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劇場に行ってから何故かランスロットは、掌を返したように事ある毎にエレノアをデートに誘ってくるようになったのであった。
しかしエレノアは、喜ぶどころか逆に何か裏があるのではないかと疑っていた。

――これはきっと、油断させておいて後から蹴落とす計画に違いないわ!

「そうは問屋が卸さないわよ!」

エレノアは13個目のレースを編みながら、己の推理に満足そうに頷きながら呟いたのであった。

「何か仰いましたか?」

「い、いいえ!なんでもないわ。おほほほ。」

「??」

エレノの独り言に気づいた使用人が聞き返してきたので、彼女は慌てて作り笑いをしてなんとか誤魔化した。

――とりあえず、何を企んでいるのかわからない内は、誘いに乗らないようにしないとだわ。

訳が分からず不思議そうな顔をして首を傾げている使用人の姿に、ホッと胸を撫で下ろしながらエレノアは、そう結論付けると力強く頷いたのであった。







それから、ランスロットの誘いを上手い具合に、のらりくらりと躱していたある日。
なんと、エレノア達の元に夜会の招待状が届いたのであった。
しかも招待してきた相手からは、夫婦での参加を希望しているのだとか?

「以前から、侯爵家と懇意にしている方でして、どうしても断る事は出来ず……。」

珍しく血相を変えて部屋にやって来た家令が、申し訳ありませんと言いながら説明してきたのであった。
回避できない夜会への参加を聞かされたエレノアは、その報告に青褪める。

――どどどど、どうしよう!

「外出用のドレスは、あれしか持っていないのに!!」

彼女の脳裏に最初に浮かんだ言葉はそれであった。
ランスロットと一緒に夜会に出るのは嫌だなとか、帰りに捨てられてきたら不味いな等と思う前に、エレノアが最初に心配したのはドレスの事であった。
エレノアだって立派なレディだ、傍若無人な夫の事よりも己の身なりに思わず意識が先に向かってしまったのであった。

それに、エレノアが侯爵家へ嫁ぐ前に持ってきた外出用のドレスは、あの時破れてしまったドレスだけであった。
しかも、あのドレスは後で自分が繕い直そうとしていたので、破れた状態でクローゼットの中に仕舞ったままになっている。

「さすがに、元通りに直すには時間が足らないわ……。」

夜会は一週間後だと聞かされたエレノアは、まだ材料も揃えていないのにと青褪める。

「どうしましょう……。」

「エレノア様。」

すると、家令であるセバスチャンが声をかけてきた。
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