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DLC本編

モブ(俺)、見つかりました。

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えすみ?誰の事だっけ。

知らないはずなのに、口からはスルリとその名前が出て来た。

目の前の生徒は、本当に"えすみ"というらしく、矢継ぎ早に話し始める。


「お前、戻ってきたのか!目の前で消えたあの日から、半年以上も音信不通だったのに」

「音信不通?何を…い、痛ッ!」


(音信不通っていうことはもしかして、知り合いだった?)

俺といえば、目の前の人物のことをすっかり忘れてしまっている。

それがどうしても思い出さないといけない事に思えて、糸を手繰り寄せるように記憶を振り返ると、突然堪え難い頭痛に襲われた。

鈍く響くような痛みに、ついに耐え切れずその場に倒れ込んだ。


「っ、田中?!…全く、心配かけさせやがる」






夢を見ていた気がする。

俺は高校の時のいじめが原因で挫折を経験し、引き篭もるようになった。

なんとか大学は出たが、結局就職も上手くいかずニートになる。

…そんな俺が、ゲームの世界に入り込んで、"皆"と出会う夢だ。


「いや、それも現実だって!!!」


全ての記憶を取り戻した俺は、この世界のあらゆる現象にツッコミを入れながら飛び起きた。


「うわっ!田中が飛び起きた!」

「田中君、身体は平気?頭痛くない?」

「ま~た急に来やがって……もしかして、学園のこと家か何かだと思ってんのか?」

「え、待って待って、あれ…皆いる?」


目を覚ましたら俺は保健室のベッドに横たわっていて、周りには皆が集まっている状態だった。

黒木、主人、里田、江隅、皇先生というキラキラ爆イケメンツが、皆心配そうにこちらを見ているのだ。

(いや、皆って、それはゲームの中だけの話で…。)

そこまで考えが纏まると、手が自然と震え出す。


(…あれ、俺って今、何歳だっけ?)


冷静になれ、漢田中よ。
ここは一度情報を整理しなければ。

今の俺は、大学を4年前に出たただのニート…ではない。
この世界で紛れもなく17歳として生きている。

(じゃあ、このあるはずもない記憶は…何?)


「あー、田中君。混乱してる?
目の前で倒れた君を僕が保健室まで運んでるうちに、ここに居る皆さんに見つかったの。

君が帰ってきた事を喜んでいたから、一緒に目が覚めるのを待ってもらってたんだ。

…ひとまず、お帰り」


「お帰りぃ~!」

「あれ、また制服着てるってことは…編入とか?」

「そのつもり、なんだけど…ね、先生?」


俺は唯一の教員である先生に目線を向けると、深くため息を吐かれた。


「昨月、急にな。まさか本当にお前とは思わなかったが…この唐突さが逆に田中らしいな」


先生が気怠げに話した内容を考えると、今までゲーム内でしてきた事は確かにこの世に反映されている。

(そうだよ、おかしいって!どう考えても、あれは夢じゃなかった。)

今だって、大学生として生きていた時間も鮮明に思い出せる。
そもそも、なんでこんな大事なことを忘れてたんだろう…俺の馬鹿!

そうなると、俺と妹が若返っている時間軸である今が信じられなくなる。
ここがゲームだとしたら、妹と皆が同じ次元に存在している筈がないじゃん。


「…確かめなきゃ」

「あ、おい田中!来て早々帰るの?!」

「ちょっと忘れ物~!!また戻って来る!」



ドタバタと走り続け、新居にUターン。

急いで引っ越しの際に元の家から持ってきた机の引き出しを開けまくる。


「…ない。あのゲームのソフトがない!」


開けた引き出しには紙類しか保管されておらず、ゲームらしきものは見つけられなかった。


「じゃ、じゃあ!パソコンに何かあるかも!」


パソコンを立ち上げてみると、案の定見慣れない"レポート"という名前のフォルダが作られていた。

フォルダを開くと、いくつかのファイルが残されている。


「タイトルは1日目、2日目…これ、あの世界で書いたレポートだ」


探究心に突き動かされるように、ファイルを開封した。


「1日目 転んだで頭を打ったら、ゲームの世界に入っちゃった…俺、こんな馬鹿そうなレポート書いてたのか。園児か!」


でも、それがこのパソコンに入ってるってことは…やっぱりここはゲームの世界なのか?

まだ確信は持てなくて、というか俄には信じられなくて、またデスクトップを弄る。

すると、"マップ"と書かれたアイコンを発見した。


「これ、向こうでも時折見てたやつかな。あのぉ~あれ、アバターがいたヤツ」


アイコンをクリックして開いてみるが、何の変哲もない地図情報が出るだけだ。

しかもちゃんと現在地を指し示しており、地図上には勇都陽亜学園まで存在している。

(これじゃあまるで、ゲームの機能が丸っと使えなくなったみたいな…ハッ!)

ここで、俺はある一つの可能性に辿り着いた。


「もしかして、2つの世界がくっついちゃった…とか?」


いやいやそんなわけ…と思ったが、そう考えると全て辻褄が合う。

これってつまり、高校生に戻って、まだ仲良かった時の妹とも一緒に生活できて、皆にも再会できて…。


「…そんな、そんなのって」


「最ッッッ高じゃん!」


俺は思わず拳を天高く突き上げ、雄叫びを上げた。

(これからまた頑張ればニートさえも卒業することが出来る!いや、せねばならない!)


「そうと決まれば、また登校しなきゃ!」


俺は家に帰ってきた時よりも、数倍は軽くなった足取りで学園までの道のりを急ぐ。


……今度こそ、皆にちゃんと自分の言葉で 「ただいま」と「待っていてくれて、ありがとう」を伝えるために。


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