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2章 新生活スタート

48 遭遇

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バールさんを散々甘やかしてしょげさせる事に成功した俺は、早々にログハウスへ戻ってきていた。
最近は、道中で危険な魔獣に会うこともなく家に辿り着けるようになっていた。
実は、森近くでもギョロロ鳥などの魔獣に会いにくくなったのも、マーナが見回りを初めてくれたおかげらしい。

そういうことで後で撫でてやろう、と心に決めて帰ってきたのだ。


「ただいま」

「おかえり、待っていたぞ」


マーナはもうログハウスに戻っていたらしい。尻尾を振りたくり出迎えてくれる。
もはや聖獣というより、犬そのものだ。


「黒小僧に何もされなかったか」

「ナニ…もされてないよ」


何かされたわけではなく、どちらかといえば何かしてきた側なので嘘はついていない。
…思わず不自然な間ができてしまったのは許してほしい。

ぴこぴこと動く耳を軽く擽りながら、マーナに話しかけた。


「マーナ、今日は食堂に食べに行こうか」

「あぁ、問題ない」

「じゃあ用意できたら声かけて」


ふわふわと指先に触れる耳周辺の毛の感触が心地よくて、柔らかい毛が多い頸を撫でてみる。


「フーッ!」

「あ、ごめん。不用意だったな」

「いや、そうではない…が。外に出られなくなりそうだ、早く行こう」




食堂はいつになく閑散としていた。


「あれ、人が少ないな」

「魔法模擬試験が近づいてきているのだと聞いているぞ」

「あぁ、そうか。試験対策で食堂も人が少ないんだな」


みんな真面目で偉いなあ。俺が学生の頃なんて、テストそっちのけで食い気に走っていた気がする。


「マーナ。あそこの席空いてる」


比較的空席も探しやすく、早目にご飯にありつけた。


「そういえば、マーナは最近日中は何してるんだ?」

「あぁ、周辺を散策している」


マーナ自身はなんて事ないように答えるが、その心遣いを嬉しく思う。


「マーナのおかげでここ数日で格段に通学しやすくなった。ありがとう」


そう例を述べると、マーナは尻尾をゆるりと振り、嬉しそうに口角を上げた。

そんな和やかな雰囲気の折、唐突に背後から声をかけられた。


「あれっ!カンザキ…と、どちら様ぁ?」

「あ、グリム」

「む?」


マーナがプレートから顔を上げ、グリムと視線が絡み合った。

…ピシリ、とグリムが動きを止める。


「…あ~、お邪魔しちゃったかな?また明日、学校でねぇ!」


先ほどまでの威勢はどこへやら、ピューッ!と俺たちの前から走り去ってしまう。


「誰だあの小僧…魔人は」

「ん、あぁ。同じクラスのグリムだ。いつもならズケズケくる所だが、どうしたんだろうな」

「ほう、木属性の剣技クラスか。」

「どうした?他の生徒に興味を持つなんて珍しいな」

「まあ、生徒…か。いやなに、懐かしい匂いがしたものでな」

「?…そうか」


俺にはその"匂い"やらは良く分からないが、マーナは獣ならではの鼻の良さがあるんだろう。


「じゃあ、食べ終わったし帰るか」

「あぁ…帰ったら、分かっているな?」

「はいはい、分かってるよマーナ様」


帰宅後、マーナが満足するまで散々撫でさせられたのは言うまでもない。
俺の掌、擦り切れてないだろうか…心配だ。
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