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「3年は夫婦でいて貰いたかったが、2年……いや、1年でいい。1年間、我慢しては貰えないだろうか?」
そうお願いしてきた侯爵に、エレノアは驚いてしまった。
「ど、どうしてですか?」
ふと、気になり訊ねてみる。
すると、侯爵は初めは言い辛そうにしていたのだが、ぽつりぽつりと話し始めたのだった。
「息子は一人息子で、次期侯爵というのは知っているだろう?そのせいで昔から侯爵家の地位と財産を狙う輩から狙われていてね、何かと女性関係のトラブルに巻き込まれる事が多かったんだ。そのお陰で、すっかり女性嫌いになってしまって……。しかし侯爵家を継ぐ以上、結婚をしないという選択肢は有り得ない。それに、うちは領地経営の他に貿易もやっているから、貴族と仕事で絡むことがある。そこで、仕事に関係する貴族から結婚相手を見つけてしまうと、息子の性格上結婚相手とトラブルを起こす可能性が充分考えられる。そうなったら大変だ!そこで、仕事に絡まない令嬢を探していた所、君を見つけたというわけなんだよ……。」
「なるほど……。」
エレノアは侯爵の話を聞きながら納得した。
――まあ問題なく嫁いできたとしても、あの対応じゃあ即日離婚になるわよねぇ。
と、結婚初日の事を思い出しながらエレノアは嘆息する。
それに仕事云々とは別に、ランスロットを狙う貴族や、その令嬢が山ほどいる事も理解していた。
ーーそのせいで昔から、あの人は厄介事に巻き込まれていたのよね……。
エレノアが知っている限りでも、如何わしい薬や、かなりえげつない方法で貞操を狙われていたらしい。
男の人なのに大変ね、と他人事のように思っていた自分が言うのもなんだが……本当に気の毒としか言えない。
その為、侯爵も家督を継がせる前にそういった輩達に、息子がどうにかされてしまう前に、目を光らせられる相手と結婚だけでもさせてしまおうという考えなのだろう。
「つまり、私はランスロット様に言い寄る令嬢避け用に結婚させられたと、そういう事ですよね?」
「そ、そうともいうかな?あははは。」
エレノアが明け透けなくズバリと聞くと、侯爵は明後日の方を向きながら誤魔化し笑いをしてきた。
「そうですか……。」
そんな侯爵にエレノアは、わざとらしく溜息を吐く。
「す、すまない!借金の事はもう気にしなくていい!1年、1年だけ我慢して欲しい!頼む!!」
真実を知って複雑な顔をするエレノアに、侯爵は慌てて「この通りだ」と何度も頭を下げてきた。
そんな侯爵を、エレノアは気の毒に思ってしまう。
――こんなに立派なお父様なのに……本当は、さっさと離婚してしまいたいところだけど……仕方ないわね……。
エレノアは、出来れば離縁してすっぱり縁を切りたいと思っていたが、我が家の借金を肩代わりしてくれた侯爵の顔を立てて、もう少しだけ付き合う事にしたのだった。
とりあえず、政略結婚の目的については薄々気づいていた事なので、そんな事はどうでも良かった。
それよりも……。
「はぁ……1年だけですよ。」
「え?いいのかい?」
「はい、但し条件があります。」
エレノアの返事に目を輝かせる侯爵に、エレノアはにっこりと笑顔を浮かべながら、とある条件を出してきたのであった。
「私も1年間我慢して過ごすわけですから、その間言われっぱなしは嫌です。言いたい事は言わせて頂きますが、宜しいですね?」
「ああもちろん、好きにしてくれて構わないよ!」
エレノアの条件に、侯爵は何故か嬉しそうに了承してきたのであった。
侯爵の笑顔が腑に落ちなかったが、とりあえず了承が取れたので良しとしよう。
エレノアは腕まくりをしながら、さてこれからどう反撃していってやろうかと思案するのであった。
そうお願いしてきた侯爵に、エレノアは驚いてしまった。
「ど、どうしてですか?」
ふと、気になり訊ねてみる。
すると、侯爵は初めは言い辛そうにしていたのだが、ぽつりぽつりと話し始めたのだった。
「息子は一人息子で、次期侯爵というのは知っているだろう?そのせいで昔から侯爵家の地位と財産を狙う輩から狙われていてね、何かと女性関係のトラブルに巻き込まれる事が多かったんだ。そのお陰で、すっかり女性嫌いになってしまって……。しかし侯爵家を継ぐ以上、結婚をしないという選択肢は有り得ない。それに、うちは領地経営の他に貿易もやっているから、貴族と仕事で絡むことがある。そこで、仕事に関係する貴族から結婚相手を見つけてしまうと、息子の性格上結婚相手とトラブルを起こす可能性が充分考えられる。そうなったら大変だ!そこで、仕事に絡まない令嬢を探していた所、君を見つけたというわけなんだよ……。」
「なるほど……。」
エレノアは侯爵の話を聞きながら納得した。
――まあ問題なく嫁いできたとしても、あの対応じゃあ即日離婚になるわよねぇ。
と、結婚初日の事を思い出しながらエレノアは嘆息する。
それに仕事云々とは別に、ランスロットを狙う貴族や、その令嬢が山ほどいる事も理解していた。
ーーそのせいで昔から、あの人は厄介事に巻き込まれていたのよね……。
エレノアが知っている限りでも、如何わしい薬や、かなりえげつない方法で貞操を狙われていたらしい。
男の人なのに大変ね、と他人事のように思っていた自分が言うのもなんだが……本当に気の毒としか言えない。
その為、侯爵も家督を継がせる前にそういった輩達に、息子がどうにかされてしまう前に、目を光らせられる相手と結婚だけでもさせてしまおうという考えなのだろう。
「つまり、私はランスロット様に言い寄る令嬢避け用に結婚させられたと、そういう事ですよね?」
「そ、そうともいうかな?あははは。」
エレノアが明け透けなくズバリと聞くと、侯爵は明後日の方を向きながら誤魔化し笑いをしてきた。
「そうですか……。」
そんな侯爵にエレノアは、わざとらしく溜息を吐く。
「す、すまない!借金の事はもう気にしなくていい!1年、1年だけ我慢して欲しい!頼む!!」
真実を知って複雑な顔をするエレノアに、侯爵は慌てて「この通りだ」と何度も頭を下げてきた。
そんな侯爵を、エレノアは気の毒に思ってしまう。
――こんなに立派なお父様なのに……本当は、さっさと離婚してしまいたいところだけど……仕方ないわね……。
エレノアは、出来れば離縁してすっぱり縁を切りたいと思っていたが、我が家の借金を肩代わりしてくれた侯爵の顔を立てて、もう少しだけ付き合う事にしたのだった。
とりあえず、政略結婚の目的については薄々気づいていた事なので、そんな事はどうでも良かった。
それよりも……。
「はぁ……1年だけですよ。」
「え?いいのかい?」
「はい、但し条件があります。」
エレノアの返事に目を輝かせる侯爵に、エレノアはにっこりと笑顔を浮かべながら、とある条件を出してきたのであった。
「私も1年間我慢して過ごすわけですから、その間言われっぱなしは嫌です。言いたい事は言わせて頂きますが、宜しいですね?」
「ああもちろん、好きにしてくれて構わないよ!」
エレノアの条件に、侯爵は何故か嬉しそうに了承してきたのであった。
侯爵の笑顔が腑に落ちなかったが、とりあえず了承が取れたので良しとしよう。
エレノアは腕まくりをしながら、さてこれからどう反撃していってやろうかと思案するのであった。
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