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その頃、ランスロットは――


「父上も父上だ、なんだってあんな女なんかを!」


友人の家で愚痴を零していたのであった。


「まあ、まあ。」


憤慨するランスロットを、友人であるアンドリューが宥める。


「くそっ、あの女と結婚しないと家は継がせないと言われたんだぞ!」


それでも怒りが冷めないランスロットは、吐き捨てるように言ってきた。


「まあでもさ、君の話を聞いた限りでは、奥方はそんなに悪い人じゃなさそうに思えるんだけど?」


「どこがだ!?」


友人の言葉にランスロットが声を荒げる。


「だって、今までラスに言い寄ってきた女性って、みんな君の前では可愛らしいのに、裏ではあんなえげつない事してたんでしょ?でも奥方は、君に媚びを売る事も無く逆の対応をしてるって言うし。」


「そうだ!あの女、こっちが優しくしていれば付け上がって・・・・」


「という事はだよ?少なくとも他の令嬢とは違って嘘を吐かない正直な人なんじゃないかなぁ?」


「お前なぁ~、現場を見てないからそんな事が言えるんだ。あの女の冷たい態度といったら・・・・・」


「あははは、君の素の話し方、久しぶりに聞いたよ。いつもは女性避けに女言葉を使ってるものねぇ。」


「……これは、お前の悪知恵だろうが!」


そう言って、ランスロットはアンドリューを呆れた顔で見てきたのであった。

実は女言葉も男色という設定も、この友人が提案してきたことであった。

最初は、そんな事で効くのかと疑っていたのだが、いざ実行してみると面白いぐらいに効果があったので驚いたものだった。


「あははは、そうだったね。でもラス、もう少し奥方と過ごしてみたら?何か変わるかもしれないよ?」


アンドリューは、そう言いながら可笑しそうにウインクをしてきた。

そんな親友の言葉に、ランスロットは「そんなわけあるか」と吐き捨てたのであった。






結局、親友にまでエレノアの様子を見ろと指摘されてしまったランスロットは、渋々彼女の様子を見守る事にしたのであった。


「いいか、怪しい動きがあったら包み隠さず報告するんだぞ!」


ランスロットは、まるで浮気を疑う様な物言いで使用人たちに命令すると、その様子を呆れた顔で見ていた家令と護衛隊長に視線を移してきた。

そして――


「これでいいだろ。」


と、不機嫌な声で言ってくる。

全く納得していない様子の主人に、家令と護衛隊長は顔を見合わせながら肩を竦めた。


「ふん。」


そんな二人に、聞こえるように鼻を鳴らすと、ランスロットは執務机に向かって不貞腐れた表情をしながら、仕事を再開したのであった。

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