上 下
28 / 38

妖魔の命

しおりを挟む
 角は妖魔にとって命と言っても過言ではない大事なもの。
 それは見た目のものと思われがちですが、本当は違うのです。

 ーーー角は文字通り妖魔の命そのものなのです。

 角により、妖魔はその生命の血液である妖力を生成し、蓄えます。よって、角が大きく、妖力によって宝石に近い輝きを放つほど、妖魔は強い存在としての格を手に入れます。わたしも生来は幼魔の皇女として相応しい、並外れた量の妖力と妖力の蓄えに恵まれていました。けれど、今のわたしは忘れがちですが片角です。生成できる妖力も、蓄えも、今までの2分の1もありません。

(妖力の減りは命の減りとはよく言ったものですね)

 酷く浅くなった呼吸をどうにか整えながら、わたしは表情を取り繕い、顔を上げます。わたしの視線の先にはひどく冷たい顔をした朝比奈拓人さまのお顔がありました。
 鼻につく濃い血の香りにむせ返りそうになりながら、わたしは平然としたふりをしてにっこり笑ってやります。同胞の血の匂いにも、毒にも、わたしは惑わされない。

「どういうおつもりですか?」

 高い位置から冷たい眼光に射抜かれて、わたしはわずかに萎縮しそうになるのを感じます。

「これは国の総意です。妖魔などという穢れた血を国に置いておくなんて考えられない。あなたにはさっさと滅んでもらいます」
「そう、ですか」

 妖魔が人間を小馬鹿にしているように、人間は妖魔を蔑んでいるのでしょう。

(あぁ、やっぱり)
「ニンゲンは嫌いですね」

 わたしの周囲の温度が下がり、息が白く染まる。
 食道と肺が氷に凍てつかされるような感覚を覚えた次の瞬間には、朝比奈拓人さま、いいえ、人間の醜い男が拳銃と呼ばれる人間の武器を構えて激しい爆音を響かせ始めました。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

祝福の淡雪~結ばれない「運命」をあなたとなら壊したい~

八重
恋愛
私は、幼い頃に命を救ってくれた『守護王』天城零様に恋をしたけど、その人の隣にはすでに「運命」の相手がいた。 その「運命」とは、千年前に国を救った『守護王』の生まれ変わりは、同じく共に国を救った『桜華姫』の生まれ変わりと結ばれるというもの。 届くことのない想いを閉じ込めて、それでも彼の役に立ちたくて、零様が長である妖魔専門護衛隊に入隊する。 国の安全を脅かす妖魔退治に勤しみ、日々鍛錬を積むが、私はどんどん事件に巻き込まれていき……。 そんな中で零様と接するうちにどんどん想いは膨らんでしまい……。 決して願ってはいけないのに。 「運命」を壊して、あなたと共にありたいなどと──。 ※カクヨムで公開しておりました作品を一部改稿してお届けしております。 全13話の予定です。

初夜をボイコットされたお飾り妻は離婚後に正統派王子に溺愛される

きのと
恋愛
「お前を抱く気がしないだけだ」――初夜、新妻のアビゲイルにそう言い放ち、愛人のもとに出かけた夫ローマン。 それが虚しい結婚生活の始まりだった。借金返済のための政略結婚とはいえ、仲の良い夫婦になりたいと願っていたアビゲイルの思いは打ち砕かれる。 しかし、日々の孤独を紛らわすために再開したアクセサリー作りでジュエリーデザイナーとしての才能を開花させることに。粗暴な夫との離婚、そして第二王子エリオットと運命の出会いをするが……?

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました

みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。 ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。 だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい…… そんなお話です。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

悪役令嬢のススメ

みおな
恋愛
 乙女ゲームのラノベ版には、必要不可欠な存在、悪役令嬢。  もし、貴女が悪役令嬢の役割を与えられた時、悪役令嬢を全うしますか?  それとも、それに抗いますか?

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

処理中です...