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1章 幸せの花園
58 苦しい。ただただ、苦しい。 (1)
しおりを挟む「あーあぁ、死んじゃったぁ」
耳に残る間延びした声が、絶望に染まった僕の頭を殴りつけるかのように響く。
振り返らなくてもわかる。
「………まじょさま………………、」
「ん?どうしたのぉ?」
優雅でのんびりとした、それでいてどこまでも残酷な魔女は、まるで天気のお話をしているかのような気軽さで、ノアに話しかけてくる。
「じゃぁあぁ、この子もぉ、ちゃぁんとホルマリンにつけてあげなきゃねぇ」
「っ、」
「それにしてもぉ、この子は本当にぃ、まあまあのお顔ねぇ。お母さまにもお父さまにもそこまで似ていないわぁ」
のんびりと呟かれる感情の起伏のない声に、ノアは心に空っ風が吹くのを感じた。
———あぁ、まただ。また、僕は殺してしまった………。
自分の言葉を自分の行動を、ノアは呪う。
何度戒めようとも、何度反省しようとも、何度、苦悩に塗れ、死んでしまいたいという欲求に駆られたとしても、ノアはいつも、いつもいつもいつもいつも、間違った選択をしてしまう。
どうしてかなんて説明できない。
気がつけば間違った選択肢を選び抜いて、踏み抜いて、そして、他人の人生を無茶苦茶にしてしまっている。
「ねぇ、ノアぁ。ノアはぁ、記憶と強さならぁ、どっちを取るぅ?」
「………強さです」
「そっかぁー、じゃあぁ、リュシエンヌと一緒だねぇ」
心の中で吹き荒む空っ風が、ノアの心を深く抉る。
「じゃあぁ、わたしはリビングで作業するわねぇ」
「………はい」
また、屍が、魔女の、手に、よっ、………、
「ノアぁ?」
「………なんでもありません。………彼女の部屋を掃除させていただきますので、どうぞ作業へ」
「分かったわぁ」
さっきまで、つい今朝まで一緒に笑い合って、一緒にご飯を食べて、一緒にじゃれあっていたいた家族が、冷たくなった事実を、ノアは受け入れきれない。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
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