一夜一夜

第14夜 【麻弥の場合 】<続第二夜>

　待ち合わせは、少し離れたオープンスペースの喫茶店。

歩いて向かう。

もう、春だというのに襟付きのコートの前を閉じ、伏し目気味に歩く。

歩くたびに、コルセットとホットパンツが食い込む。

喫茶店に飛び込む。

男はまだ来ていなかった。
一番目立たない、奥の席。

しかし、店内でもコートを脱がない不自然な姿は、客や店員の注目を浴びている。

…早く来てくれないかなぁ…

待ち合わせ時間は、とっくに過ぎていた。

店の暖房が暑い。

汗は、更にコスチュームをキツく締め付けた。

モジモジと、腰を動かす。
妙な感覚が麻弥の顔を赤く染めた。

しっとりと汗が滲んだころ、スーツ姿の男はやってきた。

｢さぁ、行こう。｣

遅れたことなど、微塵も触れず、麻弥のレシートを掴み精算する男。

…どこへ行くの？…

｢いいところだ。｣

車の中で、コートを脱がされた。

｢どうだい？麻弥。イヤらしい女だ。｣

…こんな格好、恥ずかしい。…


某所、大きなアダルトグッズショップ。

車は店の真ん前に停まった。

｢行くよ。｣

…えっ！ヤダ、行かない！…

抵抗する麻弥。

｢なら、ここで待っていなさい。車の窓は開けて行きます。｣

アダルトショップの前。
人通りも多い。
ボンデージの自分が曝(ｻﾗ)される。
既に、通行人は麻弥を見ている。
耐えられない、

…わかりました。行く。…

ボンデージ姿の女と、スーツの男が、店に入って行った。

　客は、麻弥を視ている。

目を合わさないように。
胸の谷間…膨らみ…
絞められたウエスト…
食い込んで形がアラワな股間…
キュッと持ち上がったヒップ…
生脚…
ブーツが締め付けるふくらはぎ…
クビれた足首…

男は、麻弥の腰に手を廻し、時折、乳房を愛撫しながら店内を徘徊する。

…イヤです。こんなの、イヤ…

小声で耳打ちするのが精一杯。

｢そうか、イヤかい？なら、ここで暫く待っていなさい。｣

麻弥から離れ、上の階にいってしまった男。

麻弥は、ＳＭグッズコーナーの前に一人、放置された。

　　　　・・・・・・・・・

　　　　　　　　　(つづく)