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しおりを挟むその日、ヴィヴィアーナは夢を見た。
煌びやかなシャンデリアに、知らない沢山の貴族達。
明るい光と賑やかな喧騒に飽きたヴィヴィアーナは、ふと悪戯心が芽生え、夜会会場を探検してみたくなってしまった。
思いついたのは、そんな好奇心からだった。
つい両親の言いつけを破り、明るいホールからこっそり抜け出し広い屋敷の中を探検しにいった。
初めて一人で出歩いた興奮と好奇心から、ヴィヴィアーナはどんどんホールのある扉から離れていってしまった。
気が付いた時には、何処に居るのかもわからなくなってしまい、暗い廊下で迷子になっていた。
暗くて長い廊下を不安そうな顔で歩いていると、ふと誰かが声をかけてきた。
声をかけてきたのは知らない青年で、自分よりも随分年上の人だった。
彼はヴィヴィアーナに優しく話しかけてくれ、迷子だというとホールへ案内してくれると言ってきてくれた。
ヴィヴィアーナは青年の言葉に嬉しそうに頷くと、手を引かれながら付いて行ったのであった。
――あの時の自分に今の私が会えたなら、絶対付いて行くなって叫んでたわ。
ヴィヴィアーナは夢の中で呟く。
幼いヴィヴィアーナが付いて行った先には、後悔しかなかったからだった。
ホールへ案内していたはずの青年は、何故かヴィヴィアーナを個室の部屋へ連れてきたのであった。
「え?」と驚くヴィヴィアーナに、青年は突然圧し掛かってきた。
そして驚愕する幼い少女を無視して、ドレスに手をかけてきたのである。
驚いたヴィヴィアーナは抵抗したが、自分よりも遥かに体の大きい青年の力に抗える程の力はなかった。
しかし子供のとはいえ複雑な造りのドレスは、そう簡単に脱がす事は難しかったらしい。
青年はドレスを脱がす事が難しいとわかると、なんとヴィヴィアーナのドレスを破いてきたのであった。
ビリビリと音を立てて破かれていくドレスに、何もわからないヴィヴィアーナは恐怖で固まってしまった。
抵抗も出来ず、されるがままになっていると、突然部屋の扉がバタンと開け放たれた。
「何をしている!」
聞こえてきた声は、兄の声だった。
そして、続いて聞こえてきたのはジュリアスの声。
彼等は驚いて振り返った青年に突進していくと、もみくちゃになりながら青年を殴っていた。
突然の事にヴィヴィアーナが呆然としていると、騒ぎを聞きつけた大人達が入ってきて、青年は連れ去られて行ってしまったのであった。
そこまで夢で思い出した所で、ヴィヴィアーナは目を覚ましたのだった。
「気が付いたかい?」
目を覚ましたヴィヴィアーナに、優しい声がかけられてきた。
声のした方を見ると、心配そうな顔をした兄の姿があった。
「お兄様……わたくし……。」
「昔の事を思い出したのかい?」
兄の言葉に、こくりと頷く。
ストラウスは「そうか」と悲しそうな顔で言ったきり、それ以上何も言わなかった。
そんな兄の姿を見ながら、ヴィヴィアーナはぽつりとお願いしてきたのであった。
「ジュリアスを呼んで。」
と――。
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