11 / 16
11
しおりを挟む
「まあ!司祭さま、お顔の色が………!!早くご帰宅なだった方が………、」
「い、いえいえ、私めのことなどお気になさらず。それに今は馬車を使いに出しておりまして………、」
「まぁ!それは大変ですわ。どうぞわたくしの馬車をお使いになって」
(そう、わたくしが何度も何度も殺された馬車を)
ヴァイオレットは自分付きの侍女に彼を馬車まで送るように命じ、これで一安心だと嘆息する。
(あのお馬鹿さんのことだから、足がつかないようにと自分がその馬車に乗せられた時のことなんて考えていなかったでしょうね)
そもそも黒幕があっているかどうかも怪しいのだが、ひとまずここ数年見ていたところあの司祭さまは野心家っぽいので、排除しておくに限る。
「さぁ、雰囲気が壊れてしまいましたわね。わたくしのことは気にせず、みなさま夜会をお楽しみくださいませ」
「………———か、」
「?」
「楽しめるかって言ってるんだよ!レットちゃん!!」
幼い日の呼び名で呼び掛けられたヴァイオレットは、きょとんとした顔で首を傾げた。薔薇色の頬に、ふわりふわりと揺れる藤の髪に、冷ややかな色彩のはずなのに温かみを感じるアクアマリンの瞳に、ディートリヒはボフっと頬を、耳を、赤く染め上げた。ビシッと指を指したディートリヒに注意をしようと口を開いた瞬間、ヴァイオレットの声はディートリヒの叫びによってかき消された。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「い、いえいえ、私めのことなどお気になさらず。それに今は馬車を使いに出しておりまして………、」
「まぁ!それは大変ですわ。どうぞわたくしの馬車をお使いになって」
(そう、わたくしが何度も何度も殺された馬車を)
ヴァイオレットは自分付きの侍女に彼を馬車まで送るように命じ、これで一安心だと嘆息する。
(あのお馬鹿さんのことだから、足がつかないようにと自分がその馬車に乗せられた時のことなんて考えていなかったでしょうね)
そもそも黒幕があっているかどうかも怪しいのだが、ひとまずここ数年見ていたところあの司祭さまは野心家っぽいので、排除しておくに限る。
「さぁ、雰囲気が壊れてしまいましたわね。わたくしのことは気にせず、みなさま夜会をお楽しみくださいませ」
「………———か、」
「?」
「楽しめるかって言ってるんだよ!レットちゃん!!」
幼い日の呼び名で呼び掛けられたヴァイオレットは、きょとんとした顔で首を傾げた。薔薇色の頬に、ふわりふわりと揺れる藤の髪に、冷ややかな色彩のはずなのに温かみを感じるアクアマリンの瞳に、ディートリヒはボフっと頬を、耳を、赤く染め上げた。ビシッと指を指したディートリヒに注意をしようと口を開いた瞬間、ヴァイオレットの声はディートリヒの叫びによってかき消された。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
【完結】悪気がないかどうか、それを決めるのは私です
楽歩
恋愛
「新人ですもの、ポーションづくりは数をこなさなきゃ」「これくらいできなきゃ薬師とは言えないぞ」あれ?自分以外のポーションのノルマ、夜の当直、書類整理、薬草管理、納品書の作成、次々と仕事を回してくる先輩方…。た、大変だわ。全然終わらない。
さらに、共同研究?とにかくやらなくちゃ!あともう少しで採用されて1年になるもの。なのに…室長、首ってどういうことですか!?
人見知りが激しく外に出ることもあまりなかったが、大好きな薬学のために自分を奮い起こして、薬師となった。高価な薬剤、効用の研究、ポーションづくり毎日が楽しかった…はずなのに…
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))中編くらいです。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
婚約者に浮気されていたので彼の前から姿を消してみました。
ほったげな
恋愛
エイミは大学の時に伯爵令息のハルヒトと出会って、惹かれるようになる。ハルヒトに告白されて付き合うようになった。そして、働き始めてハルヒトにプロポーズされて婚約した。だが、ハルヒトはミハナという女性と浮気していた。それを知ったミハナはハルヒトの前から姿を消し、遠い土地で生活を始めた。その土地でコウと出会い・・・?!
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる