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2章 新生活スタート
33 意固地(side ユージン)
しおりを挟む「ハァ…」
やってしまった。
おかしいやつだと思われたに違いない…
投擲部の備品室で深いため息をついた。
先程のカンザキとのやり取りを反芻する。
「(なんでかカンザキと話してると、焦っちまうというか…余裕がなくなるんだよな。)」
さっきだって、ザックと仲良くなりつつある様子に焦ってしまい、休校日の予定まで取り付けてしまった。
しかも、ザックよりも早く、なんて我儘まで通して。
頭をガシガシと掻きながら、また深くため息をついた。
「(折角、あの優しく温かい眼差しをむけてくるカンザキの"クラスで一番仲のいい友達"になれると思ったのに。)」
そこまで考えてハッとした。
「(この感情はなんだ…独占欲?)」
俺らしくもない。
カンザキに赤黒コンビと言われていたあの二人にも感じたことのない感情だった。
分からない。
なんでこんな思考になるのか、理解できなかった。
「(…カンザキと話してるとなんか落ち着くんだよな。なんというか、離れ難く感じるんだ。)」
そういえば初めてカンザキを見かけたあの日、彼は知らない獣人と食事を取っていた。
考え始めると色々とモヤモヤしてくる。
泥沼に足を取られたみたいな感覚だ。
胸がチリッと焼けつく様に痛む。
なんなんだコレ。昨日食べた肉のせいか?
「あ"ぁもう!!練習しよう、練習!!!」
砂埃が鼻を擽る室内で一人大声を上げる。
そうでもしないと、このジリジリと肺のあたりを刺激する感覚から逃れられない気がした。
「…ッシ!練習メニュー増やすか。」
室内の暗くてジメジメとした空気に呑み込まれないように、早足で美品室を後にした。
「…あぁ、早く休校日にになんないかな。」
ー だって、二人で出かけたい、なんて言われてしまったんだから。
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