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15,安定
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「し、失礼しました…」
3階にある、小会議室。アラシは顔面蒼白でふらつきながら、扉を閉めた。カンパに至っては魂がほとんど抜けて意識朦朧としている。結局、写真はシオンに没収された上、小会議室へ呼び出された。一言、二言注意されただけなのだが、異常な威圧感と殺気を浴びせられ、死ぬ以上の恐怖を味わった。
カンパを部屋に送ってから、自室に戻ろうとすると
「アラシ!」
クラウドが小走りでやってきて、声をかけてくる。
「クラウドさん」
「どうした?顔色悪くないか」
「えっ?!そうですか?いつもどおりですよ!」
蓮の写真の件でシオンに説教されたとは言えない。声を張り、ごまかす。
「なら、いいけどな」
「な、何かご用ですか?」
「ああ、頼みがあるんだ。もう一度、レンのところに行く許可をとってくれないか?」
「ええ?!無理ですよ!クラウドさん謹慎が明けたばかりですよね?!」
まさかの要件にアラシは驚く。その謹慎の原因となった異世界訪問の許可が、再びとれる訳がない。
「謹慎が明けたからだろうが!レンが怪我してるのに、ろくに世話してやれなかったからな…」
「レン様のお世話は私の役…ぉうっ?!」
ガッと胸ぐらをつかまれる。
「何だと?」
「…何でもありません…」
殺気を込めた鋭い目でにらまれ、目をそらす。我の強いかつての先輩には、正論でも口答え出来ない。
「会いたいんだよ…あいつに」
「クラウドさん…」
クラウドはアラシの胸ぐらから手を離し、絞り出すようにつぶやく。いつも明るく蓮への好意を公言しているクラウドだが、本気で蓮を愛しているのだと伝わってくる。
「クラウドさん!大臣がお呼びですよ!」
廊下の向こうから使用人が呼び、クラウドはハッとする。
「あ、しまった。おう!すぐ行く!」
ひと月の謹慎が明け、国務大臣補佐官としての仕事がたまっているらしい。
「じゃあ、頼んだぞ!」
「だから、もう無理ですってぇえ!!」
言いながら行ってしまうクラウドに、アラシは叫んだ。
「護衛長!」
そこへ、ひとりの護衛が慌てた様子でやって来る。
「どうした?」
「罪人たちが大臣の執務室に侵入しようとしておりまして…!」
「な…?!わかった。行こう」
休憩は取れなさそうだ。アラシはため息を抑え、気を引き締めた。
「ふざけるな!早く部屋に戻れ!!」
「ほんっとお固いよね~。少しくらいいいでしょ。減るものじゃないし」
階下に向かう階段前では、ヨイチら3人と護衛たちが小競り合いの真っ最中だった。
護衛たちに軽い口調で食ってかかっているのは小柄で赤縁のメガネをかけたイール。ワンスはうんざりといった様子で腕を組んで壁に寄りかかり、ヨイチは他人事かのように彼らを見つめ、立っている。
「そこまでだ。我々の指示に従え」
「護衛長…っ」
アラシがやって来ると、護衛たちは助かったと息を吐く。
「あ、頼りない護衛長だ」
「頼りないは余計だ。ここは君たちが来ていい場所ではない。部屋に戻れ」
イールにからかわれ、アラシはムッとしながらも冷静に命じる。
「頼みがある」
ヨイチはアラシに目を向け、口を開く。
「あんたは頼りなくても護衛長だろう。俺は外交担当の大臣と話をしたいだけだ。資料を借りるだけでもいい。話をつけてくれ」
蓮から諭されたヨイチだが、やはり彼の素性は気になる。外国から来たのであれば、外交担当の大臣が何かしら知っているのではと思い、行動に出たのだ。イールとワンスはそれを聞いてついてきただけ。
実際、大臣に聞いても蓮の素性はわからないし、資料もないが。
「君たちはどのような理由があろうと、国からの許可がない限り大臣と面会は出来ない。すみやかに部屋に戻れ」
「うわ、この人もお固い」
アラシは姿勢を変えずに答え、イールはダメだこりゃと顔を引きつらす。
「おい」
「!?」
黙っていたワンスが前に出てくると、アラシの胸ぐらをつかみあげた。
「調子に乗るな。ヨイチがわざわざ下手に出てやっているのがわからないのか?」
「…」
「また頭をカチ割るぞ。護衛長さんよ?」
覇気を高め、煽るかのようにアラシをにらみつける。この場にいる護衛では、ワンスひとりでさえ抑えられない。周りの護衛たちはサァっと青ざめる。
「やればいい」
「!」
「そんなことをしても、君たちの要望は通らない。さらに罪を重ねるだけだ」
アラシはワンスを見上げ、冷静な口調のまま言い返す。
「ふん…『長』としての覚悟はあるようだな」
意外に骨のある奴だと、ワンスはアラシの胸ぐらから手を離す。少しおどかせば、情けなくうろたえると思っていた。
「冗談だ。今、あんたらに手を出すとレンに迷惑がかかる。それに、いつになるか知らんが…そのうち合法的にあんたらと手合わせが出来るようになる。楽しみはとっておくか」
と、ニヤっと笑む。
「…」
ワンスを護衛たちの戦闘訓練相手にするという案を議会に提出予定だと、アラシは報告を受けていた。護衛たちにも意見を聞くとのことだが、果たして反映されるだろうか。
「何ソレ?ワンスそんなこと出来るの?」
イールが初耳だと食いつく。
「らしいぞ」
「ズルイなぁ~。僕も仲間に入れて欲しい~」
「それは…レンか?」
ヨイチも驚いたようで右目を見開き、その発案が蓮だと感づいて聞く。
「ああ」
「ふ…やはり、レンの考えは面白い」
ワンスがうなずくと、楽しげに笑う。
「ワンス、その話を聞かせろ」
そして、さっきまで揉めていたのを忘れたかのように、きびすを返した。
「あれ、興味が移っちゃったね」
イールは気まぐれな恩人の背をあきれ気味に見る。
「ホント、レン君がいて良かったね。僕も頼んでみようかな~。ねぇ、レン君は次いつ帰ってくるの?教えてくれないだろうけどさ。じゃあね~」
憎らしげに見ている護衛たちに独り言かのように言うと、ヒラヒラ手を振る。
「ちょっとワンス!僕も聞きたいんだけどー!」
自室へ向かうヨイチとワンスの後を追いかけた。
「…ふぅ」
アラシはひと息つき、つかまれていたコートの胸元を直す。
「大丈夫ですか?!護衛長!」
「ああ、何ともない。彼らを追い、元の持ち場に戻ってくれ」
慌ててかけ寄る護衛たちに、ヨイチらを指して命じる。
「「はい!!」」
護衛たちは姿勢を正し、見張りをすべく彼らを追いかけた。
「はぁ…疲れた」
アラシは自室に戻り、首の青布を外す。休憩時間はあとわずか。昼食をとるのはあきらめた。
椅子を引き、座ると机上のスケッチブックを広げる。やはり綺麗な子だったなと、以前描いた似顔絵を見る。先ほど城を訪れた線の細い金眼保有者の青年だ。アラシは絵を描くことを趣味としており、人物画が得意なのだ。
ページをめくり、護衛長になってから最も描いている者の似顔絵を見る。彼のいない城内は何かあるという訳ではないが、どことなく皆、落ち着きがなくて。彼の存在は城内の安定に必要不可欠なものになりつつあるのだろう。
「私もお会いしたいです、レン様」
スケッチブック上の蓮はいつも笑いかけてくれる。そのほほをなで、挟んであったリボンを手に取る。「大変そうだ」と蓮がくれたチョコレートのラッピングに使われていたもの。普段ないがしろにされても、振り回されても、頭にかかと落としを食らおうと、彼はちゃんと見ていてくれた。世話役という役目がなくとも、彼のそばにいたいと思う。
次の正式な訪問前に一度、会いに行こうか。クラウドよりは許可が取りやすいはずだ。
「護衛長、会議のお時間です!」
ノックの音と呼ぶ声にハッとする。休憩時間がいつの間にか過ぎていた。
「すまない!今行く」
アラシはスケッチブックを閉じ、青布を首に締める。異世界に行く時間があればの話だなと、苦笑いして自室を出て行った。
その頃、日本の都市部。大通りは暖かい風に誘われるように多くの人々が行き交う。けれど、人によっては憎らしい花粉が飛ぶ季節であり、身体は軽装になっても顔は重装備の人も目立つ。そんな人々とすれ違って行く黒髪の少年…城野蓮は、花粉除けメガネ越しでも思わず振り向いてしまうほどかわいらしく魅力的に見えた。
「久しぶりだな、城野蓮っ!」
と、車道の端に停めた黒塗りの高級車から顔を出し、彼に声をかける者がいた。大物国会議員の祖父、父の地盤を引き継ぐ予定の大学生、菊川宏樹だ。
「…」
蓮は彼を見もせず、スタスタと歩き続ける。
「いつもだが、何故俺を無視するんだ?!未来の総理大臣だぞ!!」
周りからチヤホヤされて育った宏樹にしたら、蓮の態度は理解し難い。車を降り、蓮の後を追う。
「イタイから」
蓮は歩を止めずに言う。
「はっ?!」
「お前が総理大臣になったら日本は終わりだな」
「…どういう意味だ?!生まれ変わるということか!」
だからだよ、と、変なポジティブシンキングの彼を見て蓮は心の中で思う。
「そうほめるな!それより城野蓮、君に折り入って頼みが」
「断る」
言い切る前に食い気味に拒否する。宏樹は蓮に危機を救われて以来、専属ボディガードになれとしつこく迫っている。蓮の戦闘能力だけでなく、その容姿に惚れたのはまだ秘めていた。
「早い!!今日は俺の専属ボディガードの話じゃないぞ?!」
「あ?」
「君に仕事の依頼をしたい…!」
「…」
いつもイタイ発言しかしない宏樹の真剣な表情に、蓮は歩を止めた。
3階にある、小会議室。アラシは顔面蒼白でふらつきながら、扉を閉めた。カンパに至っては魂がほとんど抜けて意識朦朧としている。結局、写真はシオンに没収された上、小会議室へ呼び出された。一言、二言注意されただけなのだが、異常な威圧感と殺気を浴びせられ、死ぬ以上の恐怖を味わった。
カンパを部屋に送ってから、自室に戻ろうとすると
「アラシ!」
クラウドが小走りでやってきて、声をかけてくる。
「クラウドさん」
「どうした?顔色悪くないか」
「えっ?!そうですか?いつもどおりですよ!」
蓮の写真の件でシオンに説教されたとは言えない。声を張り、ごまかす。
「なら、いいけどな」
「な、何かご用ですか?」
「ああ、頼みがあるんだ。もう一度、レンのところに行く許可をとってくれないか?」
「ええ?!無理ですよ!クラウドさん謹慎が明けたばかりですよね?!」
まさかの要件にアラシは驚く。その謹慎の原因となった異世界訪問の許可が、再びとれる訳がない。
「謹慎が明けたからだろうが!レンが怪我してるのに、ろくに世話してやれなかったからな…」
「レン様のお世話は私の役…ぉうっ?!」
ガッと胸ぐらをつかまれる。
「何だと?」
「…何でもありません…」
殺気を込めた鋭い目でにらまれ、目をそらす。我の強いかつての先輩には、正論でも口答え出来ない。
「会いたいんだよ…あいつに」
「クラウドさん…」
クラウドはアラシの胸ぐらから手を離し、絞り出すようにつぶやく。いつも明るく蓮への好意を公言しているクラウドだが、本気で蓮を愛しているのだと伝わってくる。
「クラウドさん!大臣がお呼びですよ!」
廊下の向こうから使用人が呼び、クラウドはハッとする。
「あ、しまった。おう!すぐ行く!」
ひと月の謹慎が明け、国務大臣補佐官としての仕事がたまっているらしい。
「じゃあ、頼んだぞ!」
「だから、もう無理ですってぇえ!!」
言いながら行ってしまうクラウドに、アラシは叫んだ。
「護衛長!」
そこへ、ひとりの護衛が慌てた様子でやって来る。
「どうした?」
「罪人たちが大臣の執務室に侵入しようとしておりまして…!」
「な…?!わかった。行こう」
休憩は取れなさそうだ。アラシはため息を抑え、気を引き締めた。
「ふざけるな!早く部屋に戻れ!!」
「ほんっとお固いよね~。少しくらいいいでしょ。減るものじゃないし」
階下に向かう階段前では、ヨイチら3人と護衛たちが小競り合いの真っ最中だった。
護衛たちに軽い口調で食ってかかっているのは小柄で赤縁のメガネをかけたイール。ワンスはうんざりといった様子で腕を組んで壁に寄りかかり、ヨイチは他人事かのように彼らを見つめ、立っている。
「そこまでだ。我々の指示に従え」
「護衛長…っ」
アラシがやって来ると、護衛たちは助かったと息を吐く。
「あ、頼りない護衛長だ」
「頼りないは余計だ。ここは君たちが来ていい場所ではない。部屋に戻れ」
イールにからかわれ、アラシはムッとしながらも冷静に命じる。
「頼みがある」
ヨイチはアラシに目を向け、口を開く。
「あんたは頼りなくても護衛長だろう。俺は外交担当の大臣と話をしたいだけだ。資料を借りるだけでもいい。話をつけてくれ」
蓮から諭されたヨイチだが、やはり彼の素性は気になる。外国から来たのであれば、外交担当の大臣が何かしら知っているのではと思い、行動に出たのだ。イールとワンスはそれを聞いてついてきただけ。
実際、大臣に聞いても蓮の素性はわからないし、資料もないが。
「君たちはどのような理由があろうと、国からの許可がない限り大臣と面会は出来ない。すみやかに部屋に戻れ」
「うわ、この人もお固い」
アラシは姿勢を変えずに答え、イールはダメだこりゃと顔を引きつらす。
「おい」
「!?」
黙っていたワンスが前に出てくると、アラシの胸ぐらをつかみあげた。
「調子に乗るな。ヨイチがわざわざ下手に出てやっているのがわからないのか?」
「…」
「また頭をカチ割るぞ。護衛長さんよ?」
覇気を高め、煽るかのようにアラシをにらみつける。この場にいる護衛では、ワンスひとりでさえ抑えられない。周りの護衛たちはサァっと青ざめる。
「やればいい」
「!」
「そんなことをしても、君たちの要望は通らない。さらに罪を重ねるだけだ」
アラシはワンスを見上げ、冷静な口調のまま言い返す。
「ふん…『長』としての覚悟はあるようだな」
意外に骨のある奴だと、ワンスはアラシの胸ぐらから手を離す。少しおどかせば、情けなくうろたえると思っていた。
「冗談だ。今、あんたらに手を出すとレンに迷惑がかかる。それに、いつになるか知らんが…そのうち合法的にあんたらと手合わせが出来るようになる。楽しみはとっておくか」
と、ニヤっと笑む。
「…」
ワンスを護衛たちの戦闘訓練相手にするという案を議会に提出予定だと、アラシは報告を受けていた。護衛たちにも意見を聞くとのことだが、果たして反映されるだろうか。
「何ソレ?ワンスそんなこと出来るの?」
イールが初耳だと食いつく。
「らしいぞ」
「ズルイなぁ~。僕も仲間に入れて欲しい~」
「それは…レンか?」
ヨイチも驚いたようで右目を見開き、その発案が蓮だと感づいて聞く。
「ああ」
「ふ…やはり、レンの考えは面白い」
ワンスがうなずくと、楽しげに笑う。
「ワンス、その話を聞かせろ」
そして、さっきまで揉めていたのを忘れたかのように、きびすを返した。
「あれ、興味が移っちゃったね」
イールは気まぐれな恩人の背をあきれ気味に見る。
「ホント、レン君がいて良かったね。僕も頼んでみようかな~。ねぇ、レン君は次いつ帰ってくるの?教えてくれないだろうけどさ。じゃあね~」
憎らしげに見ている護衛たちに独り言かのように言うと、ヒラヒラ手を振る。
「ちょっとワンス!僕も聞きたいんだけどー!」
自室へ向かうヨイチとワンスの後を追いかけた。
「…ふぅ」
アラシはひと息つき、つかまれていたコートの胸元を直す。
「大丈夫ですか?!護衛長!」
「ああ、何ともない。彼らを追い、元の持ち場に戻ってくれ」
慌ててかけ寄る護衛たちに、ヨイチらを指して命じる。
「「はい!!」」
護衛たちは姿勢を正し、見張りをすべく彼らを追いかけた。
「はぁ…疲れた」
アラシは自室に戻り、首の青布を外す。休憩時間はあとわずか。昼食をとるのはあきらめた。
椅子を引き、座ると机上のスケッチブックを広げる。やはり綺麗な子だったなと、以前描いた似顔絵を見る。先ほど城を訪れた線の細い金眼保有者の青年だ。アラシは絵を描くことを趣味としており、人物画が得意なのだ。
ページをめくり、護衛長になってから最も描いている者の似顔絵を見る。彼のいない城内は何かあるという訳ではないが、どことなく皆、落ち着きがなくて。彼の存在は城内の安定に必要不可欠なものになりつつあるのだろう。
「私もお会いしたいです、レン様」
スケッチブック上の蓮はいつも笑いかけてくれる。そのほほをなで、挟んであったリボンを手に取る。「大変そうだ」と蓮がくれたチョコレートのラッピングに使われていたもの。普段ないがしろにされても、振り回されても、頭にかかと落としを食らおうと、彼はちゃんと見ていてくれた。世話役という役目がなくとも、彼のそばにいたいと思う。
次の正式な訪問前に一度、会いに行こうか。クラウドよりは許可が取りやすいはずだ。
「護衛長、会議のお時間です!」
ノックの音と呼ぶ声にハッとする。休憩時間がいつの間にか過ぎていた。
「すまない!今行く」
アラシはスケッチブックを閉じ、青布を首に締める。異世界に行く時間があればの話だなと、苦笑いして自室を出て行った。
その頃、日本の都市部。大通りは暖かい風に誘われるように多くの人々が行き交う。けれど、人によっては憎らしい花粉が飛ぶ季節であり、身体は軽装になっても顔は重装備の人も目立つ。そんな人々とすれ違って行く黒髪の少年…城野蓮は、花粉除けメガネ越しでも思わず振り向いてしまうほどかわいらしく魅力的に見えた。
「久しぶりだな、城野蓮っ!」
と、車道の端に停めた黒塗りの高級車から顔を出し、彼に声をかける者がいた。大物国会議員の祖父、父の地盤を引き継ぐ予定の大学生、菊川宏樹だ。
「…」
蓮は彼を見もせず、スタスタと歩き続ける。
「いつもだが、何故俺を無視するんだ?!未来の総理大臣だぞ!!」
周りからチヤホヤされて育った宏樹にしたら、蓮の態度は理解し難い。車を降り、蓮の後を追う。
「イタイから」
蓮は歩を止めずに言う。
「はっ?!」
「お前が総理大臣になったら日本は終わりだな」
「…どういう意味だ?!生まれ変わるということか!」
だからだよ、と、変なポジティブシンキングの彼を見て蓮は心の中で思う。
「そうほめるな!それより城野蓮、君に折り入って頼みが」
「断る」
言い切る前に食い気味に拒否する。宏樹は蓮に危機を救われて以来、専属ボディガードになれとしつこく迫っている。蓮の戦闘能力だけでなく、その容姿に惚れたのはまだ秘めていた。
「早い!!今日は俺の専属ボディガードの話じゃないぞ?!」
「あ?」
「君に仕事の依頼をしたい…!」
「…」
いつもイタイ発言しかしない宏樹の真剣な表情に、蓮は歩を止めた。
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