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215 通されない願い

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 学園はローガンの死もあって1ヶ月の休学を決定した。
 学園の医務室で目覚めたベアトリスは母ベルティアの憔悴を耳にして、そしてもう1人の消えたベアトリスの願いを叶えるために動き始める。
 横腹に走る激痛を無視しながら、学園室へと足を進めた。服はちゃんと身につけているし、髪も整えた。全てをもう1人のベアトリスに近づけた格好は終わりに向かうには相応しい装いだとベアトリスは思う。

 ーーーコンコンコン、

 学園室の扉を控えめに叩くと、中から許可をもらえた。
 教師の死によっててんやわんやしているであろうに、学園長は今日も人が良さそうな笑みを浮かべている。たくさんの教師に、生徒に尊敬される教師は、疲労をも味方につけているかのようだ。
 ベアトリスはそんな校長の前に堂々と立って、にっこり微笑む。
 こんな時、ベアトリスはいつも徹底された淑女教育に感謝を感じる。全ての負の感情を覆い隠せるこの仮面を、ベアトリスはもう手放せない。

「………退学を希望しますわ」

 学園長は予想していましたと言わんばかりに穏やかに微笑んで、そして頷いた。

「許可できません」
「え………、」

 学園は本人が望めばあっという間に退学が可能というのが当たり前だ。

「君の退学は母君と王家より禁止されている」
「っ、」
「休学中にしっかりと心身の健康を取り戻しておくように」
「………はい」

 ベアトリスは微笑んだまま校長室の外に出て、そして扉を後ろ手に占める。

「なん、で………、」

 扉に背中を預けたままぐらぐらと足腰から力が抜ける。床にがしゃんと座り込むと、扉に頭を預ける。

「………私は何をすればいいの………………?」

 ぐっと上を見上げると、そこにはただただ暗くジメジメしたい雰囲気の学園の天井が広がっていた。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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