくなって…どうしたらいいかわからなくて…言えなくて…。」
涙を流しながら話す義兄に俺は…
「気持ち悪くなんてないよ、俺も…棗が好きだから。」
ギュッと抱きしめて囁いてた。
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