27 / 63
番外編①
しおりを挟む
▫︎◇▫︎
「つーわけで、俺は戦場と愛に生きる」
俺の言葉に、親父と弟のラインハルトが絶句しているのを見ながら、俺はニカッと笑った。
「俺は、国王にはなれない」
次の瞬間頬に走った激痛は、信じられないほど痛かった。
見た目からもケガの調子から言ってもそこまで痛くないはずなのに、ものすごく痛かった。
(ごめんなさい、父さん。俺、やっぱり王なんて柄じゃないんだ。期待に添えなくて………、………ごめんなさい)
何かを悟ったように泣きそうな顔で笑っているラインハルトの方にふらっと近寄った俺は、俺よりもずっとずっと賢い自慢の弟の肩に手を置いて耳元で囁く。
「すまんな、ライン。重荷を背負わせる」
「良いよ。気にしないで、兄さん」
「………お前は良い王さまになれる。この俺が保証する、絶対だ。………『キング』の駒は生まれた時からずっとお前だ」
「っ、」
ラインハルトはこの言葉の真意に気づいただろうか。
多分、気づいているだろう。
ラインハルトにだけ教えたことのある、俺の1番の秘密。
俺が戦場で勝ち続けられる秘密。
(まあ、安心しろよ。お前の愛しい人の駒はクイーンだから)
そんな野暮なことは言わないが、俺の笑みの真意に気づいたらしいラインハルトは顔を顰めた。
くちびるが小さく動かされる。
(えぇー、なになに?『兄さんのアホ』?………おいおい、愛しの兄に対して酷くないか?)
苦笑した俺は、頭の上に『キング』の|《・》コマが踊っている親父とラインハルトに、ニカッと笑った。
(俺はナイトになるべくして生まれた人間であり、そう生きるのが楽。なら、駒相応に生きるのが正解なんだよ)
わしゃわしゃとラインハルトの頭を混ぜた俺は、口を開く。
「まあ、貴族位は欲しいから、騎士爵位ぐらいは選別してくれや」
「………わかった」
親父の言葉に笑った俺が、愛しのミーシャを横に連れて“マルゴット公爵”として結婚式を挙げたのはわずか半年後のことであった。
なお、結婚式の誓いのキスで俺がミーシャに深いキスをして神官に怒られたことや、結婚式後にあまりのストレスによって、ミーシャが結婚式からそのまま出発した新婚旅行そっちのけで吐き続けたのは、別のお話である。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「つーわけで、俺は戦場と愛に生きる」
俺の言葉に、親父と弟のラインハルトが絶句しているのを見ながら、俺はニカッと笑った。
「俺は、国王にはなれない」
次の瞬間頬に走った激痛は、信じられないほど痛かった。
見た目からもケガの調子から言ってもそこまで痛くないはずなのに、ものすごく痛かった。
(ごめんなさい、父さん。俺、やっぱり王なんて柄じゃないんだ。期待に添えなくて………、………ごめんなさい)
何かを悟ったように泣きそうな顔で笑っているラインハルトの方にふらっと近寄った俺は、俺よりもずっとずっと賢い自慢の弟の肩に手を置いて耳元で囁く。
「すまんな、ライン。重荷を背負わせる」
「良いよ。気にしないで、兄さん」
「………お前は良い王さまになれる。この俺が保証する、絶対だ。………『キング』の駒は生まれた時からずっとお前だ」
「っ、」
ラインハルトはこの言葉の真意に気づいただろうか。
多分、気づいているだろう。
ラインハルトにだけ教えたことのある、俺の1番の秘密。
俺が戦場で勝ち続けられる秘密。
(まあ、安心しろよ。お前の愛しい人の駒はクイーンだから)
そんな野暮なことは言わないが、俺の笑みの真意に気づいたらしいラインハルトは顔を顰めた。
くちびるが小さく動かされる。
(えぇー、なになに?『兄さんのアホ』?………おいおい、愛しの兄に対して酷くないか?)
苦笑した俺は、頭の上に『キング』の|《・》コマが踊っている親父とラインハルトに、ニカッと笑った。
(俺はナイトになるべくして生まれた人間であり、そう生きるのが楽。なら、駒相応に生きるのが正解なんだよ)
わしゃわしゃとラインハルトの頭を混ぜた俺は、口を開く。
「まあ、貴族位は欲しいから、騎士爵位ぐらいは選別してくれや」
「………わかった」
親父の言葉に笑った俺が、愛しのミーシャを横に連れて“マルゴット公爵”として結婚式を挙げたのはわずか半年後のことであった。
なお、結婚式の誓いのキスで俺がミーシャに深いキスをして神官に怒られたことや、結婚式後にあまりのストレスによって、ミーシャが結婚式からそのまま出発した新婚旅行そっちのけで吐き続けたのは、別のお話である。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
5
お気に入りに追加
753
あなたにおすすめの小説
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
婚約者マウントを取ってくる幼馴染の話をしぶしぶ聞いていたら、あることに気が付いてしまいました
柚木ゆず
恋愛
「ベルティーユ、こうして会うのは3年ぶりかしらっ。ねえ、聞いてくださいまし! わたくし一昨日、隣国の次期侯爵様と婚約しましたのっ!」
久しぶりにお屋敷にやって来た、幼馴染の子爵令嬢レリア。彼女は婚約者を自慢をするためにわざわざ来て、私も婚約をしていると知ったら更に酷いことになってしまう。
自分の婚約者の方がお金持ちだから偉いだとか、自分のエンゲージリングの方が高価だとか。外で口にしてしまえば大問題になる発言を平気で行い、私は幼馴染だから我慢をして聞いていた。
――でも――。そうしていたら、あることに気が付いた。
レリアの婚約者様一家が経営されているという、ルナレーズ商会。そちらって、確か――
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
【一話完結】才色兼備な公爵令嬢は皇太子に婚約破棄されたけど、その場で第二皇子から愛を告げられる
皐月 誘
恋愛
「お前のその可愛げのない態度にはほとほと愛想が尽きた!今ここで婚約破棄を宣言する!」
この帝国の皇太子であるセルジオが高らかに宣言した。
その隣には、紫のドレスを身に纏った1人の令嬢が嘲笑うかのように笑みを浮かべて、セルジオにしなだれ掛かっている。
意図せず夜会で注目を浴びる事になったソフィア エインズワース公爵令嬢は、まるで自分には関係のない話の様に不思議そうな顔で2人を見つめ返した。
-------------------------------------
1話完結の超短編です。
想像が膨らめば、後日長編化します。
------------------------------------
お時間があれば、こちらもお読み頂けると嬉しいです!
連載中長編「前世占い師な伯爵令嬢は、魔女狩りの後に聖女認定される」
連載中 R18短編「【R18】聖女となった公爵令嬢は、元婚約者の皇太子に監禁調教される」
完結済み長編「シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす」
よろしくお願い致します!
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる