上 下
25 / 58
王都編

パパさんとお勉強

しおりを挟む





「お前達、王弟殿下に招待されたぞ」 



「王弟殿下ですか。それは意外な方からの接触ですね」
「???」
「全くだ。お前達も厄介な事に首を突っ込んでくれたな。ディオンから報告を受けて、まだ間もないと言うのに。この短期間で謁見とは……はぁ」
「アダム卿も当然一緒ですか」
「知らん。ここにはお前とルーカスの名前しか書いていない。モンフォール家に届いた招待状だ。他人の名前などあるか」
「ああ、たしかに」




 えっえっ、え。
何シラっと受け入れてんの。王弟だよ? 陛下の弟君おとうとぎみなんだぞ。
 普通にヤバイじゃん。
 パパさんの許可を得る前に、あの教授がコンタクト取っちゃったって事だろ?
やってくれたな、マジで。
 王太子殿下に何て言ったら、王弟殿下が出てくるんだよ。


「ーース、ルーカス。大丈夫か」
「あっ、すみません。大丈夫じゃないですぅっ!」


 俺が悶々としているうちに、パパさんに呼ばれていたらしい。
 慌てて返事をしたが、迷惑をかける事を謝るより先に、本音が出てしまった。


「だろうな。
ルーカス、陛下のご尊名は分かるな」
「オリオン・デメテル国王陛下です」
「では、王妃殿下のご尊名は」
「フレア王妃殿下です」


 さすがに分かるよ、それは。
王太子はジルベルト。第2王子はハイルだっけ。
それから王女様はジュリア様だ。
 ジュリア王女の美貌はアルソン村にも轟いていた。
なんせ、行商人から絵姿買ったからな。
綺麗って言うより、可愛い系の人だった。
 どうせなら、王女様に会いたい。男は嫌だ。


「王弟殿下は?」
「ユリ…あれ、カエサルだっけ」


 ローマの有名な将軍の名前だったはず。
どの部分か思い出せねー。ガイウス・ユリウス・カエサル。ユリウス…いやガイウス?


「ユリウス様だ。
このまま招待に応じるのは無理だな。かと言って、断る事も出来ん。
3日で教え込むから死ぬ気でやるんだ。出来るな」
「はひ」
「勿論、騎士団の出入りも禁ずる。
私が居る時は、私が教えよう。他はメアリーに教えてもらうと良い。
寝る暇はないぞ。覚悟しておく様に」


 嘘だろ。俺には甘いパパさんが、スパルタだと。
 絶対無理だって。3日でどうにかなるわけないじゃん。
いっそ記憶喪失の平民とかにしてくれ。




ーーーー
ーーー


「ルーカス、礼の作法は覚えたか」
「はい。一応」
「やってみろ」


 メアリーママによって仕込まれた、臣下の礼。
簡単な挨拶、最上位の敬意、謝辞を一通りやって見せる。


「まあ、ぎこちないが仕方ない。
不恰好でも失敗しなければ、見逃してもらえるだろう」
「はぃ」


 頑張ったけど不恰好らしい。
だって俺平民だもの。王族はおろか、貴族に会う機会だって滅多にないんだ。
 今はイレギュラーだけど。ディオンが貴族なんて知らなかったし。


「次。王城で会う可能性のある、要注意人物だ。
どこまで記憶した」
「えっと1/3ほど……」


 大臣やら貴族やら多すぎる。要注意人物だらけだ。
パパさん、思い当たる人全員上げてたりしないだろうな。
 さらにコレに王族までって……。
死ぬ。2週間もらっても無理。俺、暗記系苦手なんだよ。
しかも貴族の名前って紛らわしすぎるだろ。
 ああー、せめて俺が日本人じゃなくて、ヨーロッパ人だったらな。違和感なく覚えられただろうに。


「1/3だと? あと1日半しかないんだぞ。わかっているのか」
「うっ。ごめんなさい」


 これでも頑張ったんです、パパさん!
 昨日だって徹夜で名簿を音読して、書き続けて。
寝させて下さい。俺には荷が重すぎます。


「責めているわけではない。ルーカスの為なんだ。分かってくれ」
「はい…」
「終わったら、好きな事をさせてやろう。だから頑張りなさい。
次、王宮、妃宮に住まう王族と妃付きの侍女」
「えっと、ーーーー」



 昼夜問わず、パパさんに会う度に確認テストを受けた。
 その結果。俺はもちろんの事、付き合わされるメアリーママ、ディオン、フィン兄まで寝不足で濃いクマをこさえる羽目になった。
 本当、申し訳ない。



「ルーカス、帰ったぞ。
確認をしよう」


「ひっ」


 パパさんが帰って来た。恐い、逃げたい。


「ルーカス様、諦めて参りましょう」
「そんなっ。まだ妃宮の人の名前が。
えっと、アリッサ、ロクシア……」


「ルーカス、何処だ」


「ルーカス様。行きますよ」
「……あい」


 恒例となっていた、パパさんの見送り、出迎えをテストに対する拒絶反応で、今朝からボイコットしている。
そして、今みたいに使用人の休憩室に匿ってもらうわけだがーーーー
まあ、気休めにもならなかった。
 パパさんの俺を呼ぶ声に、メイド達が諦めろと言う。

「行きますよ」が「逝きますよ」に聞こえるのは、気のせいだろうか。



「《ルゥ様、嘆かわしいっ。ご愁傷様です》」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~

志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。 舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。 そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。 次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――? 「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」 ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!? □ ・感想があると作者が喜びやすいです ・お気に入り登録お願いします!

教室ごと転移したのに陽キャ様がやる気ないのですが。

かーにゅ
BL
公開日増やしてからちょっと減らしました(・∀・)ノ ネタがなくて不定期更新中です…… 陽キャと陰キャ。そのくくりはうちの学校では少し違う。 陰キャと呼ばれるのはいわゆるオタク。陽キャはそれ以外。 うちのオタクたちは一つに特化していながら他の世界にも精通する何気に万能なオタクであった。 もちろん、異世界転生、異世界転移なんてものは常識。そこにBL、百合要素の入ったものも常識の範疇。 グロものは…まあ人によるけど読めなくもない。アニメ系もたまにクソアニメと言うことはあっても全般的に見る。唯一視聴者の少ないアニメが女児アニメだ。あれはハマるとやばい。戻れなくなる。現在、このクラスで戻れなくなったものは2人。1人は女子で妹がいるためにあやしまれないがもう1人のほうは…察してくれ。 そんな中僕の特化する分野はBL!!だが、ショタ攻め専門だ!!なぜかって?そんなの僕が小さいからに決まっているじゃないか…おかげで誘ってもネコ役しかさせてくれないし…本番したことない。犯罪臭がするって…僕…15歳の健全な男子高校生なのですが。 毎週月曜・水曜・金曜・更新です。これだけパソコンで打ってるのでいつもと表現違うかもです。ショタなことには変わりありません。しばらくしたらスマホから打つようになると思います。文才なし。主人公(ショタ)は受けです。ショタ攻め好き?私は受けのが好きなので受け固定で。時々主人公が女に向かいますがご心配なさらず。

BL漫画の主人公に転生したから地味に生きる。……つもりだった。

海里
BL
 交通事故で痛みを感じることなく死んだはずの俺は、気が付いたら異国の貴族(と言っても男爵)の子息として生まれ変わっていた!?  そして気付く、ここは俺が知っている世界だと……!  腐男子としてこっそり新刊が出るたびに買っていたBL漫画の世界だと言うことに気付いた。金髪碧眼の愛らしい容姿の主人公。その名もアーサー。……生まれ変わった俺の名前だよ!  俺は腐男子ではあるけれど、自分がそうなろうとは思っていない。傍観者でいることが一番の喜びだったのに……!  こうなったら主人公ではなくモブとして、地味に生きよう……!  髪を染めて前髪で目元を隠し、いかにも根暗そうな雰囲気で……周りのBLカップルたちを応援する人になろう!  そう決意して早数年。――学園生活が始まる。  傍観者になりたいアーサーと、そんなアーサーにちょっかいを出すユーゴの話。   ※固定CP、ユーゴ×アーサーです。 ※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。

騎士団長の望んだ褒美は異世界転生した俺でした

BL
騎士団一の美貌と腕を誇る騎士団長であり、王弟殿下でもあるロイが今年の剣術大会で優勝したあかつきには褒美に俺が欲しいと国王陛下に宣言する。 え? 俺?? 平凡を絵に描いたような俺?? いや、ありえんって!! 異世界転生しているため、主人公の感覚は現代日本のままですが、こちらの世界は男女、男男、女女、タブー視されていない設定。 平凡な主人公(受)があっさり美形騎士団長(攻)の褒美にされると思いきや、いろんな所から横やり入り……。 主人公総愛されで、シリアスほぼなく、ドタバタハッピーエンドです♪ そこまで長い話にはしない予定です。 R18 が後半入る予定なので、*入れますがご注意ください!

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

俺はただ怪しい商人でいたかっただけ

みるこ
BL
「俺はただ怪しい商品を売るなんか怪しい商人でいたいだけなんだよぉ!」  ゲームやファンタジー作品でよく見かける、なんか突然現れて時々ものすごいレアなアイテムを提供する怪しい商人。それが俺の、俺達家族の生業だったんだが……?  これは、表舞台には立たない、がしかし裏で世界中を飛び回る謎の商人という、そんな目立たないけどなんか凄い奴として生きてきた主人公が、なぜか表舞台の主役級な人物、時には人外たちに追い掛け回されるお話。 「俺、カウンセラーでも無いし世間話をするためにこんなとこまで来てるわけじゃないんだけど」  癖も腕っぷしも強い主役級のキャラ達×裏では強い神出鬼没な怪しい商人(転生者) *主人公がチート級なキャラ達に色々な意味で狙われる総受け気味な内容です *主人公は商人モードの時、キャラ付けのために独特な話し方をするためご注意ください *若干の残酷な描写を含みます *基本的にほのぼのです *人間以外にも主人公は狙われています *独自の設定、解釈を基に執筆していますのでご注意ください。 *後々R18になる可能性がございます

モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています

奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。 生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』 ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。 顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…? 自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。 ※エロは後半です ※ムーンライトノベルにも掲載しています

転生した脇役平凡な僕は、美形第二王子をヤンデレにしてしまった

七瀬おむ
BL
(追記)アンダルシュノベルズ様より書籍化予定となります。本当に、応援してくださった皆様のおかげです! ■転生した平凡執事が、無意識に美形第二王子をヤンデレ化させてしまう話。 美形ヤンデレ第二王子×平凡転生執事/ヤンデレ・執着攻め/ハッピーエンド ■あらすじ 前世でプレイしていた乙女ゲーム『ルナンシア物語』の世界に転生してしまった、第二王子の執事「エミル」。 『ルナンシア物語』は、ヒロインの聖女「マリア」が、俺様系第一王子「イザク」と、類稀なる美貌を持つが心に闇を抱える第二王子「アルベルト」、この二人の王子から取り合いをされるドキドキの乙女ゲームである。 しかし、単なる脇役執事であるエミルは、主人である第二王子アルベルトと、ヒロインのマリアが結ばれなければ死んでしまう!  死を回避するため奮闘するエミルだったが、なぜかアルベルトはマリアに興味がなく、それどころか自分に強い執着を向けるようになって……!? ■注意書き ※カップリングは固定、総受けではありませんのでご了承ください。 ※サブキャラ同士ですが、男女カップリングがあります。 ※攻め→→→[越えられない壁]→→(←←)受けくらいのイメージです!

処理中です...