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12.国王陛下の呼び出し
しおりを挟む「毒薬が、出なかった、だと!?」
執務室で騎士団長の報告を待っていた第一王子は、やっときた報告に言葉を失っていた。
「そんな……。」
一緒に報告を聞いていた侯爵令嬢もまた、同じように青褪めていた。
「どういう事だ?」
第一王子はそう言って、咎めるような視線を侯爵令嬢に向ける。
「わ、わたくしはちゃんと……。」
侯爵令嬢が言い訳をしようとしたとき、執務室の扉をノックする音が聞こえてきた。
「第一王子様、ならびに侯爵令嬢様、国王陛下がお呼びでございます。」
扉の外で護衛に就いていた騎士が、そう取り次ぎをしてきた。
二人はお互い顔を見合わせる。
そして、国王の遣いと護衛の騎士たちに囲まれながら、執務室を後にするのであった。
通された場所は国王の寝室でも、謁見の間でもなかった。
王宮にある、王族のみが利用できるサロンに連れて来られた第一王子は、そこに居る人物を見て顔を顰めた。
「なぜお前が、ここにいる?」
そこには、ソファに座って優雅にお茶を飲む第一王子妃が居た。
「ごきげんよう、第一王子殿下。」
「質問に答えろ!」
朗らかに挨拶をしてくる王子妃に、第一王子は声を荒げて睨み返してきた。
「何故と言われましても、わたくしも王族の一員ですから。ここに居ても、おかしくはありませんでしょう?」
第一王子妃はそう言って、不思議そうに首を傾げてきた。
「何を生意気な!お前は今、謹慎中の身であろう!?」
第一王子が憤慨し捲し立てていると、丁度そこへ隣の部屋の扉が開き、中から国王陛下が現れた。
「第一王子妃は、予が呼んで此処へ来てもらったのじゃ。」
サロンの中へと移動しながら、説明してきた国王陛下は、しっかりとした足取りで第一王子妃の隣へと並んだ。
「ち、父上、起きてきてよろしいのですか?」
突然の父王の登場に、第一王子は驚いた顔をする。
そんな息子に親である国王は
「予を余程、病人にしておきたいようじゃな。」
と、皮肉を込めた言葉で返してきた。
「そ、そんなことは……。」
国王の言葉に、第一王子は狼狽える。
「残念じゃが、予はこの通りピンピンしておるわい。」
青褪める息子に、国王はふんと鼻を鳴らすと、見せつけるように胸を張ってきた。
「なっ、で、では、病気というのは嘘だったということですか!?」
「いえ、確かに国王様が倒れられたのは事実です。」
その元気そうな姿に抗議の声を上げると、第一王子妃が話に入ってきた。
「なに?」
突然の横槍に、不快感も露わに第一王子が聞き返してくる。
「ええ、病気、ではありませんでしたけれど。」
冷たい視線で見降ろしてくる王子に臆することなく、第一王子妃は小首を傾げながら言葉を付け足してきた。
その含みのある言い方に、第一王子の片眉が跳ね上がる。
「どういう意味だ?」
「ふふふ、まあ、まずは皆さんお座りになって。ゆっくりお茶でも飲みながら、お話ししましょうか。」
第一王子の質問を奇麗にスルーしながら、第一王子妃は席に着くよう勧めてきた。
「き、貴様!!」
「何をしている、座れと言っているのがわからんのか!」
そんな王子妃の態度に憤慨し、王子が何か言おうとしたところ、それを遮り国王が命令してきた。
有無を言わせぬ王の迫力に、第一王子と侯爵令嬢は渋々席に着く。
すると、それを待っていたかのように、第一王子妃の侍女たちがテキパキとお茶の用意をしだした。
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