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39 あげるから

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 モブオのためにも負けられないベアトリスはきっと鋭い瞳をさらに鋭くして、マリアを睨みつける。

「私はどう見ても美少女よ!!」
「………………そんな巨乳美少女がどこにいるうううぅぅぅ!!分けろやおらああああぁぁぁ!!」

 わっと両手を広げて胸を掴みかからんと突進してくるマリアをひらりとかわし、ベアトリスは右足を前に出す。

 ーーーべっしゃーんっ、

(うわっ、なんで受け身を取らないわけ?)

 見事にベアトリスの足に引っかかったマリアは、本日2度目の顔面床キスを果たした。今にも泣きそうな彼女は、けれどそれでもベアトリスを睨みつける。

「『ベアー商会』作の絶対おっきくなるって有名なサプリメントを摂ってなおおっきくならない私に、その無駄にでっかい胸を分けてもいいでしょうッ!?」
「だーめ。これはモブオに綺麗って思われるための完璧なプロポーションのために育ててるんだから、あげないわ。というか、普通に考えなさいよ。物理的にあげられないわ」

 肩をすくめて苦笑をすると、マリアはわんわん泣き出した。情緒が不安定すぎて前世3つ以上歳上だったとは到底考えられない有り様だ。

「ねえ、あなたはクラウゼル推しなのよね?」
「えぇ、ぐすっ、そうよ?」
「じゃあ、掻っ攫ってよ。私、協力するから」
「へ?」

 困惑して床に座り込んだままぱちぱちと涙に濡れた瞳を開閉するマリアに、ベアトリスは聖母のような優しい笑みを浮かべる。

「私、クラウゼルが好きじゃないの」

 ーーーずきっ、

「それどころか、き、嫌いなの」

 ーーーずきずきっ、

「だからね、掻っ攫ってよ」

 ーーーずきずきずきっ、

「お願いだからさ」

 ーーーずきずきずきずきっ、

「私の前から、彼を奪って」
(ーーーいたい。………どうして、こんなに胸が痛むの?)

 歪んだ笑みは、彼女にどう写ったのだろうか。
 ベアトリスは彼女に手を貸して立ち上がらせた後、くるりと踵を返して学園に借りた馬で家まで走るのだった。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈‍⬛🐈


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