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本編【完結】
第四十七話 男爵令嬢と王子様
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――かんっぺき!完璧だわあ~♪
生徒会室で書類を整理するフリをしながら、エミリアは胸中でガッツポーズをしていた。
――私の計画は順調♪噂も思い通りになったし、欲しいネタも手に入った。あとは真面目な所をアピールして卒業式を待つばかりよ!それに……。
エミリアは自分の執務机に座りながら、ふっふっふっ、と勝ち誇ったように笑いだす。
――仮眠室でのことは失敗したけど、でも……
エミリアがそこまで考えていると、不意に生徒会室の扉が開いた。
「エミリー、ちょっといいかな?」
扉を開けて入って来たのは、この国の第一王子にして、この部屋の会長であるレイモンドであった。
レイモンドはエミリアを見つけると、蕩けるような微笑を向けながら名を呼んできた。
「はい、レイ様♪」
エミリアはすぐさま立ち上がると、レイモンドの所に可愛らしく駆け寄る。
恋する乙女の表情で見上げるエミリアを、レイモンドは嬉しそうな顔で見下ろしていた。
「少し休憩にしよう。温室にお茶の用意がしてあるから行こうか。」
「はい。」
エミリアが嬉しそうに頷くと、レイモンドは彼女の肩を抱き寄せながら生徒会室を後にしたのだった。
「ど、どういうことなんでしょうか?」
「さ、さあ?」
突然のレイモンドの変わり様に、いまだに慣れない生徒会室の部員たちが首を傾げる。
そう、数日前からレイモンドはエミリアに対して優しく接するようになってしまったのだった。
何がどうした?とエミリアが生徒会に入った頃の激しい攻防戦を知っている部員たちは、その豹変に度肝を抜いた。
そして、同時に落胆したのだった。
――ああ、あの鉄壁の防御を誇っていた第一王子様も、遂にあの男爵令嬢の色香に陥落してしまったのか……。
と――
うふふふふ
あはははは
花々が咲き誇る美しい温室から、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「エミリーと話すのが、こんなに楽しいとは知らなかったよ。」
優雅にカップを傾けてそう言うのは、金髪碧眼の見目麗しい王子様であるレイモンドであった。
彼は蕩けるような眼差しをエミリアに向け、楽しそうに微笑んでいる。
対するエミリアも頬を染めながら、レイモンドを熱の籠った視線で見つめていた。
甘い雰囲気のなか進んでいくお茶会を、レイモンドの後ろで無表情で見つめているケビンの姿があった。
彼はいつも物静かに主人を見守っているのだが、今日はその表情はさらに無表情で能面のような顔をしていた。
主人の側にいつも従い、何が起ころうとも全く感情を露わさないその姿は、従者の鑑ともいえよう。
しかし今までの彼は、ここまで無表情で無関心を貫くことはなかった。
昔、というか少し前までの彼は主人達の会話に時々混ざったり苦笑を零したりと、極々稀にではあったがそんな砕けた所もあった。
しかし今、彼は背景に同化し主の邪魔をしない置物の一部と化していた。
そしてじっと主人を見つめるその視線は、主人の意図を汲み取るべく、静かにただ静かに見つめているだけであった。
生徒会室で書類を整理するフリをしながら、エミリアは胸中でガッツポーズをしていた。
――私の計画は順調♪噂も思い通りになったし、欲しいネタも手に入った。あとは真面目な所をアピールして卒業式を待つばかりよ!それに……。
エミリアは自分の執務机に座りながら、ふっふっふっ、と勝ち誇ったように笑いだす。
――仮眠室でのことは失敗したけど、でも……
エミリアがそこまで考えていると、不意に生徒会室の扉が開いた。
「エミリー、ちょっといいかな?」
扉を開けて入って来たのは、この国の第一王子にして、この部屋の会長であるレイモンドであった。
レイモンドはエミリアを見つけると、蕩けるような微笑を向けながら名を呼んできた。
「はい、レイ様♪」
エミリアはすぐさま立ち上がると、レイモンドの所に可愛らしく駆け寄る。
恋する乙女の表情で見上げるエミリアを、レイモンドは嬉しそうな顔で見下ろしていた。
「少し休憩にしよう。温室にお茶の用意がしてあるから行こうか。」
「はい。」
エミリアが嬉しそうに頷くと、レイモンドは彼女の肩を抱き寄せながら生徒会室を後にしたのだった。
「ど、どういうことなんでしょうか?」
「さ、さあ?」
突然のレイモンドの変わり様に、いまだに慣れない生徒会室の部員たちが首を傾げる。
そう、数日前からレイモンドはエミリアに対して優しく接するようになってしまったのだった。
何がどうした?とエミリアが生徒会に入った頃の激しい攻防戦を知っている部員たちは、その豹変に度肝を抜いた。
そして、同時に落胆したのだった。
――ああ、あの鉄壁の防御を誇っていた第一王子様も、遂にあの男爵令嬢の色香に陥落してしまったのか……。
と――
うふふふふ
あはははは
花々が咲き誇る美しい温室から、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「エミリーと話すのが、こんなに楽しいとは知らなかったよ。」
優雅にカップを傾けてそう言うのは、金髪碧眼の見目麗しい王子様であるレイモンドであった。
彼は蕩けるような眼差しをエミリアに向け、楽しそうに微笑んでいる。
対するエミリアも頬を染めながら、レイモンドを熱の籠った視線で見つめていた。
甘い雰囲気のなか進んでいくお茶会を、レイモンドの後ろで無表情で見つめているケビンの姿があった。
彼はいつも物静かに主人を見守っているのだが、今日はその表情はさらに無表情で能面のような顔をしていた。
主人の側にいつも従い、何が起ころうとも全く感情を露わさないその姿は、従者の鑑ともいえよう。
しかし今までの彼は、ここまで無表情で無関心を貫くことはなかった。
昔、というか少し前までの彼は主人達の会話に時々混ざったり苦笑を零したりと、極々稀にではあったがそんな砕けた所もあった。
しかし今、彼は背景に同化し主の邪魔をしない置物の一部と化していた。
そしてじっと主人を見つめるその視線は、主人の意図を汲み取るべく、静かにただ静かに見つめているだけであった。
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