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対王宮会議!

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薬草屋でのバイトを終え、急ぎ足で村に帰ると、リドさんは何やら執務中だった。
いつも色々手を貸してくれるリドさんだけど、やっぱり忙しいんだろうな。

一つの村を治める村長さんなんだ、あまり俺ばかりにかまける事は出来ない筈なんだ。
けど、俺の考えだけは聞いてもらわなきゃ。


「ユウ、お帰り」


リドさんは俺の気配を感じ取ったのか、動かしていた手を止め、こちらに笑いかけてきた。


「今日も無事に戻りました!あの、リドさん。相談したいことがあるんですけど……」

「どうしたんだ畏まって。まさか、騎士団長に何かされたのか?! 」


リドさんは突拍子も無い発言の後、クワッと目を見開き、持っていた羽ペンを手折ってしまった。


(あぁ!高そうなペンが真っ二つに……ッ!)

「いやいやいや、違いますって!相談したいのは、王宮についてなんです」


*******


俺は机に敷いた大きな紙に、最近覚え始めたばかりの下手くそなミミズ文字で文言を綴っていく。
満足のいく出来にはならなかったが、なんとか読める程度だろう。

一呼吸置いた後、部屋の隅に届くほど大きな声で宣言した。


「では、第1回王宮対策会議を始めます! 」

「おおう、やけに気合入ってるな」

「勿論ですよ!俺がこの村で末永く幸せに暮らしていけるかが掛かっているんですから」

「この村で末永く、幸せに……?」


俺の言葉を理解したのかしていないのか、リドさんはうわ言のようにブツブツと何かを言っているが、ひとまず無視しておこう。


「リドさん、昨日の黒髪目撃事件について、追加の情報を聞くことができたんです」

「へぇ、情報が早いな。それで、本当の情報で間違いなかったんだよな?」

「詳細は分からないみたいですが、恐らく本当です。王宮にいるもう一人の転移者に聞いたんですけど、やっぱり勇者が派遣されたらしくて、5日ほど帰らないということでした」

「は?転移者と連絡が取れるのか?」

「あ、言ってなかったでしたっけ。昨日道でばったり会ったんです。今は軟禁状態らしくて、偶々逃げ出したところで遭遇した、みたいな流れで……」


リドさんはそれを聞くと、何か思案するように顎に手を当てた。
続けて、と先を促されたので、話しを続ける。


「俺、ずっと王宮にいる転移者が気になっていたんです。もし転移者に力がなく魔王討伐に貢献できないことが知れたら、どうなってしまうんだろうって……」

「まあ、良くて異世界へ戻されるか、その労力が惜しいとなれば王宮から追放されるだろうな……いや、そうでもないか。そもそも戻れる確証があるのかさえ怪しい」

「そうなんです。王宮の手の内が全く分からない中、もう一人の転移者は召喚された時に“なんの力もない”と話してしまっているみたいで」

「ああ、それは不味いな。今は処遇を保留中といったところか」

「邪険に扱われているわけではないみたいなので、今は大丈夫です。2人目の転移者を王宮に召しかかえるまでの保険ってところでしょうね」


もし転移者を発見できたとして、先に王宮に召喚された転移者が酷い扱いを受けたりしていれば、協力体制は得られないだろう。
そんな王族の考えが、ケンの話を通じて、透けて見えるようだった。


「ちなみに疑問だったんですが、なんで王宮は黒髪の人間も転移者として探し回ってるんですかね。
伝承とやらでは金髪黒目の人間が王国を救う、っていう内容なんですよね」

「ああ、それについては俺も疑問だった。国王が何を考えているかは分からないが。大方、片方の転移者が役に立たなそうだから、もう一人に目星を付けたってとこだろうな」

「そうですか……やっぱり、早めにケンをこちら側に引き入れないと、不味いことになるな」


リドさんは俺の呟きを逃さなかったらしい。


「もしかしてユウの相談事って、もう一人の転移者をこっちで匿うって話か?」

「その通りです。同郷の出身なので、どうしても放って置けなくて」


リドさんは額に手を当てて、何かを悩むように数秒間唸った。
唸る声が止んだと思ったら、申し訳なさそうな顔で俺に向き直る。


「ユウの同郷のよしみって事で助けてやりたい気持ちは山々なんだが、ユウとは状況が違うんだ。
その転移者は、既に王宮に身を寄せていて、面が割れている。助け出すには、様々な悪条件が重なり過ぎてる」

(やっぱりか…)

「そうですよね、今の王宮から助け出すのは至難の技ですよね」


俺が想像していた通り、ケンをただ助けるといっても、いくつもの壁があり、不可能に近い状態だ。

でも、ここで戦いを避けても、俺が望む<村人A>のスローライフは送れないことが目に見えてる。
それに、比較的頑固な俺は、一度決めたらやり通すタイプなんだ。


「リドさん、そこで提案があります……俺たちで、王宮を変えませんか?」

「……は?」




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