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桜井 明 ①
しおりを挟む「やっぱりこの薬の効果を薄めることはできないんですか?」
俺は藁にもすがる思いで、教授に再度相談した。
だって、こんな状況で1週間過ごせだなんて…立木にも教授にも、既にあんなことをされてしまったのに耐えられるわけがない。
「…無理だな。」
「え?!今、不自然な間がなかったですか?!」
「気のせいだ」
教授は俺の問いかけを突っぱねて、ソファにゴロリと寝転んでしまう。なんなら今にも寝そうだ。
学生に向かってその態度はなんだ!と言いかけて、自業自得でもある状況なことを思い出して踏みとどまる。
教授とは前々から仲が良かった自覚はある。
研究室所属は俺を含めて片手で足りるくらいの人数で、その中でも俺はよく教授にくっついて回っていた。
学会に同席させてもらったり、備品買い出しに行ったり…
でもそれにしたって扱いが雑すぎないかな?!
考えれば考えるほど、俺への扱いに不満が募り、教授が寝そべったソファに近寄ろうとした。
教授は薄く目を開くと俺を制止させる。
「それ以上近寄ったら犯すぞ」
「おかっ?!…もういいですよ、1週間家に引きこもります!!」
本当に口がとんでもなく悪い教師だな!!
俺は自分の言われた言葉を反芻し、身を震わせる。
「講義はどうするんだ」
「…誰とも話さずこっそり聴きに行きます。」
「まあ、出来るだけやってみたらいい。無理なら俺の条件を飲むことだな。
全講義欠席になるよりかはマシだろう。」
教授はそういうと、興味を無くしたように寝返りを打った。
(話はもうおしまいってことね。)
また襲われては敵わんと、俺はラボを後にした。
******
「とりあえず、バイトの休みは貰ったぞ…」
店の人に小言を言われながらもなんとか休みを勝ち取った俺は、
部屋着に着替えて部屋で今後について考えていた。
「教授はなんか解決策知ってそうだったけど…あの様子じゃ、絶対に口を割らないだろうな…」
なんでそんなに言いたがらないかは不明だが、何か理由があるはずだ。
悶々とそんなことを考えていると、部屋のドアが控えめにノックされた。
「智くん…?今日バイトじゃなかったっけ。」
ドア越しに優しげな声色で話しかけてくるのは、4つ年上の兄、明だ。
在宅で仕事をしているため、大抵家にいるのが兄貴で、家族の予定を悉く握っている。
ちなみに、遺伝子は同じはずなのに、俺と違って顔の造形が整っている。
控えめなノックが示している通り、物腰が柔らかで、頭の良い自慢の兄だ。
…どこかの教授に見習ってもらいたいところだ。
「あ、兄貴。あ~、ちょっと事情があって休んだ。」
「そうなの?もしかして体調悪い?」
兄貴は俺を心配したのか、ドアを開け俺の側に寄る。
額に手を当て、熱はなさそうだねと呟いた。
「あ、体調が悪いとかじゃ無くて…ちょっと問題が起こってね。」
「問題?」
俺は効能のことは割愛しながらも、教授の研究成果を飲んでしまったことを伝えた。
どうなるか分からないから、安静にしておけと言われた、と嘘をついてみる。
兄貴はそれを黙って聴きながら、形の良い眉を歪ませた。
「どこか変わった点はないの?体調とか、外傷とか。」
「外傷…?あ、それはないんじゃないかな。内服するものだったらしいから。」
「いや、智くんが気付いてないだけかもしれないよ。一度確認した方がいい。」
「いや、大丈夫だって…」
「駄目、確認して。」
そう、兄貴の唯一の欠点というと、ちょっとブラコン気味で、過保護なところだ。
嫌われるよりは良い話なんだけど、兄貴に至ってはそれが度が過ぎている。
「智くんが嫌がるなら…僕が確認するね。」
「へ?」
既に至近距離にあった兄貴の手が、俺のトレーナーを捲り上げる。
「ちょ、兄貴?!」
「智くんは自分の事となると鈍くなっちゃうから。」
そう言いつつも、兄貴は意外に強い力で俺を押さえつけ、トレーナーを剥ぎ取ってしまう。
部屋着だったから、その下には何も着ていない。
あっという間に、上裸になってしまった俺の身体をじっくりと見つめる視線…兄貴の息は、何故か少し上がっていた。
「身体には特に異変が無いみたいだね。」
「だから言ったろ!」
俺はこのまま上を脱がされた状態なのも恥ずかしく、視線から逃れようと軽く身動ぎをして兄貴の身体に足が触れて…
“ゴリッ”
(…え?)
兄貴の中心が硬く、熱を持っていることに気が付いてしまった。
俺の足の刺激に、ピクリと身体を震わせるた兄貴は、顔を赤面させた。
「…ん、智くん…ごめん、なんか今日、おかしいみたいだ。」
「ひ、ひいぇ…何がっ!?」
この状況下で声をかけられ、焦り過ぎて変な声が出てしまった。
…も、もしかして、この薬…身内にも効果があるのか?!
エロ漫画もビックリの展開に、俺は咄嗟の判断が出来なかった。
ここで、抜いてこいよ、とでも言えればこの後の展開が変わったかもしれないのに。
「…ねぇ、智くん。一生のお願い、聞いてくれない?」
兄貴は薄く色気のある唇を歪ませて、そう囁いた。
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