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第一章【出会い編】
63.逃げるが勝ち、というか隠れるが勝ちです
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しかし、宿を無事出れたのも束の間。
転柱門に向かう途中で、闘技場の人間が待ち構えていた。
「悪いことは言わねえ、そのベルトと賞金置いていきな。」
闘技場に雇われた用心棒だろう男達は、マクレーン達を見ながらにやにやすると、懐からナイフを取り出し恫喝してきた。
鈍い光を放つ刃物に、マクレーン達は冷や汗を流す。
「なあなあ、ベルトもって言われたんだけど。」
優勝ベルトは、どうやら気に入っていたらしい。 ベルトまで返せといわれて、アランは嫌そうにマクレーンに聞いてきた。
「素直に返してください。」
マクレーンは、そんなアランの気持ちなど無視して、きっぱりと言う。
その言葉に、アランは「ええー。」と不満そうな声を上げた。
「気に入っていたのに……。」
塩対応のマクレーンに、アランはぶつぶつ文句を言っている。
そんな二人を、ニコルはハラハラしながら見ていた。
「ええい、どうでもいいからこっちへ寄越せ!」
痺れを切らせた用心棒の一人が声を荒げる。
その声を合図に、マクレーン達は取り囲れてしまった。
いよいよ危なくなってきた所で、用心棒の一人が突然悲鳴を上げた。
その声に用心棒達が怯む。
そして続いて、ガッ、ゴッ、と派手な音がしたかと思ったら、数人の用心棒達が頭を抱えて蹲っていた。
その隙を突いてマクレーン達は、来た道を戻るように駆け出したのだった。
結局、転柱門から一本道で続いているバラックにまた戻って来てしまった。
マクレーンは肩で息をしながら、とりあえず身を隠せる場所を探した。
そして――
「結局ここしかなかったな。」
苦笑しながら言ってきたアランを、マクレーンがぎろりと睨みつける。
「それをさっさと返していれば、こうならなかったんですけどね!」
今マクレーン達は鉱山の中にいた。
先程、用心棒達に囲まれた時、”誰か”が奴らの動きを止めてくれたお陰で、ここまで逃げてこれた。
とりあえず、食料や飲み水などは十分にあるので、餓死の心配はない。
アランが大事そうに抱えている、賞金とベルトの入った袋を睨みつけながらマクレーンは嘆息する。
「とにかく暫くの間、ここで身を隠していましょう。」
マクレーンはそう言いながら、バックからランプを取り出した。
中に入っている火の魔石を点けると、辺りが照らされた。
炎よりも強い光源のお陰で、足元は良く見える。
とりあえず周りに人がいないことを確認すると、アラン達に振り返った。
「とりあえず、ここの地図とピッケルがありますので、採掘をしているフリをしながら進みましょう。」
アランにピッケルを持たせながら、マクレーンは言うと、地図に記されている採掘ポイントを目指した。
「あと時々魔物も出るそうなので、その時はアランさんお願いしますね。」
「ええ~俺が全部、相手するのか?」
「当たり前です、誰のせいでこうなったと思ってるんですか?それに貴方闘技場で優勝者倒すほど強かったじゃないですか。」
ジト目で言ってくるマクレーンに、アランは冷や汗を流した。
「いや、あれは……。」
「弱いっていうのは、嘘だったんですね。」
にーっこり、と笑顔で言ってきたマクレーンに、アランは何も言えなくなってしまった。
とりあえず、項垂れるアランを引き摺って際奥まで目指す。
暫くここで時間を潰していれば、闘技場の人達も諦めるだろうと踏んでいた。
転柱門に向かう途中で、闘技場の人間が待ち構えていた。
「悪いことは言わねえ、そのベルトと賞金置いていきな。」
闘技場に雇われた用心棒だろう男達は、マクレーン達を見ながらにやにやすると、懐からナイフを取り出し恫喝してきた。
鈍い光を放つ刃物に、マクレーン達は冷や汗を流す。
「なあなあ、ベルトもって言われたんだけど。」
優勝ベルトは、どうやら気に入っていたらしい。 ベルトまで返せといわれて、アランは嫌そうにマクレーンに聞いてきた。
「素直に返してください。」
マクレーンは、そんなアランの気持ちなど無視して、きっぱりと言う。
その言葉に、アランは「ええー。」と不満そうな声を上げた。
「気に入っていたのに……。」
塩対応のマクレーンに、アランはぶつぶつ文句を言っている。
そんな二人を、ニコルはハラハラしながら見ていた。
「ええい、どうでもいいからこっちへ寄越せ!」
痺れを切らせた用心棒の一人が声を荒げる。
その声を合図に、マクレーン達は取り囲れてしまった。
いよいよ危なくなってきた所で、用心棒の一人が突然悲鳴を上げた。
その声に用心棒達が怯む。
そして続いて、ガッ、ゴッ、と派手な音がしたかと思ったら、数人の用心棒達が頭を抱えて蹲っていた。
その隙を突いてマクレーン達は、来た道を戻るように駆け出したのだった。
結局、転柱門から一本道で続いているバラックにまた戻って来てしまった。
マクレーンは肩で息をしながら、とりあえず身を隠せる場所を探した。
そして――
「結局ここしかなかったな。」
苦笑しながら言ってきたアランを、マクレーンがぎろりと睨みつける。
「それをさっさと返していれば、こうならなかったんですけどね!」
今マクレーン達は鉱山の中にいた。
先程、用心棒達に囲まれた時、”誰か”が奴らの動きを止めてくれたお陰で、ここまで逃げてこれた。
とりあえず、食料や飲み水などは十分にあるので、餓死の心配はない。
アランが大事そうに抱えている、賞金とベルトの入った袋を睨みつけながらマクレーンは嘆息する。
「とにかく暫くの間、ここで身を隠していましょう。」
マクレーンはそう言いながら、バックからランプを取り出した。
中に入っている火の魔石を点けると、辺りが照らされた。
炎よりも強い光源のお陰で、足元は良く見える。
とりあえず周りに人がいないことを確認すると、アラン達に振り返った。
「とりあえず、ここの地図とピッケルがありますので、採掘をしているフリをしながら進みましょう。」
アランにピッケルを持たせながら、マクレーンは言うと、地図に記されている採掘ポイントを目指した。
「あと時々魔物も出るそうなので、その時はアランさんお願いしますね。」
「ええ~俺が全部、相手するのか?」
「当たり前です、誰のせいでこうなったと思ってるんですか?それに貴方闘技場で優勝者倒すほど強かったじゃないですか。」
ジト目で言ってくるマクレーンに、アランは冷や汗を流した。
「いや、あれは……。」
「弱いっていうのは、嘘だったんですね。」
にーっこり、と笑顔で言ってきたマクレーンに、アランは何も言えなくなってしまった。
とりあえず、項垂れるアランを引き摺って際奥まで目指す。
暫くここで時間を潰していれば、闘技場の人達も諦めるだろうと踏んでいた。
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