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111 いじめ

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 教室へ向かうために、2人は全く同じタイミングで足の向いている方向を変えて歩き始めた。ベアトリスの腰には、もちろんベタベタと触りたがるクラウゼルの手が触れている。

(う、うざいわね。これは、)
「………王太子殿下、私、寄るところがあるの。先にクラスに行っておいてもらえるかしら?」
「いやだ」
(………こいつ、3歳児なのかしら)

 聞き分けのないクラウゼルに、ベアトリスはじとっとした視線を向ける。

「お花を摘みに行く淑女の後をつけるだなんて、王太子殿下はケダモノなのね」
「!?」
「ほら、さっさと先に行ってくださる?」

 思いっきり顔を顰めたクラウゼルに、ベアトリスは思わずにこにことしてしまう。

(ここ数日でここまで表情が変わり果てるだなんて、本当に面白いわね。もっと早く仮面を脱げと言うべきだったわ)

 ルンルンな気分のベアトリスは上級クラスの隣にある化粧室に入ってお化粧を直した後、上級クラスの中へと突入していく。
 けれど、ベアトリスの気分とは裏腹にクラスの雰囲気は一触即発の最悪な状況だった。

「きゃっ!!」
「平民風情がわたくしと一緒のクラスで、しかも成績4位だなんて、馬鹿げているわ!!さっさと退学なさい!この汚れた血が!!」

 ーーーぱぁん!!

「うぁっ、」

 激しく頬を打たれて頬を打った少女の取り巻きに突き飛ばされたマリアが、ベアトリスの前に倒れ込んでくる。
 マリアのことを平手打ちした黄金の縦ロールに紫色の吊り目をした少女の名前はヴァイオレット・ラビリンスという。ヴァイオレットは、ベアトリスの実家ブラックウェル家が所属している派閥である王権派の家の子供だ。ラビリンス家は伯爵家であり、少し前まで中立派だったために彼女の家の立ち位置は今とても不安定だ。
 それなのにも関わらず、学園で長女がここまで自由奔放に動いている姿に、ベアトリスはどうしても頭痛を隠せそうにない。

(これは1度締めておかないと、もっと悪化しそうね)

 ーーーパチンっ!!

 七色に輝く瞳を冷え冷えと細めたベアトリスは、周囲の視線が全てベアトリスに集まるように、気を読んで皆に1番効果をもたらすタイミングで扇子を閉じる大きな音を立てる。

「さて、何が起こっているのか説明願えるかしら」

*****************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈‍⬛🐈

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