上 下
22 / 50

22

しおりを挟む
結局エレノアのドレスが破けてしまったので、予定していたディナーは中止にして屋敷に帰ってきたのだった。
予定よりも随分早い帰宅に、最初家令は喧嘩をしてしまったのかと心配そうにしていたのだが、エレノアのドレスが破けている事を聞くと、慌てて掃除婦たちを呼びエレノアの着替えを手伝うよう手配したのであった。

「それはそれは、災難でございました。」

家令はランスロットから事の顛末を聞くと、非常に残念そうな顔で言ってきた。

「私は、てっきり坊ちゃまが話題に困って帰って来てしまったとばかり思っておりました。」

「…………そ、そんな事あるわけないだろう!」

家令の言葉にランスロットは、口元を引くつかせながら言い返してきた。
分かり易い主人の反応に、セバスチャンは内心「やれやれ」と溜息を吐く。
予想通り、エレノアと打ち解ける事は出来なかったらしい。

――折角アンドリュー様が、ご提案申し上げてくださいましたのに……。

と、家令は主人の旧友にも申し訳ないと、思わず溜息が漏れてしまったのだった。

「左様でございますか……はぁ。」

「ちょっと、何だその溜息は!?」

「いいえ、なんでもございません。気のせいでございましょう。」

ランスロットの指摘に、セバスチャンはしれっと答えてきた。
そんな不遜な態度の家令に、ランスロットは益々不機嫌になる。

「し、仕方が無いだろう。途中で邪魔が入ったんだから……。」

ランスロットは自分の不甲斐なさを棚に上げ、令嬢達のせいにしてきたのであった。
そんな主人に、家令は益々肩を落としていく。

「ランスロット様……それじゃ、あまりにも情けないですよ。」

落胆する家令の横で、使用人に扮する護衛隊長が呆れた顔をしながら言ってきたのであった。

「はあ!?じゃあお前は、あの状況でどんな対応が出来たって言うんだ?」

「はあ、俺ですか?俺だったら、まずエレノア様の安全を最優先にしますね。」

と、即答してきたのであった。
護衛隊長らしい答えに、ランスロットはぐうの音も出ない。
そんな主人に護衛隊長は、「それよりも」と言葉を続けてきたのであった。

「次は、もっと酷い事を仕掛けてくるかもしれません。その時は、しっかりと守ってあげてください。」

眉間に皺を寄せるランスロットに護衛隊長は、そう言って釘を刺してきた。
その言葉にランスロットは、顔に渋面を作りながら「わかったよ」と素直に頷いたのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】 婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました

瀬里
恋愛
 その日、砂漠の国マレから留学に来ていた第13皇女バステトは、とうとうやらかしてしまった。  婚約者である王子ルークが好意を寄せているという子爵令嬢を、池に突き落とそうとしたのだ。  しかし、池には彼女をかばった王子が落ちることになってしまい、更に王子は、頭に怪我を負ってしまった。  ――そして、ケイリッヒ王国の第一王子にして王太子、国民に絶大な人気を誇る、朱金の髪と浅葱色の瞳を持つ美貌の王子ルークは、あろうことか記憶喪失になってしまったのである。(第一部)  ケイリッヒで王子ルークに甘やかされながら平穏な学生生活を送るバステト。  しかし、祖国マレではクーデターが起こり、バステトの周囲には争乱の嵐が吹き荒れようとしていた。  今、為すべき事は何か?バステトは、ルークは、それぞれの想いを胸に、嵐に立ち向かう!(第二部) 全33話+番外編です  小説家になろうで600ブックマーク、総合評価5000ptほどいただいた作品です。 拍子挿絵を描いてくださったのは、ゆゆの様です。 挿絵の拡大は、第8話にあります。 https://www.pixiv.net/users/30628019 https://skima.jp/profile?id=90999

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

王子と令嬢の別れ話

朱音ゆうひ
恋愛
「婚約破棄しようと思うのです」 そんなありきたりなテンプレ台詞から、王子と令嬢の会話は始まった。 なろう版:https://ncode.syosetu.com/n8666iz/

処理中です...