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176 食堂へ

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「真里、そろそろご飯に行くわよ」
「もうそんな時間~?」
「えぇ。シャキッとしなさい」
「は~い」

 あまりにきつい訓練のせいで、全身ぼろぼろなマリアは、けれど、ベアトリスの言いつけをちゃんと守って令嬢らしいシャツにロングスカートという部屋着で粛々と食堂へと向かう。ベアトリスは彼女の横を歩く傍ら、思考を巡らせていた。

(王太子殿下は、どこまでお気づきなのかしら。あの口調では、彼が王弟だと気がついているのかすらもあやふやね。正直に言って、ただ彼が危険な予感がするから調査しようと思った矢先、私が先に手を出していて心配したと言った方が腑に落ちる感じだったわ)

 食堂の扉は開け放たれていて、中からはセオドリクとノアの揉めている声が聞こえる。食器の持ち方がどうこう言っているが、正直に言ってなんだかどうでもいい気がする。
 ぱちんと頬を強めに叩いて、方針について迷いに迷っているベアトリスは心を入れ替えた。

(食堂には、間違いなくローガン先生がいらっしゃる。気を引き締めて、警戒していることを悟らせないようにしなくちゃ)
「ベアトリスさまほっぺた痛そうですよ~。大丈夫ですか?」
「えぇ、問題ないわ」

 食堂の中に入ると、ベアトリスとマリアを蝋燭の優しい光が迎え入れる。暖かな食事から立つ優しく美味しそうな匂いに誘われて、ベアトリスは相好を緩めた。

(腹が減っては戦はできぬと言うし、食事くらい、たくさん食べても問題ないわよね)

 この時のベアトリスは知らない。
 この食事こそが、今回の事件の全ての発端であると言うことを………。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈‍⬛🐈

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