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5.卒業パーティーで悪役令嬢をやり遂げます!

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卒業パーティー当日――

この日、イザベラは気合を入れて悪役令嬢らしい派手なドレスで学園に向かっていた。

――やっと、やっと……この日が来たのね……。

イザベラは、ようやく目的の最大イベントである卒業パーティーを目前にして感慨に耽っていた。

――これが済んだら私は没落しちゃうけど、ぜんっぜん後悔は無いわ。いっそ清々しい位よ♪

そう胸中で言いつつ感無量と、今までの苦労を思い出しながら目を閉じ拳を握り締める。

――振り返れば、ここに辿り着くまでの道のりは結構長かったわ……。

そして、フッとイザベラは目を開けると遠い空を見上げたのだった。

――あのボンクラ王子のせいで随分手を焼かされたけど、それも今日で終わり……。

空を眩しそうに見上げていたイザベラは、悪役令嬢メイクを施した顔に哀愁を漂わせ、ほおと溜息を吐いてきた。
そして――

――うふふふふふ、気を抜くと顔がニヤケちゃうわぁ~。さ、早く会場に向かいましょおっと♪

イザベラは、数秒ほど憂い顔をしていたかと思ったら、急にニヤニヤ笑い出すと、スキップしそうな勢いで会場へと向かったのであった。





「イザベラ。」

「あ、エリオット。早く会場に行きましょう!ヒロインがお待ちかねよ♪」

イザベラがルンルンで廊下を歩いていると、正装に身を包んだ王子が声をかけてきた。
ご機嫌なイザベラは、そんな王子に会場へ行くように促す。

「へ?」

しかし、次の瞬間イザベラの視界がぐるりと回転したのだった。

「へ?え?」

気が付いた時には、何故かエリオットに抱き上げられて廊下を逆方向に進んでいたのであった。

「ちょっ、エリオット!会場は、そっちじゃないわよ!?」

イザベラの制止も聞かず王子はイザベラを、お姫様抱っこしたまま無言で廊下を進んで行ってしまったのであった。





「きゃっ。」

無言のまま何処かへ連れて行かれ、やっと王子が足を止めたかと思った瞬間、イザベラはいきなり放り投げられてしまった。
着地した場所は柔らかい場所だったため、大したダメージは無かったが、しかしここは何処だろうと首を巡らせた所でイザベラの動きが止まったのだった。

「え?こ、ここって……。」

「僕のプライベートルームだよ。」

イザベラの疑問の声に王子が答えた途端、ズシリとイザベラの体に重みが掛かった。
驚きながら見上げると、何故かエリオットがイザベラに伸し掛かってきたのであった。
しかも、イザベラが今居るのはプライベートルームのベッドの上。

「エ、エリオット?」

有り得ない状況と、突然の事に目を丸くするイザベラ。

「こうでもしないと、君は話を聞いてくれないだろう?」

イザベラの両手を拘束し、身動きを取れないようにしながら王子は言ってきた。

「ちょっと、何ふざけてるの?もうすぐパーティーが始まっちゃうじゃない!」

動きを封じられてしまったイザベラの脳裏に、警笛が鳴り響く。
平静を装い尤もな事を言って退いて貰うように言ってみたが、何故か王子はフッと口元に笑みを作ると更に体重を掛けてきたのだった。

「エ、エリオ」

「パーティーは、僕達が居なくても勝手に始めるように言っておいたから安心して。あと、ここへは誰も来ないから大声を出しても無駄だよ。」

「え?」

いつも、ぼんやりとして掴み所のない彼が、今日は珍しくハキハキと答えてくる姿に、イザベラは目を見張りながらエリオットを見上げた。

「な、なんで?」

「さっきも言ったろう?こうでもしないと、君は話を聞いてくれないし暴走するからね。」

見上げた王子は、いつもの優しい微笑を称えながらイザベラを見下ろしていたのだが、しかし何故かいつもと違う様な気がして、イザベラは不安そうに眉を顰めたのだった。
そんなイザベラに、王子は安心させるように優しい笑みを見せてきた。
そして、暫し見つめ合うこと数秒。

「はっ!こんな所にいる場合じゃないわ。ヒ、ヒロイ……じゃなかった……フィリアを迎えに行かなきゃ!」

と、突然イザベラは叫ぶように言ってきたのであった。
その途端、王子の顔が不機嫌になる。

「あんな子、どうだっていいよ!!」

「え?」

王子の言葉にイザベラは目を見張った。

「それより、僕は君と婚約破棄する気は無いからね。」

「え、ええ!そんな、困るわ……私の計画が!」

突然言われた王子の言葉にイザベラは狼狽え、王子を押し退けようと藻掻いてきた。
そんなイザベラに更に体重を掛けながら、王子は溜息交じりに言ってきたのだった。

「もう、意味の分からない事ばかり言って。イザベラ、僕は君意外と結婚する気は無いよ。とりあえず、事実を作らないと逃げちゃいそうだから覚悟してね。」

そう言って、薄っすらと笑った王子の笑みは黒かった。
その見慣れない笑みに、イザベラはビクリとする。
脳裏で警笛が激しく鳴るが、動きを封じられて逃げる事が出来ない。

「エ、エリオット……な、何を……」

「これから既成事実を作るんだよ。国王には了承済みだ。あと、君のお父上にもね。」

青褪めるイザベラに、王子は黒い笑みのまま、そう言ってきたのだった。

「え?ちょっと待って!?」

イザベラは、更に顔色を青くしながら止めるよう言ってきたが……

「だめ、もう待てない。」

と、王子に口を塞がれてしまうのであった。

その後、イザベラは朝までベッドから解放させて貰えなかったのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



おまけ(微エロ?)

「ごめんね、少し痛いけど我慢してね。父上から、ちょっと強引にしないと証拠が残せないって教えて貰ったから。」

「へ?どういう……て、いったあ~い!!」

ベッドの上で、あっという間にドレスを脱がされてしまったイザベラは、己を組敷く王子に疑問の声を上げていたが次の瞬間、下半身を襲う痛みに悲鳴をあげたのであった。
痛みで涙を滲ませるイザベラの目尻や頬に、王子は何度もキスをしながら言い聞かせるように囁いてきた。

「ごめんね、痛いのは今回だけだから。次は、もっと丁寧にゆっくり時間をかけて、嫌っていう程気持ちよくさせてあげるから許して。」

そう言って体を弄ってくる王子に、痛みで余裕の無いイザベラは嫌々と頭を振る。
そんなイザベラに、王子は困ったような顔をしてくる。

「泣かないで。でも、これでやっと僕達は夫婦になれたね。」

ぐずる子供を、あやすように囁いてきた王子が微笑みながら見下ろすその先には、くっきりとシーツに情事の痕ができていたのであった。


おわり
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