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婚約破棄
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◽︎◇▫︎
「ジュリアンヌ・ネモフィエラ!王太子妃にあるまじき陰湿な女め!今この瞬間を以て、僕、いいや、王太子レアンドル・ハイリーの名に誓い、貴様との婚約を破棄する!!」
深紅のカーペットが敷かれたバージンロードの行き着く先に佇む男は、純白のタキシードに身を包んだ胸を張り、自信満々に、意気揚々と大きな声を上げる。
「お前のような女と将来を共にするなど、考えるだけでも身の毛がよだつ!!さっさと僕の視界から消えろ!!」
太陽に照らされ爛々と輝く黄金の髪に、アクアマリンのような美しい瞳を持つ美丈夫の言葉に、純白のウエディングドレスを身につけパステルカラーのブーケを手にしている女性ネモフィエラ公爵家が次女ジュリアンヌは、わずかにほつれたシニヨンから溢れる漆黒の長いストレートな髪を耳にかけ、藍玉の釣り上がった瞳を細めてにっこりと微笑む。
「———承知いたしました」
花びらをたっぷりと含んだ風が舞い上がり、唖然とする人たちを置き去りに、幻想的な空間で話が進んでいく。
国1番の大きさを誇るチャペルでは、今日、第2王子レアンドル・ハイリー夫妻の幸せいっぱいな結婚式が、大々的に行われるはずだった。
だがしかし、蓋を開けてみればどうだろうか。
正式な正体を受け結婚式に参加する王侯貴族たちはもちろんのこと、王子夫妻を一目見ようと押しかけた平民たち、そして結婚式を進行するはずだった神父までもが口と目を大きく開け放ち、皆一様に唖然としている。
この場で話についていけているのは、おそらく当事者である2名、否、“3名”のみ。
「は?おいおい、なぜ僕に泣いて縋らない。お前、結婚式の場で婚約破棄されるんだぞ?」
「いえだって、あなたとの結婚はわたくしにとっても大変不服なものですから」
「はぁ!?んなわけないだろ!!何か僕に縋り付く要素があるはずだ!!ほら!なんか言ってみろ!!」
大きな声で喚き散らしながら地団駄を踏むレアンドルは、慌てたように自らの近くに侍らせていた桃色の少女の腰を掴み、彼女のことを抱きしめる。
「………あぁん!殿下ぁ!!いくらあたしが真実の愛の相手で愛おしいからってぇ!」
「ふっ、愛い奴め。ほらほら、なんか言えよ。ジュリアンヌ」
そんな2人の姿を冷たく見つめたジュリアンヌは、ブーケをポイっと空中に投げ捨て踏み躙ると、顎に手を当ててにっこりと笑ったまま首を傾げた。
———なんか言えって………、視界から消えろと言ってみたり、泣いて許しを乞えと言ってみたり、本当に忙しなくて愚鈍な人ね。言うことが二転三転しすぎて救いようがないわ。
「………いえ特に………………。あぁいいえ。やっぱり最後にひとつだけご質問をさせていただいてもよろしいですか?」
「おぉ!やっぱり僕に未練が」
レアンドルが言い切る前に、何かを思いついたようににっこり微笑んだジュリアンヌは、自らの左手を二の腕まで覆う長く美しい繊細なレース手袋に手をかけ、しゅるりと脱ぎするてる。
そして、白磁のように美しい腕を緩慢な仕草で宙に掲げ、微笑みを象っていたくちびるの端を更にを上げた。
「———これが何か、お分かりになりますか?」
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
最後までお楽しみいただけると嬉しいです!!
3話まで10分おきに更新したのち、1時間に1話更新します。
1万字ちょっとと短いお話なので、ぜひ最後までお楽しみください!!
「ジュリアンヌ・ネモフィエラ!王太子妃にあるまじき陰湿な女め!今この瞬間を以て、僕、いいや、王太子レアンドル・ハイリーの名に誓い、貴様との婚約を破棄する!!」
深紅のカーペットが敷かれたバージンロードの行き着く先に佇む男は、純白のタキシードに身を包んだ胸を張り、自信満々に、意気揚々と大きな声を上げる。
「お前のような女と将来を共にするなど、考えるだけでも身の毛がよだつ!!さっさと僕の視界から消えろ!!」
太陽に照らされ爛々と輝く黄金の髪に、アクアマリンのような美しい瞳を持つ美丈夫の言葉に、純白のウエディングドレスを身につけパステルカラーのブーケを手にしている女性ネモフィエラ公爵家が次女ジュリアンヌは、わずかにほつれたシニヨンから溢れる漆黒の長いストレートな髪を耳にかけ、藍玉の釣り上がった瞳を細めてにっこりと微笑む。
「———承知いたしました」
花びらをたっぷりと含んだ風が舞い上がり、唖然とする人たちを置き去りに、幻想的な空間で話が進んでいく。
国1番の大きさを誇るチャペルでは、今日、第2王子レアンドル・ハイリー夫妻の幸せいっぱいな結婚式が、大々的に行われるはずだった。
だがしかし、蓋を開けてみればどうだろうか。
正式な正体を受け結婚式に参加する王侯貴族たちはもちろんのこと、王子夫妻を一目見ようと押しかけた平民たち、そして結婚式を進行するはずだった神父までもが口と目を大きく開け放ち、皆一様に唖然としている。
この場で話についていけているのは、おそらく当事者である2名、否、“3名”のみ。
「は?おいおい、なぜ僕に泣いて縋らない。お前、結婚式の場で婚約破棄されるんだぞ?」
「いえだって、あなたとの結婚はわたくしにとっても大変不服なものですから」
「はぁ!?んなわけないだろ!!何か僕に縋り付く要素があるはずだ!!ほら!なんか言ってみろ!!」
大きな声で喚き散らしながら地団駄を踏むレアンドルは、慌てたように自らの近くに侍らせていた桃色の少女の腰を掴み、彼女のことを抱きしめる。
「………あぁん!殿下ぁ!!いくらあたしが真実の愛の相手で愛おしいからってぇ!」
「ふっ、愛い奴め。ほらほら、なんか言えよ。ジュリアンヌ」
そんな2人の姿を冷たく見つめたジュリアンヌは、ブーケをポイっと空中に投げ捨て踏み躙ると、顎に手を当ててにっこりと笑ったまま首を傾げた。
———なんか言えって………、視界から消えろと言ってみたり、泣いて許しを乞えと言ってみたり、本当に忙しなくて愚鈍な人ね。言うことが二転三転しすぎて救いようがないわ。
「………いえ特に………………。あぁいいえ。やっぱり最後にひとつだけご質問をさせていただいてもよろしいですか?」
「おぉ!やっぱり僕に未練が」
レアンドルが言い切る前に、何かを思いついたようににっこり微笑んだジュリアンヌは、自らの左手を二の腕まで覆う長く美しい繊細なレース手袋に手をかけ、しゅるりと脱ぎするてる。
そして、白磁のように美しい腕を緩慢な仕草で宙に掲げ、微笑みを象っていたくちびるの端を更にを上げた。
「———これが何か、お分かりになりますか?」
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
最後までお楽しみいただけると嬉しいです!!
3話まで10分おきに更新したのち、1時間に1話更新します。
1万字ちょっとと短いお話なので、ぜひ最後までお楽しみください!!
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