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2章 新生活スタート
17 満たされる(side バール)
しおりを挟む【attention】
16の別視点ですので、飛ばしてもOKです。
*****
初めて見かけた瞬間に湧き上がった、ゾクリとした欲望。
生気のない目と、作られた笑み。
どこか私達とは線を引いているかの様な態度。
瞬間、私の欲を満たせるのはこの存在しかいないと悟った。
腹に乗る足。
少年にしては長い足を、なんの躊躇もなく振り下ろしてくる。
「ぅぐ…!」
余りの事に、脳がスパークする。
少年は私の事を気にした風もなく、作業の様に足蹴にした。
考え事をしているかにも見える。
(私を踏みつけながら、よそ見だと…)
恨めしい、と思った瞬間、一番弱い脇を蹴り上げられた。
思わず息が詰まり、唸り声を上げる。
まるでこちらの考えている事がお見通しかの様なタイミングだ。
全く感情の伴わない謝罪も、私を昂らせるだけだ。
(私を追い詰める事になんの躊躇もない…
これぞ私が追い求めていた"主"だ)
屈服の証に、その足に口付けたくなる。
もうこの痛みなくして満足のいく生活は送れない。
足蹴の合間に、その足に縋ろうとした。
しかし、少年は足をパッと退かし、
代わりに私の首を締め上げる。
気紛れでいて、的確に私を追い詰めるその動きにあっという間に翻弄されていた。
気道が狭くなり、一人でに口が酸素を求める。
ジワリと身体の奥底から湧き上がる快感に、自分がどんな表情をしているかだなんて気にする余裕はなかった。
ー もっと、もっと…
少年はそんな浅ましい私に、待てを告げた。
(ああ、そんな…でもまたこの快感を味わえるのなら…)
私はデスクの引き出しに大切にしまっていたチョーカーを取り出す。
私が認める"主"が現れたら、付けてもらおうと取っておいたものだ。
ー 元々はあの忌まわしい女が渡してきたものだったが、モノは良い。
幼少期に振るわれていた暴力によって、無償の優しさを受け付けず、痛みに安息を感じる様になった。
自身の異常さは理解している。
それを気にも留めず、ただ求める物を与えてくれる存在が私には必要だった。
(まさかこんな場所で巡り合えるとは…)
これからの生活は退屈しなさそうだ。
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