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1章 幸せの花園
62 僕なんか (2)
しおりを挟むノアを庇って死んでしまった優秀な騎士が生き残っていれば、城の脱出経路の確保のために尽力して魔力切れで生命力まで削って魔法を行使してしまったせいで死んでしまった魔道士たちが生きていれば、魔女狩りで死んでいってしまっているという優秀な魔女たちが生きていれば、今よりももっと世界が良くなっていたかもしれない。
全てが憶測て、想像しても仕方がないけれど、想像せずにはいられない。
ノアは、想像することを止められない。
これは、ノアが背負わなければいけないもの。
いずれ王となるノアだからこそ、背負うべきもの。
国家の犠牲となった人間を王となる人間は忘れてはいけない。
「もう、くるしいよ………、」
目から大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
痛くて辛くて怖くて、申し訳なくて仕方がない。
自分一人が死んでいれば、全てが丸く解決していたんじゃないかって、無謀にも、無茶にも、不必要にも、取り留めなく想像してしまう。
魔力の循環が一気に乱れ、制御ができなくなる。
小さな魔力がジタバタと暴れるのを虱潰しに抑え込みながら、ノアは布団にこぼれて行く涙を拭うことなく、ふぇっぐふぇっぐと嗚咽をこぼす。
今まで必死に押さえつけていた申し訳なさが、必死になって背負ってきた背負いきれない責任が、ノアの心をズタボロに傷つける。
「なんで、僕なんかが………、」
その晩、ノアの部屋からは悲痛な泣き声が朝方まで響き渡っていたらしい———。
*************************
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