40 / 63
番外編③
しおりを挟む
「それじゃあ、父上に告げ口に行こうか」
「は、い………?」
甘い空気が霧散したあたりで彼女を抱きしめるのをやめた俺は、魔王と恐れられる父上譲りの空気を纏い、エルナに手を差し伸べる。
「今回の件、感謝もしているがやはりアリエルの行動は気に食わないし、人の恋路に勝手に頭を突っ込んだ挙句、掻き回すだけ掻き回して自分は全く関係ないという態度はよろしくない。噂によれば、アリエルの行動のせいで縁談が潰れてしまった案件もあるらしい。………まあ、あれは浮気性の男の浮気が表に出ただけだから自業自得とも言えるが………。それを加味したとしても、甘やかしすぎるのはあいつのためにならないから、とりあえず父上に告げ口する」
俺の言葉に眉を下げたエルナは、小さく首を横に振った。
「きょ、今日だけは見逃しませんか?………わたくしはあのお方に、今日の件はものすごく感謝しているのです。このままでは間違いなく、わたくしはあなたさまと向き合えなかった。だから………、」
「………………わかった」
可愛い婚約者のお願いに負けた俺は、苦笑してから窓の外を見つめる。
馬車が出発したであろう方向には握ら家な街。
俺がいずれ導かねばならぬ国民が暮らしている。
(うっ、想像しただけで胃が………、)
小さく溜め息をついた俺は、胃薬を煽りながら、心の中で呪詛を吐く。
(覚えてろよ、クソ姉貴)
今日は、否、今日も俺はアリエルの無茶振りで破天荒な行動のせいで、連帯責任として父上と母上に叱られることになるだろう。
だが、それも心地よいと思ってしまう俺は、どうしようもなくアリエルを尊敬してしまっているからであるらしい———。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「は、い………?」
甘い空気が霧散したあたりで彼女を抱きしめるのをやめた俺は、魔王と恐れられる父上譲りの空気を纏い、エルナに手を差し伸べる。
「今回の件、感謝もしているがやはりアリエルの行動は気に食わないし、人の恋路に勝手に頭を突っ込んだ挙句、掻き回すだけ掻き回して自分は全く関係ないという態度はよろしくない。噂によれば、アリエルの行動のせいで縁談が潰れてしまった案件もあるらしい。………まあ、あれは浮気性の男の浮気が表に出ただけだから自業自得とも言えるが………。それを加味したとしても、甘やかしすぎるのはあいつのためにならないから、とりあえず父上に告げ口する」
俺の言葉に眉を下げたエルナは、小さく首を横に振った。
「きょ、今日だけは見逃しませんか?………わたくしはあのお方に、今日の件はものすごく感謝しているのです。このままでは間違いなく、わたくしはあなたさまと向き合えなかった。だから………、」
「………………わかった」
可愛い婚約者のお願いに負けた俺は、苦笑してから窓の外を見つめる。
馬車が出発したであろう方向には握ら家な街。
俺がいずれ導かねばならぬ国民が暮らしている。
(うっ、想像しただけで胃が………、)
小さく溜め息をついた俺は、胃薬を煽りながら、心の中で呪詛を吐く。
(覚えてろよ、クソ姉貴)
今日は、否、今日も俺はアリエルの無茶振りで破天荒な行動のせいで、連帯責任として父上と母上に叱られることになるだろう。
だが、それも心地よいと思ってしまう俺は、どうしようもなくアリエルを尊敬してしまっているからであるらしい———。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
2
お気に入りに追加
753
あなたにおすすめの小説
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
【一話完結】才色兼備な公爵令嬢は皇太子に婚約破棄されたけど、その場で第二皇子から愛を告げられる
皐月 誘
恋愛
「お前のその可愛げのない態度にはほとほと愛想が尽きた!今ここで婚約破棄を宣言する!」
この帝国の皇太子であるセルジオが高らかに宣言した。
その隣には、紫のドレスを身に纏った1人の令嬢が嘲笑うかのように笑みを浮かべて、セルジオにしなだれ掛かっている。
意図せず夜会で注目を浴びる事になったソフィア エインズワース公爵令嬢は、まるで自分には関係のない話の様に不思議そうな顔で2人を見つめ返した。
-------------------------------------
1話完結の超短編です。
想像が膨らめば、後日長編化します。
------------------------------------
お時間があれば、こちらもお読み頂けると嬉しいです!
連載中長編「前世占い師な伯爵令嬢は、魔女狩りの後に聖女認定される」
連載中 R18短編「【R18】聖女となった公爵令嬢は、元婚約者の皇太子に監禁調教される」
完結済み長編「シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす」
よろしくお願い致します!
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。
しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。
でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。
どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる