1 / 93
第二章【旅路編】
1.東の大地へようやく帰ってきました!
しおりを挟む
シュン、という音と共に転柱門から二人の人影が出現した。
赤の魔女が治める東の大地ウエストブレイ――そこに唯一設置されている転柱門があるベルジャラに、マクレーン達は戻ってきたのだった。
「はあ~、やっぱり故郷はいいなぁ~。」
巨大な転柱門から降りながら、大きな体をうーんと目一杯伸ばして、アランがしみじみと言う。
「そうですか、それは良かったですね。では、僕はこれで。」
そう言ってマクレーンは、さっさと外へ出ようとすると、アランが慌てて追いかけてきた。
「ちっ、なんで着いてくるんですか?」
「おい、ちって舌打ちすることないだろう!なんで置いて行こうとするんだよ!?」
マクレーンの相変わらずな塩辛対応に、アランが突っ込みを入れる。
「何でって、僕は家に帰るんですけど。」
何を言ってるんですか?と、さも当然のようにマクレーンは答えた。
その返答にアランは、「え?」と驚いたような顔になる。
「帰るって、どうして?」
「はあ?何言ってるんですか?僕のお使いが済んだから帰るんですよ。」
まるで、帰ることが信じられないと言わんばかりのアランの言葉に、マクレーンは何言ってるんだこの人、という視線を向けながら答えた。
そんなマクレーンに、アランは「でも魔女が……」などとブツブツ言い続けていたので、マクレーンはうんざりしながら、とある言葉をアランにぶつけてみた。
「それとも、アランさんも帰る方向が同じなんですか?」
そう言ってマクレーンは、アランの様子を観察する。
案の定、その言葉にアランは動揺し始めた。
やっぱり。
マクレーンはアランの反応を見ながら自分の予想が、あながち間違っていなかった事を悟った。
実は、アランと一緒に旅をしていて気になっていた事があった。
アランは良く家族の話をしてくれるのだが、しかし何故か故郷や実家の場所を聞こうとすると、のらりくらりと交わされてしまうのだ。
これはもう、触れて欲しくないという事だよね!
マクレーンは確信したとばかりに、目をかっと見開くと、アランに更に攻撃を仕掛けていった。
「もし、家までの方向が一緒でしたら、そこまでご一緒しましょう。僕は東の森のすぐ先までですけど、アランさんは、どこまでですか?」
東の森までは、いくつか大きな街が点在している。
そして東の森の更に進んだ先は、小さな町や村があるだけだった。
さて、彼は何処の出身なのだろうか……。
マクレーンは少しだけアランの故郷に興味があった、本当に少しだけだが。
アランがどう答えるのかと待っていると、彼は重い口を開いてこう言ってきた。
「いや……実家には帰らない。」
その答えにマクレーンはやっぱり、と内心で嘆息する。
「まだ、赤の魔女に会えてないからな。」
そう言って、何かを期待するような目でマクレーンを見てきた。
「……そうですか。」
相変わらずブレない青年に、マクレーンは仕方がないと顔を上げる。
「言っときますけど、僕じゃ赤の魔女には会えませんよ。」
マクレーンはここへ来て、ようやく真実を告げた。
「へ、な、なんで?」
マクレーンの言葉に、アランは目を丸くしながら聞き返してきた。
マクレーンは、そんなアランの反応を見ながら、やっぱりわかってなかったか、と盛大な溜息を吐いた。
「それは、僕が赤の魔女に会う理由が無いからです。そもそも何度も無理ですって、言っていたじゃないですか。」
マクレーンは無情にも事実を告げる。
その言葉にアランは、今気づきましたという顔で驚いていた。
やっぱりわかってなかったんだ、この人。
そう、マクレーンは何度も断っていた。
その理由には、面倒だという自分都合な部分も多分に含まれていたのだが、しかし、そもそもマクレーンには魔女に会う理由も無ければコネもなかった。
それは殆どの一般人に共通することで、実は魔女に会うには相当な理由とコネが無いと無理な話なのだ。
それこそ、魔女の使途にならない限りは。
まあ、気合と根性で、あの森を攻略しようとしてた時点で怪しいとは思っていましたが……。
マクレーンは、アランの考え無しな性格を薄々気づいてはいたが、まさか大の大人がそこまで馬鹿だなんて本気では思っていなかった。
しかし、アランにはそれが当て嵌まるようだ。
さて実家云々はさて置いて、そろそろアランさんには本気で諦めてもらいましょう。
あとは帰るだけのマクレーンは、強気だった。
「アランさん、申し訳ないですけど、今言った通りなんです。僕は貴方を、赤の魔女に会わせてあげられる事はできません。」
マクレーンはもう一押し、と申し訳なさそうな顔をしながら深々と頭を下げた。
暫く経ってから頭を上げてアランを見ると、何とも言えない顔で、こちらを見ている。
可哀想だけど、こればっかりはどうしようもないよね。
マクレーンは胸中で呟きながら、アランの反応を待った。
「く、そういう事なら仕方がないな……。」
苦渋の決断のように、アランが声を絞り出してくる。
その哀愁漂う姿に心が揺さぶられかけたが、マクレーンは黙って続きを待った。
そして――
それでも魔女に会いたいというアランに、旅は道連れ世は情けとばかりに、森まで同行してあげることにしたマクレーンだった。
東の森――クリムゾンフォレスト。
マクレーン達は、ここに足を踏み入れた瞬間、信じられないものを見るような目で立ち止まったのだった。
「なん、で、あなたたちが……。」
驚愕し目を見開くマクレーン達の目の前には、ここには居る筈もない人物たちがいた。
「やあ、待ってたよ。」
「うふふ、お帰りなさい。」
「あらあら、随分遅かったわねぇ。」
そこに居たのは、マクレーンの姉達だった。
赤の魔女が治める東の大地ウエストブレイ――そこに唯一設置されている転柱門があるベルジャラに、マクレーン達は戻ってきたのだった。
「はあ~、やっぱり故郷はいいなぁ~。」
巨大な転柱門から降りながら、大きな体をうーんと目一杯伸ばして、アランがしみじみと言う。
「そうですか、それは良かったですね。では、僕はこれで。」
そう言ってマクレーンは、さっさと外へ出ようとすると、アランが慌てて追いかけてきた。
「ちっ、なんで着いてくるんですか?」
「おい、ちって舌打ちすることないだろう!なんで置いて行こうとするんだよ!?」
マクレーンの相変わらずな塩辛対応に、アランが突っ込みを入れる。
「何でって、僕は家に帰るんですけど。」
何を言ってるんですか?と、さも当然のようにマクレーンは答えた。
その返答にアランは、「え?」と驚いたような顔になる。
「帰るって、どうして?」
「はあ?何言ってるんですか?僕のお使いが済んだから帰るんですよ。」
まるで、帰ることが信じられないと言わんばかりのアランの言葉に、マクレーンは何言ってるんだこの人、という視線を向けながら答えた。
そんなマクレーンに、アランは「でも魔女が……」などとブツブツ言い続けていたので、マクレーンはうんざりしながら、とある言葉をアランにぶつけてみた。
「それとも、アランさんも帰る方向が同じなんですか?」
そう言ってマクレーンは、アランの様子を観察する。
案の定、その言葉にアランは動揺し始めた。
やっぱり。
マクレーンはアランの反応を見ながら自分の予想が、あながち間違っていなかった事を悟った。
実は、アランと一緒に旅をしていて気になっていた事があった。
アランは良く家族の話をしてくれるのだが、しかし何故か故郷や実家の場所を聞こうとすると、のらりくらりと交わされてしまうのだ。
これはもう、触れて欲しくないという事だよね!
マクレーンは確信したとばかりに、目をかっと見開くと、アランに更に攻撃を仕掛けていった。
「もし、家までの方向が一緒でしたら、そこまでご一緒しましょう。僕は東の森のすぐ先までですけど、アランさんは、どこまでですか?」
東の森までは、いくつか大きな街が点在している。
そして東の森の更に進んだ先は、小さな町や村があるだけだった。
さて、彼は何処の出身なのだろうか……。
マクレーンは少しだけアランの故郷に興味があった、本当に少しだけだが。
アランがどう答えるのかと待っていると、彼は重い口を開いてこう言ってきた。
「いや……実家には帰らない。」
その答えにマクレーンはやっぱり、と内心で嘆息する。
「まだ、赤の魔女に会えてないからな。」
そう言って、何かを期待するような目でマクレーンを見てきた。
「……そうですか。」
相変わらずブレない青年に、マクレーンは仕方がないと顔を上げる。
「言っときますけど、僕じゃ赤の魔女には会えませんよ。」
マクレーンはここへ来て、ようやく真実を告げた。
「へ、な、なんで?」
マクレーンの言葉に、アランは目を丸くしながら聞き返してきた。
マクレーンは、そんなアランの反応を見ながら、やっぱりわかってなかったか、と盛大な溜息を吐いた。
「それは、僕が赤の魔女に会う理由が無いからです。そもそも何度も無理ですって、言っていたじゃないですか。」
マクレーンは無情にも事実を告げる。
その言葉にアランは、今気づきましたという顔で驚いていた。
やっぱりわかってなかったんだ、この人。
そう、マクレーンは何度も断っていた。
その理由には、面倒だという自分都合な部分も多分に含まれていたのだが、しかし、そもそもマクレーンには魔女に会う理由も無ければコネもなかった。
それは殆どの一般人に共通することで、実は魔女に会うには相当な理由とコネが無いと無理な話なのだ。
それこそ、魔女の使途にならない限りは。
まあ、気合と根性で、あの森を攻略しようとしてた時点で怪しいとは思っていましたが……。
マクレーンは、アランの考え無しな性格を薄々気づいてはいたが、まさか大の大人がそこまで馬鹿だなんて本気では思っていなかった。
しかし、アランにはそれが当て嵌まるようだ。
さて実家云々はさて置いて、そろそろアランさんには本気で諦めてもらいましょう。
あとは帰るだけのマクレーンは、強気だった。
「アランさん、申し訳ないですけど、今言った通りなんです。僕は貴方を、赤の魔女に会わせてあげられる事はできません。」
マクレーンはもう一押し、と申し訳なさそうな顔をしながら深々と頭を下げた。
暫く経ってから頭を上げてアランを見ると、何とも言えない顔で、こちらを見ている。
可哀想だけど、こればっかりはどうしようもないよね。
マクレーンは胸中で呟きながら、アランの反応を待った。
「く、そういう事なら仕方がないな……。」
苦渋の決断のように、アランが声を絞り出してくる。
その哀愁漂う姿に心が揺さぶられかけたが、マクレーンは黙って続きを待った。
そして――
それでも魔女に会いたいというアランに、旅は道連れ世は情けとばかりに、森まで同行してあげることにしたマクレーンだった。
東の森――クリムゾンフォレスト。
マクレーン達は、ここに足を踏み入れた瞬間、信じられないものを見るような目で立ち止まったのだった。
「なん、で、あなたたちが……。」
驚愕し目を見開くマクレーン達の目の前には、ここには居る筈もない人物たちがいた。
「やあ、待ってたよ。」
「うふふ、お帰りなさい。」
「あらあら、随分遅かったわねぇ。」
そこに居たのは、マクレーンの姉達だった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる